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第8章 将軍への道程編
17.国輝と国時
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墨山城での評定が終わり、家臣たちは解散した。
そんな中、国輝は国時を自身の屋敷に呼び寄せていた。
国輝が深刻そうな顔をして言う。
国輝
「国時よ、どうやらこの墨山の地は志太家に目をつけられてしもうたかも知れぬぞ…」
今回の選挙戦での異変は、志太家による工作活動によって引き起こされたものであると国輝は考えていた。
国時
「拙者も国輝様と同じことを考えておりました。志太が動き始めたようにございますな…」
国時もまた国輝に同じく、志太家によって墨山国が狙われている事を感じているようであった。
国輝
「くそっ、忌ま忌ましき奴らめ…またしても志太の連中は儂らの邪魔をしよってからに…」
国輝は拳をぐっと握りしめ、怒りの表情をあらわにしていた。
元々、国輝は軍師として志太家に仕えていた。
そこに白河家の軍師であった口羽崇数が志太家への寝返りを起こして新たに家臣として登用され、志太家で二人目の軍師に任命されたのである。
既に軍師の役職に就いていた国輝はこれを快く思わず、崇数と対立する事がしばしばあったという。
この頃より崇数に対して嫌がらせを行うなど陰湿な行動が見え始めた事から、国輝の崇数に対する僻みや妬みは相当なものであったと言えよう。
やがて、国輝にとって志太家を離れる決定的な出来事が起きる。
国輝は祐藤より崇数の配下となるように命ぜられたのである。
軍師の座を剥奪され、更には自身が毛嫌いしている崇数の配下に取り込まれるという事に屈辱を感じた国輝は、この時に出奔を決意したという。
その際には国時も共に出奔する事に名乗りを上げ、二人は志太家を離れたのであった。
国輝
「今更、志太家におめおめと戻れるわけが無かろう。」
国輝は、依然として志太家と再び関わり合いを持つ事を拒んでいる。
当時の自身の実力不足が引き起こした不甲斐なさには気付いているようではあるが、結局は身から出た錆。
国輝の表情には後悔の様子も見られたが今となってはもう取り返しのつかない話で、最早後には引けない状況であった。
そして心配した様子で国時が口を開く。
国時
「しかし国輝様、先刻の評定では頼隆様が志太家に従うが得策かも知れぬと口にされておりました故、志太家の思う壺になりかねませぬな…」
つい先程の評定において頼隆はふと考えていた。
志太家が将軍となり幕府を開けばより良き世となるのでは無いか、と。
それにはこの墨山の国を志太家に捧げて幕府の直轄地となる必要があるが、この際それを許しても良いのではないか、と。
頼隆は、志太家に対して少なからず期待を寄せている様子である。
国輝
「うむ、そこじゃ…そこが奴らの怖いところなのじゃ…」
志太家による策略は非常に手が込んでおり、標的となった国は必ずと言って良いほど多大な影響を受けるという。
現に今まで志太家が攻め滅ぼした大名家の大半は、この策略によって国力を大幅に削がれている。
国時
「志太家は、敵としては真に厄介な存在にございますな…」
国輝
「全くじゃ。それに、未だに儂らの邪魔をしおるとはな。真にしぶとき奴らよ…」
二人は志太家の執念深さを改めて感じているようであった。
やがて国時が曇った表情を見せて国輝に対して言う。
国時
「それにしても、頼隆様の心変わりが心配にございますな…」
国時は、頼隆が志太家に従う意向を示した場合の事を危惧している様子だ。
国を治める大名である頼隆が下した決断は絶対である。
そうなった場合、墨山国は必然的に志太家の支配下に置かれる事となる。
国輝
「うむ、頼隆様が血迷われた場合は…致し方あるまいな…」
国輝は物騒な表情を浮かべながらそう言っていた。
そんな中、国輝は国時を自身の屋敷に呼び寄せていた。
国輝が深刻そうな顔をして言う。
国輝
「国時よ、どうやらこの墨山の地は志太家に目をつけられてしもうたかも知れぬぞ…」
今回の選挙戦での異変は、志太家による工作活動によって引き起こされたものであると国輝は考えていた。
国時
「拙者も国輝様と同じことを考えておりました。志太が動き始めたようにございますな…」
国時もまた国輝に同じく、志太家によって墨山国が狙われている事を感じているようであった。
国輝
「くそっ、忌ま忌ましき奴らめ…またしても志太の連中は儂らの邪魔をしよってからに…」
国輝は拳をぐっと握りしめ、怒りの表情をあらわにしていた。
元々、国輝は軍師として志太家に仕えていた。
そこに白河家の軍師であった口羽崇数が志太家への寝返りを起こして新たに家臣として登用され、志太家で二人目の軍師に任命されたのである。
既に軍師の役職に就いていた国輝はこれを快く思わず、崇数と対立する事がしばしばあったという。
この頃より崇数に対して嫌がらせを行うなど陰湿な行動が見え始めた事から、国輝の崇数に対する僻みや妬みは相当なものであったと言えよう。
やがて、国輝にとって志太家を離れる決定的な出来事が起きる。
国輝は祐藤より崇数の配下となるように命ぜられたのである。
軍師の座を剥奪され、更には自身が毛嫌いしている崇数の配下に取り込まれるという事に屈辱を感じた国輝は、この時に出奔を決意したという。
その際には国時も共に出奔する事に名乗りを上げ、二人は志太家を離れたのであった。
国輝
「今更、志太家におめおめと戻れるわけが無かろう。」
国輝は、依然として志太家と再び関わり合いを持つ事を拒んでいる。
当時の自身の実力不足が引き起こした不甲斐なさには気付いているようではあるが、結局は身から出た錆。
国輝の表情には後悔の様子も見られたが今となってはもう取り返しのつかない話で、最早後には引けない状況であった。
そして心配した様子で国時が口を開く。
国時
「しかし国輝様、先刻の評定では頼隆様が志太家に従うが得策かも知れぬと口にされておりました故、志太家の思う壺になりかねませぬな…」
つい先程の評定において頼隆はふと考えていた。
志太家が将軍となり幕府を開けばより良き世となるのでは無いか、と。
それにはこの墨山の国を志太家に捧げて幕府の直轄地となる必要があるが、この際それを許しても良いのではないか、と。
頼隆は、志太家に対して少なからず期待を寄せている様子である。
国輝
「うむ、そこじゃ…そこが奴らの怖いところなのじゃ…」
志太家による策略は非常に手が込んでおり、標的となった国は必ずと言って良いほど多大な影響を受けるという。
現に今まで志太家が攻め滅ぼした大名家の大半は、この策略によって国力を大幅に削がれている。
国時
「志太家は、敵としては真に厄介な存在にございますな…」
国輝
「全くじゃ。それに、未だに儂らの邪魔をしおるとはな。真にしぶとき奴らよ…」
二人は志太家の執念深さを改めて感じているようであった。
やがて国時が曇った表情を見せて国輝に対して言う。
国時
「それにしても、頼隆様の心変わりが心配にございますな…」
国時は、頼隆が志太家に従う意向を示した場合の事を危惧している様子だ。
国を治める大名である頼隆が下した決断は絶対である。
そうなった場合、墨山国は必然的に志太家の支配下に置かれる事となる。
国輝
「うむ、頼隆様が血迷われた場合は…致し方あるまいな…」
国輝は物騒な表情を浮かべながらそう言っていた。
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