322 / 549
第8章 将軍への道程編
16.墨山城評定
しおりを挟む
一方その頃、墨山城では家臣たちを集めて評定が開かれていた。
そこには、選挙戦で勝利を収めた武野氏豊の姿もあった。
頼隆が氏豊に対して声を上げる。
頼隆
「氏豊殿よ、めでたく当選したな!真に良きことじゃ、良きことじゃ!」
頼隆は、氏豊の当選を心から喜んでいる様子である。
氏豊
「ははっ、この武野氏豊は殿直々にお褒めの言葉をいただけて真に嬉しゅうございます。」
氏豊もまた、自身の当選に喜びの表情を見せていた。
しかし、その後すぐに頼隆は曇った表情へと切り替わって言う。
頼隆
「ただ、一つ気になることがあるがな…」
すると氏豊がはっとした様子で答える。
氏豊
「商人推薦代表の、一条殿のことにございますか…?」
頼隆
「うむ…こたびの選挙戦の票の流れが、毎度と違う故にな…」
今回、行われた選挙戦での票差に頼隆は違和感を覚えていたようである。
この選挙戦は、外河家代表推薦代表の候補者が圧倒的な票数を得て圧勝する事がほぼ例年のお決まりとなっていた。
しかし、今回に至っては商人推薦代表が外河家推薦代表を上回らんばかりの票数を獲得していたからである。
一体、これがどう言う事を意味するのであろうか…
頼隆は首を傾げて考え込んでいた。
そうして少し間を置いた後に氏豊が口を開く。
氏豊
「私にもそれは分かりませぬ…ただ、こうして私が選ばれたからにはこの墨山の国の繁栄の為にも全力を尽くす次第にございます。」
頼隆
「そ、そうじゃな…しっかりと頼んでおくぞ。」
頼隆は、氏豊が口にした意気込みに対して生返事をしていた。
どうも今回の選挙戦の結果が気になって仕方が無いようで上の空になっていたようである。
頼隆
「それにしても、我が国の民たちは幕府の成立を願っておるのであろうか…」
すると今まで黙り込んでいた国輝が口を開く。
国輝
「殿、それは恐らく志太家による策略にございましょう。」
頼隆
「なぬ?志太家の策略と申すか?」
頼隆は驚いた様子で国輝に視線を向けてそう言っていた。
続けて国輝が言う。
国輝
「はい。志太祐藤の嫡男、志太祐宗による策で我が国の領民たちに入れ知恵をはたらいたのではないかと。」
今回の選挙の結果は、志太家による工作によって起こされたものであると国輝は推測していたようだ。
正に御名答である。
頼隆
「ほほう、その策略でこの墨山の国を志太家のものにしようと考えておるというわけか。」
国輝のその言葉に頼隆も納得したような様子であった。
国輝
「仰せの通りにございましょう。志太家の者たちは一癖も二癖もございます故、ここは早々に手を打つべきかと…」
志太家は、策略によって相手の国力を弱めると言った戦略を得意としている。
そしてそれは大名である祐宗をはじめとする策士たちが志太家に存在しているからであるが故に、早いうちに対策を練らねば外河家は志太家に取り込まれてしまうであろう。
国輝はこの現状について外河家の危機であると警鐘を鳴らしていた。
すると頼隆が答え始める。
頼隆
「じゃがしかし…我は民たちの考えておることも全く分からぬわけではない。」
商人推薦代表に投票を行った領民たちの考えも一理あるのではないか。
頼隆は次第にそう考え始めていた。
頼隆
「幕府という一つの大きな国が出来ることで今よりも良き世になる、そんな予感を我も少しは感じておるのじゃ。」
志太家による天下統一で幕府が成立する事で、創天国は一つの国に統一される。
つまりこれは乱世の時代の集結を意味し、今までのような他国との争いも無くなるであろう。
創天国に住まう民たちが心より望んでいる「泰平の世」が訪れるのだ。
それ故にここは志太家に従うという選択肢も悪くは無いのでは、と頼隆は考えていた。
すると国輝が必死の形相をして頼隆に対して声を上げる。
国輝
「殿、この外河家による素晴らしき政に惚れて拙者は士官させていただいたのでございますぞ!かようなことで簡単に他家の者に国を明け渡すなどお止めくだされ!」
どうやら国輝は志太家の軍門に下る事に対しては断固して反対の模様である。
頼隆
「う、うむ…そうであったな…済まぬ。」
頼隆は国輝の迫力に圧倒され、言葉を詰まらせながらそう言っていた。
そこには、選挙戦で勝利を収めた武野氏豊の姿もあった。
頼隆が氏豊に対して声を上げる。
頼隆
「氏豊殿よ、めでたく当選したな!真に良きことじゃ、良きことじゃ!」
頼隆は、氏豊の当選を心から喜んでいる様子である。
氏豊
「ははっ、この武野氏豊は殿直々にお褒めの言葉をいただけて真に嬉しゅうございます。」
氏豊もまた、自身の当選に喜びの表情を見せていた。
しかし、その後すぐに頼隆は曇った表情へと切り替わって言う。
頼隆
「ただ、一つ気になることがあるがな…」
すると氏豊がはっとした様子で答える。
氏豊
「商人推薦代表の、一条殿のことにございますか…?」
頼隆
「うむ…こたびの選挙戦の票の流れが、毎度と違う故にな…」
今回、行われた選挙戦での票差に頼隆は違和感を覚えていたようである。
この選挙戦は、外河家代表推薦代表の候補者が圧倒的な票数を得て圧勝する事がほぼ例年のお決まりとなっていた。
しかし、今回に至っては商人推薦代表が外河家推薦代表を上回らんばかりの票数を獲得していたからである。
一体、これがどう言う事を意味するのであろうか…
頼隆は首を傾げて考え込んでいた。
そうして少し間を置いた後に氏豊が口を開く。
氏豊
「私にもそれは分かりませぬ…ただ、こうして私が選ばれたからにはこの墨山の国の繁栄の為にも全力を尽くす次第にございます。」
頼隆
「そ、そうじゃな…しっかりと頼んでおくぞ。」
頼隆は、氏豊が口にした意気込みに対して生返事をしていた。
どうも今回の選挙戦の結果が気になって仕方が無いようで上の空になっていたようである。
頼隆
「それにしても、我が国の民たちは幕府の成立を願っておるのであろうか…」
すると今まで黙り込んでいた国輝が口を開く。
国輝
「殿、それは恐らく志太家による策略にございましょう。」
頼隆
「なぬ?志太家の策略と申すか?」
頼隆は驚いた様子で国輝に視線を向けてそう言っていた。
続けて国輝が言う。
国輝
「はい。志太祐藤の嫡男、志太祐宗による策で我が国の領民たちに入れ知恵をはたらいたのではないかと。」
今回の選挙の結果は、志太家による工作によって起こされたものであると国輝は推測していたようだ。
正に御名答である。
頼隆
「ほほう、その策略でこの墨山の国を志太家のものにしようと考えておるというわけか。」
国輝のその言葉に頼隆も納得したような様子であった。
国輝
「仰せの通りにございましょう。志太家の者たちは一癖も二癖もございます故、ここは早々に手を打つべきかと…」
志太家は、策略によって相手の国力を弱めると言った戦略を得意としている。
そしてそれは大名である祐宗をはじめとする策士たちが志太家に存在しているからであるが故に、早いうちに対策を練らねば外河家は志太家に取り込まれてしまうであろう。
国輝はこの現状について外河家の危機であると警鐘を鳴らしていた。
すると頼隆が答え始める。
頼隆
「じゃがしかし…我は民たちの考えておることも全く分からぬわけではない。」
商人推薦代表に投票を行った領民たちの考えも一理あるのではないか。
頼隆は次第にそう考え始めていた。
頼隆
「幕府という一つの大きな国が出来ることで今よりも良き世になる、そんな予感を我も少しは感じておるのじゃ。」
志太家による天下統一で幕府が成立する事で、創天国は一つの国に統一される。
つまりこれは乱世の時代の集結を意味し、今までのような他国との争いも無くなるであろう。
創天国に住まう民たちが心より望んでいる「泰平の世」が訪れるのだ。
それ故にここは志太家に従うという選択肢も悪くは無いのでは、と頼隆は考えていた。
すると国輝が必死の形相をして頼隆に対して声を上げる。
国輝
「殿、この外河家による素晴らしき政に惚れて拙者は士官させていただいたのでございますぞ!かようなことで簡単に他家の者に国を明け渡すなどお止めくだされ!」
どうやら国輝は志太家の軍門に下る事に対しては断固して反対の模様である。
頼隆
「う、うむ…そうであったな…済まぬ。」
頼隆は国輝の迫力に圧倒され、言葉を詰まらせながらそう言っていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
墨山事件
佐村孫千(サムラ マゴセン)
ミステリー
舞台は架空世界の現代。
とある地方で謎の集団失踪事件が発生。
それから四十数年の時が過ぎたが未だ真相解明には至っていない。
この未解決事件を解決すべく一人の若き探偵が立ち上がった...。
※
この物語は、ネットの都市伝説である「鮫島事件」をモチーフに作者が独自のオリジナル要素を加えて執筆した作品です。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる