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第8章 将軍への道程編

16.墨山城評定

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一方その頃、墨山城では家臣たちを集めて評定が開かれていた。
そこには、選挙戦で勝利を収めた武野氏豊の姿もあった。

頼隆が氏豊に対して声を上げる。

頼隆
「氏豊殿よ、めでたく当選したな!真に良きことじゃ、良きことじゃ!」

頼隆は、氏豊の当選を心から喜んでいる様子である。

氏豊
「ははっ、この武野氏豊は殿直々にお褒めの言葉をいただけて真に嬉しゅうございます。」

氏豊もまた、自身の当選に喜びの表情を見せていた。
しかし、その後すぐに頼隆は曇った表情へと切り替わって言う。

頼隆
「ただ、一つ気になることがあるがな…」

すると氏豊がはっとした様子で答える。

氏豊
「商人推薦代表の、一条殿のことにございますか…?」

頼隆
「うむ…こたびの選挙戦の票の流れが、毎度と違う故にな…」

今回、行われた選挙戦での票差に頼隆は違和感を覚えていたようである。

この選挙戦は、外河家代表推薦代表の候補者が圧倒的な票数を得て圧勝する事がほぼ例年のお決まりとなっていた。
しかし、今回に至っては商人推薦代表が外河家推薦代表を上回らんばかりの票数を獲得していたからである。

一体、これがどう言う事を意味するのであろうか…
頼隆は首を傾げて考え込んでいた。

そうして少し間を置いた後に氏豊が口を開く。

氏豊
「私にもそれは分かりませぬ…ただ、こうして私が選ばれたからにはこの墨山の国の繁栄の為にも全力を尽くす次第にございます。」

頼隆
「そ、そうじゃな…しっかりと頼んでおくぞ。」

頼隆は、氏豊が口にした意気込みに対して生返事をしていた。
どうも今回の選挙戦の結果が気になって仕方が無いようで上の空になっていたようである。

頼隆
「それにしても、我が国の民たちは幕府の成立を願っておるのであろうか…」

すると今まで黙り込んでいた国輝が口を開く。

国輝
「殿、それは恐らく志太家による策略にございましょう。」

頼隆
「なぬ?志太家の策略と申すか?」

頼隆は驚いた様子で国輝に視線を向けてそう言っていた。
続けて国輝が言う。

国輝
「はい。志太祐藤の嫡男、志太祐宗による策で我が国の領民たちに入れ知恵をはたらいたのではないかと。」

今回の選挙の結果は、志太家による工作によって起こされたものであると国輝は推測していたようだ。
正に御名答である。

頼隆
「ほほう、その策略でこの墨山の国を志太家のものにしようと考えておるというわけか。」

国輝のその言葉に頼隆も納得したような様子であった。

国輝
「仰せの通りにございましょう。志太家の者たちは一癖も二癖もございます故、ここは早々に手を打つべきかと…」

志太家は、策略によって相手の国力を弱めると言った戦略を得意としている。
そしてそれは大名である祐宗をはじめとする策士たちが志太家に存在しているからであるが故に、早いうちに対策を練らねば外河家は志太家に取り込まれてしまうであろう。
国輝はこの現状について外河家の危機であると警鐘を鳴らしていた。

すると頼隆が答え始める。

頼隆
「じゃがしかし…我は民たちの考えておることも全く分からぬわけではない。」

商人推薦代表に投票を行った領民たちの考えも一理あるのではないか。
頼隆は次第にそう考え始めていた。

頼隆
「幕府という一つの大きな国が出来ることで今よりも良き世になる、そんな予感を我も少しは感じておるのじゃ。」

志太家による天下統一で幕府が成立する事で、創天国は一つの国に統一される。
つまりこれは乱世の時代の集結を意味し、今までのような他国との争いも無くなるであろう。
創天国に住まう民たちが心より望んでいる「泰平の世」が訪れるのだ。
それ故にここは志太家に従うという選択肢も悪くは無いのでは、と頼隆は考えていた。

すると国輝が必死の形相をして頼隆に対して声を上げる。

国輝
「殿、この外河家による素晴らしき政に惚れて拙者は士官させていただいたのでございますぞ!かようなことで簡単に他家の者に国を明け渡すなどお止めくだされ!」
どうやら国輝は志太家の軍門に下る事に対しては断固して反対の模様である。

頼隆
「う、うむ…そうであったな…済まぬ。」

頼隆は国輝の迫力に圧倒され、言葉を詰まらせながらそう言っていた。
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