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5.侮られやすい立場
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「とにかく、俺は両親を失っている若い侯爵な訳だ。貴族の世界において、いやこれに関してはどこの世界でも同じかもしれないが、年齢というものは重要になる。年功序列とでもいうべきか。俺という存在は、侮られやすい立場なのだ」
「それは……なんとなく、理解することができます」
ルバイトは、アリシアの目を見ていた。
彼女の目には、不安の色が宿っている。その不安は、ルバイトにとっては課題であった。
師であるベルトンの言い付けを、ルバイトは守っていくと決意していた。
その志は、まったくもって変わっていない。目の前にいるアリシアと良好な関係を築き、彼女を幸せにする。ルバイトはそれを使命のように思っていた。
故に彼は、慎重に言葉を発していた。
貴族の世界などにあまり馴染みがないアリシアに、必要のない不安を与えないようにするために。
「加えて、俺の両親には少々問題があった。とりわけ、母上にはな……」
「問題?」
「言っておくが、両親は尊敬できる人物だったと俺は思っている。人格面において、問題はなかったと断言しておこう。領地の民からも慕われていたしな。それに問題というのも、貴族の世界において、というものだ」
ルバイトの言葉に、アリシアはきょとんとしていた。
その言葉の意味が、わかっていないといった感じだ。
その時点で、ルバイトは自分が選択を誤ったということを理解した。
貴族の世界を知らないアリシアに、遠回しに説明するのは良くないことだったのだ。
「……貴族というものは、身分にこだわるものだ。平民を妻に迎え入れることはほとんどない。だが、父上はそうしてしまったんだ。母上は、孤児の平民だった」
「それは……」
「父上の行動は、貴族社会から非難されるような行動だった。それも含めて、アルバーン侯爵家というものは侮られているのだ」
ルバイトの立場は、決していいものであるとは言えなかった。
平民を母親に持っていた若き侯爵。貴族の社会において、それは馬鹿にされて、蔑まれるような存在なのである。
しかしルバイトは、それでも折れなかった。
彼は窮地に立たされながらもめげることなく、他の貴族達に立ち向かっているのだ。
「元々非難されていたアルバーン侯爵家は、当主夫妻が亡くなったことによって、さらに立場を悪くした。そんな俺について来てくれる使用人は、一握りしかいなかったんだ。まあ色々と揉めたのさ。その結果が今の屋敷の現状なのだが、理解してもらえただろうか?」
「ええ、なんとなくではありますが……」
アリシアは、少しぎこちなく頷いていた。
ルバイトにとって、それは少々心配な反応だ。ただ同時に、アリシアが貴族のことを何もわかっていないということも理解した。
その辺りの示し合わせは、追々していくしかないのだろう。
アリシアの態度に、ルバイトはそんなことを思っていた。
「……さて、それでは次は君のことを教えてくれないだろうか?」
「私のこと、ですか?」
「ああ、君のことは大まかに聞いているが、俺はどうやら本当に大まかにしか知らないようだ。できれば、聞かせてもらいたい。ランベルト侯爵家で、君がどのように扱われてきたのかも含めて……」
そこでルバイトは、アリシアにそう問いかけた。
彼女に何かがあることは、ルバイトも既にわかっていた。それを問うべきなのかどうか悩んでいた彼だったが、結局聞いてみることにしたのだ。
それが必要なことだと、ルバイトは判断した。
アリシアのことを知らなければ、彼女を幸せにすることもできない。そう考えてルバイトは、アリシアに視線を向けるのだった。
「それは……なんとなく、理解することができます」
ルバイトは、アリシアの目を見ていた。
彼女の目には、不安の色が宿っている。その不安は、ルバイトにとっては課題であった。
師であるベルトンの言い付けを、ルバイトは守っていくと決意していた。
その志は、まったくもって変わっていない。目の前にいるアリシアと良好な関係を築き、彼女を幸せにする。ルバイトはそれを使命のように思っていた。
故に彼は、慎重に言葉を発していた。
貴族の世界などにあまり馴染みがないアリシアに、必要のない不安を与えないようにするために。
「加えて、俺の両親には少々問題があった。とりわけ、母上にはな……」
「問題?」
「言っておくが、両親は尊敬できる人物だったと俺は思っている。人格面において、問題はなかったと断言しておこう。領地の民からも慕われていたしな。それに問題というのも、貴族の世界において、というものだ」
ルバイトの言葉に、アリシアはきょとんとしていた。
その言葉の意味が、わかっていないといった感じだ。
その時点で、ルバイトは自分が選択を誤ったということを理解した。
貴族の世界を知らないアリシアに、遠回しに説明するのは良くないことだったのだ。
「……貴族というものは、身分にこだわるものだ。平民を妻に迎え入れることはほとんどない。だが、父上はそうしてしまったんだ。母上は、孤児の平民だった」
「それは……」
「父上の行動は、貴族社会から非難されるような行動だった。それも含めて、アルバーン侯爵家というものは侮られているのだ」
ルバイトの立場は、決していいものであるとは言えなかった。
平民を母親に持っていた若き侯爵。貴族の社会において、それは馬鹿にされて、蔑まれるような存在なのである。
しかしルバイトは、それでも折れなかった。
彼は窮地に立たされながらもめげることなく、他の貴族達に立ち向かっているのだ。
「元々非難されていたアルバーン侯爵家は、当主夫妻が亡くなったことによって、さらに立場を悪くした。そんな俺について来てくれる使用人は、一握りしかいなかったんだ。まあ色々と揉めたのさ。その結果が今の屋敷の現状なのだが、理解してもらえただろうか?」
「ええ、なんとなくではありますが……」
アリシアは、少しぎこちなく頷いていた。
ルバイトにとって、それは少々心配な反応だ。ただ同時に、アリシアが貴族のことを何もわかっていないということも理解した。
その辺りの示し合わせは、追々していくしかないのだろう。
アリシアの態度に、ルバイトはそんなことを思っていた。
「……さて、それでは次は君のことを教えてくれないだろうか?」
「私のこと、ですか?」
「ああ、君のことは大まかに聞いているが、俺はどうやら本当に大まかにしか知らないようだ。できれば、聞かせてもらいたい。ランベルト侯爵家で、君がどのように扱われてきたのかも含めて……」
そこでルバイトは、アリシアにそう問いかけた。
彼女に何かがあることは、ルバイトも既にわかっていた。それを問うべきなのかどうか悩んでいた彼だったが、結局聞いてみることにしたのだ。
それが必要なことだと、ルバイトは判断した。
アリシアのことを知らなければ、彼女を幸せにすることもできない。そう考えてルバイトは、アリシアに視線を向けるのだった。
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