妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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94.昔と変わらず

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「あなたは本当に変わりませんね……」
「それはこちらの台詞ですよ、ウェリダン様」

 ウェリダンお兄様とナルティシア嬢は、笑顔で言葉を交わしていた。
 先程まで喧嘩寸前というような雰囲気だったのに、今はそれがすっかり消えている。

「そういえば、ナルティシア嬢は今婚約などされているのですか?」
「なんですか? 藪から棒に? まあ、婚約などはしていませんよ。そういった話も残念ながらありません」
「そうですか。それなら、僕と婚約していただけませんか?」
「え?」

 喧嘩が一段落してからウェリダンお兄様が発した言葉に、私は思わず疑問符を浮かべて、間の抜けた声まで出してしまった。
 ナルティシア嬢も、目を丸めている。それは当然だ。この兄は、急に何を言い出しているのだろうか。

「ナルティシアとは友人ではありますが、一人の女性としても魅力的であると思っていました。こうして改めて顔を合わせてわかりました。僕はあなたと結婚したいと」

 ウェリダンお兄様は、特に恥ずかしがることもなく自分の気持ちを口にしていた。
 つまり幼い頃から、友人以上の感情があったということなのだろうか。いやというか、これは普通に愛の告白ということになるような気もするのだが。

「……なるほど、そうでしたか。ウェリダン様、私も概ね同じような気持ちです」
「え?」

 ただでさえ混乱していた私は、ナルティシア嬢の返答にまた変な声を出すことになった。
 急な話であるというのに、彼女の動揺は既に収まっているようだ。いくら侯爵家の令嬢だからといって、そんなにすぐに切り替えられるものなのだろうか。
 いや、その辺りには貴族としては割り切れるようになるべきなのかもしれない。私も見習わなければならないだろう。

「もちろん、お父様などと掛け合う必要はありますが、私個人としてはウェリダン様と婚約したいと思っています。あなたが良い人であるということは、よくわかっていますから。それに最近は、良い評判も聞いています。表情も豊かになったとか」
「ええ、貴族として一皮剥けましたよ。それはこちらのクラリアのお陰です。今回こうしてここに来たのも、このできた妹のお陰ですよ」
「そうだったのですか?」
「あ、いえ、私はそんな別に……」

 ウェリダンお兄様とナルティシア嬢の言葉に、私はゆっくりと首を横に振った。
 私はそれ程、何かができたという訳でもない。きっかけを作っただけだ。
 しかし何はともあれ、二人がこうして仲良くしてくれて本当に良かった。婚約などがどうなるかはわからないが、とりあえずは一安心である。
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