妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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95.彼女への罰(アドルグside)

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「五十年だ」
「いや、それは流石に長すぎます。十五年が妥当でしょう」

 アドルグは、ロヴェリオとマネリア嬢の処遇について話し合っていった。
 ヴェルード公爵家としては、五十年の禁固刑を望んでいる。アドルグはそう主張をしていた。
 ただ、ヴェルード公爵家がまとめた結論というものは、実の所二十年である。それをアドルグは、独断で長くしようとしている。

 しかしアドルグも、実際に五十年の求刑が下されるとは思っていない。
 彼は敢えて、長めの求刑を主張している。とりあえず初めは、大胆な主張をしておくことにしたのだ。後の意見を通りやすくするために。

「ロヴェリオ、笑わせるなよ。貴族の令息……オルディアの柔肌を汚したあの女が、十五年で日の元に戻って来るなど、許容できると思うのか? 王家として、寛大な措置を取ろうというのか? しかしそれもおかしな話だ。今回は王家の失態ともいえる出来事だ」
「それはもちろんわかっています。しかし、過激な処罰というものは反感を買うことになるものです。それはアドルグ様だって、わかっているはずです」
「そんなものは、好きに言わせておけば良い。そもそもの話、お前達アルフェリド王家というものは甘過ぎるのだ。時には厳格さというものを見せておかなければならない」

 アドルグは現状、アルフェリド王家もヴェルード公爵家も舐められているきらいがあると考えていた。
 クラリアが二人の令嬢やディトナスに侮辱されたのも、そもそもの原因はそこにあったといえる。威厳というものが、公爵家にも王家にも足りない。それがアドルグの考えだ。
 良い機会であるため、アドルグはそれも改めておきたいと考えていた。王家や公爵家に牙を向けばどうなるか、それを示しておきたかったのだ。

「アドルグ様の言っていることは、わからないという訳でもありません。だけど、王家や公爵家が横暴に思われるのも問題です。それに過度な罰を与えると不都合もある。何事もバランスが大切ですよ」
「それならば、四十年といった所か」
「それでも長過ぎます。今回の場合は、二十年というのが妥当です」
「三十年だ。これ以上は譲れない」
「それなら、二十五年です」

 ロヴェリオの言葉に、アドルグは笑みを浮かべていた。
 それは相手も、自分と同じように敢えて短い年数を主張していたということが理解できたからである。
 一人の王族として、着々と成長しているロヴェリオに、アドルグは歓喜を覚えていた。そして彼としても、ある程度は満足できる結論に、とりあえずは納得するのだった。
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