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42.力強い抱擁
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「……可愛い」
「え?」
少しの沈黙の後、ヴェルード公爵夫人はゆっくりと口を開いた。
その言葉に、私はロヴェリオ殿下と顔を見合わせることになった。驚いて彼の方を見たら、彼も私の方を見ていたのだ。
つまりこれも、いつものヴェルード公爵夫人ではないということだろう。というか、今の言葉は一体何に向けての言葉なのだろうか。
「まあ、あの人とカルリアの子供だものね。それは当たり前かしら?」
「え、えっと……」
「抱きしめてもいい?」
「あ、はい……」
私が頷くと、ヴェルード公爵夫人がゆっくりと姿勢を低くして、そっと手を伸ばしてきた。困惑しながらも、私はその抱擁を受け入れる。
どうやら、先程の発言は私に向けてのものだったようだ。夫人がお母さんとは友好的な関係であるということは聞いていたが、私に対しても友好的ということだろうか。
「はあ……」
「あの、ヴェルード公爵夫人……」
「その言い方は、少し硬いわね。レセティアと名前で呼んで頂戴」
「レセティア様、ですか?」
「ええ……ああ、あなたともっと早く会いたかったわね」
ヴェルード公爵夫人改めレセティア様は、少し泣きそうな声を出していた。
お母さんはレセティア様に仕えていたと聞く。もしかして、私が思っていた以上に親しい関係であったのだろうか。その辺りについては、今度聞いてみた方がいいかもしれない。
何はともあれ、レセティア様が私に対しても友好的であることは確実だ。私を強く抱きしめて、髪をゆっくりと撫でてくれているし、それは間違いない。
「うーん……連れて帰っちゃおうかしら?」
「え?」
「叔母上、何を言っているんだよ?」
「ああ、ごめんなさい。色々と感慨深いものがあって」
ロヴェリオ殿下の呼びかけに、レセティア様はやっと私のことを離してくれた。
その様子に、ずっと見ていたロヴェリオ殿下は少し呆れているようだった。そんな彼に対しても、レセティア様は目を細めて笑っている。
どうやらそちらに対しても、結構な愛を向けているようだ。子供好き、ということなのだろうか。思っていたよりも、ずっと親しみやすい人なのかもしれない。
「ロヴェリオ殿下とこうして顔を合わせるのも、結構久し振りでしたね。最近は、私の方が色々と忙しかったから、ゆっくりと話せる時間がなくて……」
「叔母上って、そんな感じでしたかね? もう少し堅い印象があったんですけど……」
「あら? 私にそんなイメージを持っていたのですね。まあ確かに、公の場では気を引き締めていますけれど……最近会っていなかった弊害かしらね?」
「……そ、そうだったのか。知らなかった」
ロヴェリオ殿下は、叔母様のことはそれ程よく知っている訳でもなかったようだ。
思い返してみると、私が来てからのことを考えても、二人は確かにあまり顔を合わせていなかったような気がする。単純に二人とも忙しい訳だし、そういった時間に恵まれなかったのだろうか。
そのためロヴェリオ殿下は、公的なイメージに印象が引っ張られていた。そういうことなのだろう。
「え?」
少しの沈黙の後、ヴェルード公爵夫人はゆっくりと口を開いた。
その言葉に、私はロヴェリオ殿下と顔を見合わせることになった。驚いて彼の方を見たら、彼も私の方を見ていたのだ。
つまりこれも、いつものヴェルード公爵夫人ではないということだろう。というか、今の言葉は一体何に向けての言葉なのだろうか。
「まあ、あの人とカルリアの子供だものね。それは当たり前かしら?」
「え、えっと……」
「抱きしめてもいい?」
「あ、はい……」
私が頷くと、ヴェルード公爵夫人がゆっくりと姿勢を低くして、そっと手を伸ばしてきた。困惑しながらも、私はその抱擁を受け入れる。
どうやら、先程の発言は私に向けてのものだったようだ。夫人がお母さんとは友好的な関係であるということは聞いていたが、私に対しても友好的ということだろうか。
「はあ……」
「あの、ヴェルード公爵夫人……」
「その言い方は、少し硬いわね。レセティアと名前で呼んで頂戴」
「レセティア様、ですか?」
「ええ……ああ、あなたともっと早く会いたかったわね」
ヴェルード公爵夫人改めレセティア様は、少し泣きそうな声を出していた。
お母さんはレセティア様に仕えていたと聞く。もしかして、私が思っていた以上に親しい関係であったのだろうか。その辺りについては、今度聞いてみた方がいいかもしれない。
何はともあれ、レセティア様が私に対しても友好的であることは確実だ。私を強く抱きしめて、髪をゆっくりと撫でてくれているし、それは間違いない。
「うーん……連れて帰っちゃおうかしら?」
「え?」
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「ああ、ごめんなさい。色々と感慨深いものがあって」
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その様子に、ずっと見ていたロヴェリオ殿下は少し呆れているようだった。そんな彼に対しても、レセティア様は目を細めて笑っている。
どうやらそちらに対しても、結構な愛を向けているようだ。子供好き、ということなのだろうか。思っていたよりも、ずっと親しみやすい人なのかもしれない。
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「叔母上って、そんな感じでしたかね? もう少し堅い印象があったんですけど……」
「あら? 私にそんなイメージを持っていたのですね。まあ確かに、公の場では気を引き締めていますけれど……最近会っていなかった弊害かしらね?」
「……そ、そうだったのか。知らなかった」
ロヴェリオ殿下は、叔母様のことはそれ程よく知っている訳でもなかったようだ。
思い返してみると、私が来てからのことを考えても、二人は確かにあまり顔を合わせていなかったような気がする。単純に二人とも忙しい訳だし、そういった時間に恵まれなかったのだろうか。
そのためロヴェリオ殿下は、公的なイメージに印象が引っ張られていた。そういうことなのだろう。
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