妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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41.現れた公爵夫人

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「それで、今はクラリアのお母様はどうしているんだ?」
「今は色々と準備しなければならないことがあるらしくて……」
「準備? そうか」

 お母さんが何かしらの準備をしているため、私は中庭でロヴェリオ殿下と話していた。
 お兄様方も何か用事があるらしく、今は彼の相手をする人がいない。ということもあって、私に白羽の矢が立ったのである。

「えっと、ロヴェリオ殿下は事情を知っているのですか?」
「大まかには、アドルグ様と父上から聞いているよ。まあ、よくわからないけど、良好な関係であるならいいんじゃないか?」
「そうですね。私もそう思うようにしています。難しいことを私が考えても、仕方ないですから」

 ロヴェリオ殿下の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 色々とわからないことはあるけれど、しかしそれらをいくら考えても仕方ないことだ。状況が悪くない以上、受け入れる方が良いと私は思っている。

「心配していた叔母上との関係も、なんとかなるんじゃないか?」
「あ、そうですね。まだお話したことはないですけれど……」
「……なんて言っていたら、件の叔母上だ」
「え? あれ? なんだかこっちに来ているような……」
「ああ、確かにそうだな」

 ロヴェリオ殿下の指摘に、私は周囲を見渡した。
 すると確かに、ヴェルード公爵夫人がいた。彼女は、こっちに向かって歩いて来ているような気がする。もしかして、目的は私だったりするのだろうか。
 それに私は、少し焦った。まだ心の準備がまったくできていない。実際に顔を合わせて話して、本当に大丈夫だろうか。色々と不安である。

「叔母上、何か用ですか?」
「ロヴェリオ殿下、御歓談中申し訳ありませんね。少し、クラリアを貸してもらえますか?」
「俺が聞けない話なら席を外しますが、そうでないなら同席させてくれませんか? クラリアとは親戚で友達ですからね。できれば長く一緒にいたい」
「……私の用事はすぐに済みます」

 ロヴェリオ殿下は、私のことを気遣ってくれているようだった。
 それはとてもありがたい。お陰で落ち着く時間ができた。
 ということで、私はヴェルード公爵夫人の方を見る。すると彼女の表情が崩れているのがわかった。

「うふふ……」

 夫人の表情は柔らかく歪んでいる。恐らく、それは笑みに分類されるものだといえるだろう。真剣な表情しか見たことがなかったため、私はその表情に驚いていた。
 そこでふと隣を見ると、ロヴェリオ殿下も目を丸めていることがわかった。どうやらこれは、いつものヴェルード公爵夫人の表情という訳ではないらしい。
 一体何故、そのような表情をしているのだろうか。私は少しだけ、警戒を強めるのだった。
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