妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

文字の大きさ
40 / 103

40.わからなくても

しおりを挟む
「お母さんは、メイドさんだったの?」
「え? どうしてそれを……」
「やっぱり……」

 私の質問に対して、お母さんは驚いたような表情をしていた。
 しかし、これは流石に私もわかる。ヴェルード公爵家の屋敷で過ごしていた故に、使用人の人達の口調というものは染みついているのだ。
 だから、お母さんの言動からわかった。ヴェルード公爵――つまりはお父様とどこで出会ったのかも説明がつくし、要するにお母さんはこの屋敷に仕えていたということなのだろう。

「お母さんは、ヴェルード公爵家のメイドさんだったんだね? それでお父様と浮気しちゃったの?」
「えっと……まあ、大まかに説明するとそういうことになるのだけれど」
「ヴェルード公爵夫人は、よくお母さんを屋敷に入れてくれたね。優しい人だって聞いてはいたけど、本当に寛大な人なんだ」
「まあ……」

 私の言葉に対して、お母さんはゆっくりと目をそらしていた。
 娘である私は、それがどのような意味があるのかがわかる。多分、私も予想というものは当たっている訳ではないのだ。
 とはいえ、外れているという訳でもなさそうである。その微妙な反応からは、それが読み取れた。

「何か間違っているの?」
「……ええ、その、私は元々ヴェルード公爵夫人に仕えていたメイドだったのよ」
「え?」
「それから奥様について、こっちに来て……色々とあったのだけれど、奥様とは今でも良好な関係を築いているというか、繰り返しになるけれど、寛大な心で接してもらっているの」
「……よくわからないや」

 お母さんの説明に対して、私はあまり納得することはできなかった。
 お母さんとヴェルード公爵が浮気した結果、私が生まれた。それは紛れもない事実であるはずだ。それが問題だったから、私は二人の令嬢に罵倒されたりもした。
 ヴェルード公爵夫人とお母さんがかつて主従の関係にあったとしても、それで浮気を許すという訳でもないような気がする。むしろ怒るんじゃないかと、私なんかは思ってしまう。

 考えれば考える程、この問題はわからなくなってくる。
 そこで私は、考えるのをやめた。お母さんもなんだか、全部話しているという感じではないし、考えるだけ無駄なのかもしれない。
 二人の仲が良いのは、私にとっては悪いことではない訳だし、そういうことだと思っておこう。

「お母さんは、いつまでここにいられるの?」
「ああ、それについてはずっと……」
「ずっと?」
「ええ、ここでお世話になるということになっているわ」
「それは……嬉しいね」

 私は重要なことをお母さんに聞いた。
 それに対して、何よりも嬉しい言葉が返ってきた。
 これからはお母さんと一緒にいられるようだ。それに私は喜びを感じながら、笑顔を浮かべるのだった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

短編 跡継ぎを産めない原因は私だと決めつけられていましたが、子ができないのは夫の方でした

朝陽千早
恋愛
侯爵家に嫁いで三年。 子を授からないのは私のせいだと、夫や周囲から責められてきた。 だがある日、夫は使用人が子を身籠ったと告げ、「その子を跡継ぎとして育てろ」と言い出す。 ――私は静かに調べた。 夫が知らないまま目を背けてきた“事実”を、ひとつずつ確かめて。 嘘も責任も押しつけられる人生に別れを告げて、私は自分の足で、新たな道を歩き出す。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...