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12.古代の魔法

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「ドルダン国王は現在体調を崩しているそうですね。その症状は、魔法を使っても治らない。苦痛を和らげることもままならないとか」
「え、ええ、そうですが……」
「古代の魔法は、古代の魔法でしか解くことができません。単に寿命なら、治らないにしても魔法で多少は痛みなどをマシにすることができます。国王の症状は、やはり古代の魔法によるものだと考えられます」

 ジオンド老師は、私に古代の魔法について語り始めた。
 その神妙な語り口に、私は少し驚く。彼から明らかに子供ではない人生経験のようなものが、感じられたからだ。

「しかしこれが、中々に厄介なものでしてね。扱いを間違えると、非常に危険なものなのです。事実として、私に魔法をかけた魔法使いは死にました。強力ではあるが、大きなリスクがある。それが古代の魔法です。優れた魔法使いでなければ、使いこなすことは難しいと言われています」
「……そんな魔法を、現聖女であるティスリアが使いこなせるとは思えないのですが」
「恐らく、使いこなせてはいないでしょう。古代の魔法の厄介な所はそこにあります。少し実力がある魔法使いなら使える。思い上がった者が使い、過ちを起こすものなのです」

 ジオンド老師は、椅子からゆっくりと立ち上がった。
 その足は、ふらついている。やはり動きは老人だ。私は心配して、思わず老師の傍に寄る。

「……これは」
「感じられますか? 私の体に流れている魔力と、古代の魔法が」
「ええ、不思議な感覚です。確かにこれは、私が知っている魔法ではない」
「やはりあなたには、才能があるようだ。きっとあなたなら、古代の魔法も使いこなせるでしょう。そのために、このジオンドを使っていただきたい」
「使う?」
「古代の魔法を解く実験台にしていただきたいのです。できれば私も、このような姿では死にたくありませんからね」
「なっ……!」

 ジオンド老師は、力強い視線を私に向けてきた。
 彼が言っていることは、とても物騒だ。普通に考えたら、断るべきことである。
 ただその言葉には、切なる願いがあった。元の姿に戻りたい。その気持ちが視線からは、とてもよく伝わってくる。

「年老いた私には、最早それが実現できそうにありません。しかしあなたならば、きっとできると思っています。文献なら、あそこの棚にあります」
「……私にできるのかはわかりませんが」
「自信を持っていただきたい。あなたは優れた魔法使いだ。ヴェルゼス様から聞いていたが、一目見て私も理解した。あなたならきっと、成し遂げてくれると」
「……わかりました。引き受けさせていただきます」

 老師の必死の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 私にそれができるかはわからない。ただとにかくやってみるとしよう。
 何もしない内から、尻込みしていても仕方ない。まずは試してみるべきだ。
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