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11.老師への挨拶

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 一晩ゆっくりと眠ったお陰もあってか、私はすぐに回復することができた。
 という訳で、先延ばしにしいたジオンド老師への挨拶へとやって来た。その件のジオンド老師を見て、私は固まってしまっている。

「……ヴェルゼス様、この方がジオンド老師、なのですか?」
「ええ、彼が紛れもなくジオンド老師です」
「でも、非常に失礼ながら、子供にしか見えないのですが……」
「あはは、やはりそう思われますかな?」

 私の言葉に、ジオンド老師は笑みを浮かべていた。
 それはとても無邪気な子供の笑みだ。髪の毛は白髪であるものの、彼が老師と呼ばれるような年齢であるとはまったく思えない。

「いや実は、実年齢よりも若く見られがちなのです」
「若く見られがちなんてレベルではないと思いますが……」
「ええ、今のは冗談ですから。実はですね。私はジオンドの孫でして」
「孫なんですか?」
「いえ、彼がジオンド老師です」

 ジオンド老師は、どこかおどけた様子で言葉を発していた。
 そのふざけた様子に、ヴェルゼス様は一切表情を変えていない。その二人の正反対の様子に、私は少し混乱してしまう。
 ヴェルゼス様は冗談を言うような人ではなかったはずだ。ただ、彼が冗談を言っているという方が、まだ状況に違和感がない。この子供が老齢であると聞いた老師なんて、私からすれば信じられないことである。

「……まあ、本当のことを言ってしまうと、私はとある魔法によって若返っているのです」
「そんな魔法は聞いたことがありません。これでも私は聖女ですから、魔法の知識は随一です」
「これは本当なのですよ。こう見えても御年九十七歳です。こんな見た目をしていますが、立つのもままならないんですよ。若返っているのは見た目だけですからね」

 ジオンド老師は、悲しそうな顔をしながら私にゆっくりと手を振った。
 その所作だけ見れば、確かに老人のようにも思える。やはり彼は、既におじいちゃんということなのだろうか。

「ど、どうしてそんな魔法を?」
「とある事件の時に、かけられたのです。まったく不便なものですよ、この見た目で老人程に体が限界だなんて、できることも限られてきます。忌々しいものです。古代の魔法なんて」
「古代の魔法、ですか?」
「ええ、ただその知識も役に立つかもしれません。聖女セレティナ、あなたはドルダン国王を救いたいのでしょう? その方法を、私が授けましょう」
「……え?」

 ジオンド老師の言葉に、私は再度固まることになった。
 私は、ゆっくりとヴェルゼル様の方を向いた。すると彼は、ゆっくりと頷く。
 どうやらこれは、ただの挨拶という訳でもなさそうだ。私の置かれている状況を打開するための会合、ということなのだろう。
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