聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私は、朝早くに起きて、レイグスを待っていた。
 朝早いのに、お父さんもお母さんも既に起きている。私を見送ってくれるようだ。

「あっ……」

 そんな風に三人で待っていると、家の呼び鈴が鳴らされた。
 恐らく、レイグスが来てくれたのだろう。

「今、開けます」
「おっ……もう準備はできているか?」
「レイグス……うん、いつでも出られるよ」

 急いで玄関まで行き、戸を開けると、レイグスが立っていた。
 いよいよ、王都へ手発するのだ。

「それにしても、お前も大変だな……昨日、王都から帰って来たのに、また王都に向かうなんて……」
「確かに、それはそう思うよ。でも、向かわないと困ったことになるし……」
「ああ、そうだな……」

 レイグスは、少し苦笑いしていた。
 確かに、私は王都とこの町をまたも行き来することになる。それは、とても大変なことだろう。
 私としても、こんなに早く王都に戻るとは思っていなかった。こうなるなら、最初から聖女をやめなければよかった。そう思ってしまうが、今更後悔しても遅い。今は、やるべきことをやるべきなのだ。

「レイグス君、おはよう」
「今日から、娘のことをよろしくね」
「あ、おじさん、おばさん……ええ、アルメアのことは任せてください」

 そこで、お父さんとお母さんがやって来た。
 二人の言葉に対して、レイグスは力強く答える。こういう時、素直にそういうことが言えるのは彼のいい所だろう。

「あら、かっこいい」
「あれ? どうして、そこで僕を見るのかな?」
「あなたも、これくらい堂々としてくれたら、格好がつくと思っただけよ」
「それは、勘弁してほしいな……」

 お父さんとお母さんは、いつも通りだった。
 特に別れの寂しさを表面に出していないその態度が、今は心地いい。
 私は、問題を解決して、すぐに帰ってくる。それでいいのだと、二人は態度で示してくれているのだ。

「それじゃあ、行ってくるね」
「気をつけるんだよ」
「今度は、できたら帰ってくる前に連絡の一つでも入れてくれると助かるわ。まあ、できないならそれは仕方がないけど」
「うん、できたら連絡するね」

 二人に別れを告げて、私とレイグスは馬車に乗り込む。
 戸が閉まって、少ししてから、ゆっくりと馬車は動き出す。

「さて、いよいよ出発か……」
「うん、しばらくこの町からもお別れだね」
「すぐに帰って来るさ。第三王子の悪行を止めてな……」
「うん……」

 私達は、固く決意する。必ず、ビクトンの愚行を止めると。
 そして、この町に無事に戻って来る。私達の目的は、ただそれだけなのだ。
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