堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

文字の大きさ
69 / 70

傷口

しおりを挟む
次の日の朝、僕は普段通り学校に行った。

本当は、勉強どころではなかったが、かといって家には居づらかったので、外に出た方がマシだった。

教室に入ると、純が心配そうに声をかけてきた。

どうやら僕がやつれているように見えたらしい。

それもそうだろう。

昨日は兄さんの事で悩み続けたせいで、あまり寝られなかったのだから。

「………ごめん、今日は、そっとしておいて。」

純の気遣いはとても嬉しかったが、今はそれも心苦しくて、僕は拒絶してしまった。

純は、それ以上は何も言わず、自分の席へと戻っていった。

そうして午前中の間、僕たちは何も話さなかった。




昼休みになり、僕は1人で屋上に向かった。

そこに誰もいない事を確認すると、フェンスまで向かい、座った。

そしてポケットから、隠し持っていたカッターを取り出し、手のひらを切った。

「っ……痛…。」

これはいわゆる、リストカットというものだ。

これをすると、辛さを紛らせることができるらしい。

確かに、少しだけだが、心が落ち着いたような気がした。

「………兄さん、僕はどうすればいい?」

まず最初に思いついたのは、警察に自首する事だった。

捕まって、今までの事が明るみになったら、僕は間違いなく死刑になるだろう。

それは別に、構わない。

けれども僕が死んだところで、兄さんへの罪滅ぼしにはならない。

壊れた兄さんを、ひとりぼっちにさせるなんて、どうしてもできなかった。

せめて、兄さんの今の状況を、どうにか改善するまでは、死ぬわけにはいかなかった。

「海斗っ!何をしているんだ⁉︎」
「あっ………。」

聞き慣れた声がする方に顔を向けると、やはりそこには、血相を変えた純がいた。

純はこちらに駆け寄ると、僕からカッターを取り上げた。

「何で、こんな事を……。」
「えっ……?あっ、あはは。何で、だろう?」

いつもなら、上手い嘘の一つや二つは思いつくのに、今は全然頭が回らず、笑って誤魔化すしかなかった。

そんな僕に対してこれ以上問いただす事もなく、純はポケットから取り出した絆創膏を僕の切り傷に手早く貼った。

「幸い傷は浅いようだ。これなら、保健室に行く必要もないだろう。」
「あ……ありがとう。」

純の言い方は、他の人たちには秘密にしておくという意味に思えて、少し感謝した。

「なあ海斗。兄さんの事、もしくは七瀬さんの事で、他にも悩みがあるんじゃないのか?」

まるで純は、僕の心を見透かしているようだった。

このまま、全てを打ち明けられたら、どんなに心が楽になるだろう。

けれどもそれは、決してできなかった。

「………あるよ。でも今は、まだ言えない。けど、いつかは話すから、今は何も聞かないで。」

すると純は、黙って頷いてくれた。

だから僕も、安心して笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...