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弟
行方不明
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その日の夕方だった。
俺が自室で勉強をしていると、電話が鳴った。
その相手はまさかの人物だった。
「あっ、もしもし。黄昏、陸斗です……。」
確か陸斗さんは、家から出られないほどの体調不良だったはずだ。
それなのに、俺に電話とは、一体何事だろうか。
「その……、海斗には言うなって言われていたんだけど、実は、遥華が数日前から行方不明なんだ。」
「なっ、何だと……⁉︎」
何故そんな大事な事を黙っていたのかと憤りを感じたが、すぐに、俺に心配をかけさせないようにという、海斗の配慮を理解した。
「それで、俺と海斗は、毎日町中を探し回っているんだが、手がかりすら掴めず状態なんだ。だからもし、遥華について知っている事があれば、教えてくれないか?」
「ちょっと待ってくれ。警察はどうしているんだ?行方不明者届けは、もちろん出ているのだろう?」
「いや、出ていない……。」
にわかには信じられない話だった。
大事な娘が行方知れずになったというのに、七瀬さんの両親は、一体どういう神経をしているのだろうか。
顔も見たこともない相手だが、俺はすでに憤りを感じていた。
「実は、遥華とその両親、普段からあんまり仲が良くなかったんだ。そんな中、遥華がいなくなって、両親は家出したと思ったらしい。それで、呆れて放置といった感じだ。」
「……ッ!」
怒りで思わず声をあげそうになったのを、グッと堪えた。
ここで怒鳴ったところで、どうにかなるわけでもなく、何より、関係の無い陸斗さんに当たるわけにはいかなかったからだ。
「そうか……。事情は分かった。だがあいにく、俺も七瀬さんの行方については全く見当がつかない。」
「……だよな。ごめん、無駄に心配をかけさせたみたいで。………それじゃあ、これからまた、遥華を探しに行ってくる。何かあれば、また連絡する。」
「ちょっと待て。」
電話を切ろうとする陸斗さんを、慌てて引き留めた。
「陸斗さん、確か体調が優れていないのだろう。それなのに、出歩いて大丈夫なのか?」
「………ああ、俺なら大丈夫。それに、こんな一大事なんだ。じっとなんて、してられない。」
やはり、陸斗さんは自分の体に鞭を打ってまで、七瀬さんを探していると、今の話で察した。
そんな陸斗さんを、放っておくわけにはいかなかった。
「陸斗さん、今からそっちに行ってもいいか?俺も一緒に、七瀬さんを探す。」
それを聞いて、陸斗さんは驚いたのか、一瞬黙り込んだ。
「………いや、でも、今からだと夜になるし、それに、海斗にバレる──」
「そんな事言っている場合か?先程自分でも言っていただろう。一大事だと。」
痛いところをつかれたのか、再び陸斗さんは黙り込む。
「それに俺は、あんたの事も心配だ。このまま無理を続けると、本当に体を壊してしまうぞ。」
「…………分かった。それじゃあ、駅まで迎えに行く。」
俺の言葉がきちんと伝わったから分からないが、ひとまず了承してもらえ、俺は胸を撫で下ろした。
電話を終えると、俺は母親に事情を伝えてから、急いで駅へと向かった。
俺が自室で勉強をしていると、電話が鳴った。
その相手はまさかの人物だった。
「あっ、もしもし。黄昏、陸斗です……。」
確か陸斗さんは、家から出られないほどの体調不良だったはずだ。
それなのに、俺に電話とは、一体何事だろうか。
「その……、海斗には言うなって言われていたんだけど、実は、遥華が数日前から行方不明なんだ。」
「なっ、何だと……⁉︎」
何故そんな大事な事を黙っていたのかと憤りを感じたが、すぐに、俺に心配をかけさせないようにという、海斗の配慮を理解した。
「それで、俺と海斗は、毎日町中を探し回っているんだが、手がかりすら掴めず状態なんだ。だからもし、遥華について知っている事があれば、教えてくれないか?」
「ちょっと待ってくれ。警察はどうしているんだ?行方不明者届けは、もちろん出ているのだろう?」
「いや、出ていない……。」
にわかには信じられない話だった。
大事な娘が行方知れずになったというのに、七瀬さんの両親は、一体どういう神経をしているのだろうか。
顔も見たこともない相手だが、俺はすでに憤りを感じていた。
「実は、遥華とその両親、普段からあんまり仲が良くなかったんだ。そんな中、遥華がいなくなって、両親は家出したと思ったらしい。それで、呆れて放置といった感じだ。」
「……ッ!」
怒りで思わず声をあげそうになったのを、グッと堪えた。
ここで怒鳴ったところで、どうにかなるわけでもなく、何より、関係の無い陸斗さんに当たるわけにはいかなかったからだ。
「そうか……。事情は分かった。だがあいにく、俺も七瀬さんの行方については全く見当がつかない。」
「……だよな。ごめん、無駄に心配をかけさせたみたいで。………それじゃあ、これからまた、遥華を探しに行ってくる。何かあれば、また連絡する。」
「ちょっと待て。」
電話を切ろうとする陸斗さんを、慌てて引き留めた。
「陸斗さん、確か体調が優れていないのだろう。それなのに、出歩いて大丈夫なのか?」
「………ああ、俺なら大丈夫。それに、こんな一大事なんだ。じっとなんて、してられない。」
やはり、陸斗さんは自分の体に鞭を打ってまで、七瀬さんを探していると、今の話で察した。
そんな陸斗さんを、放っておくわけにはいかなかった。
「陸斗さん、今からそっちに行ってもいいか?俺も一緒に、七瀬さんを探す。」
それを聞いて、陸斗さんは驚いたのか、一瞬黙り込んだ。
「………いや、でも、今からだと夜になるし、それに、海斗にバレる──」
「そんな事言っている場合か?先程自分でも言っていただろう。一大事だと。」
痛いところをつかれたのか、再び陸斗さんは黙り込む。
「それに俺は、あんたの事も心配だ。このまま無理を続けると、本当に体を壊してしまうぞ。」
「…………分かった。それじゃあ、駅まで迎えに行く。」
俺の言葉がきちんと伝わったから分からないが、ひとまず了承してもらえ、俺は胸を撫で下ろした。
電話を終えると、俺は母親に事情を伝えてから、急いで駅へと向かった。
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