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弟
初めて見る一面
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翌朝、俺は重い足取りで学校へと向かった。
きっかけは、昨日の七瀬さんとのやりとりだ。
あの時の七瀬さんは、気が動転しているように、俺が口を挟めないほど一方的に、話し始めた。
そして、本心かどうか分からなかったが、海斗を悪く言った。
それでつい、俺はカッとなってしまい、横暴な態度をとってしまった。
本当は、俺だけでも冷静になって、七瀬さんを落ち着かせなければいけなかったのだが、あの時の俺には無理だった。
そのせいで、どうして七瀬さんがあんなに取り乱していたのか、把握出来ず終いだった。
そんな中、唯一分かった事は、陸斗さんが退学したという事。
俺自身は、そんな話は海斗から聞かされておらず、驚いたのは事実だ。
だが、果たしてそれだけで、七瀬さんは取り乱したのだろうか。
俺にはそう思えない。
何か、他にも理由があるはずだ。
とはいえ、俺1人がいくら考えても、答えは思い浮かばない。
そのため昨日、海斗に事情を聞くため連絡を入れたが、応答は無かった。
「………そういえば昨日、海斗は学校を休んでいたな。」
その事が、陸斗さんが学校を退学した事と、何か関係があるのかもしれない。
もし今日、海斗が登校していれば、陸斗さんの事、七瀬さんの事、昨日の事について、尋ねなければいけない。
何故なら、俺は既に、無関係ではないのだから。
そう思いながら、俺は学校へと向かった。
そして、教室に入った俺は、すでに机の前に座っていた海斗の方へ向かった。
海斗は、何か考えていたのか、少し眉を顰めながら、目線を落としていた。
「おはよう、海斗。」
「あっ、純……。おはよう。」
海斗は笑顔で答えたが、やはり声に元気がなく、何かあったのは明白だった。
「そういえば、昨日は学校を休んでいたが、何かあったのか?」
すると海斗は俺から目線を外し、少しの間黙り込んだ。
「………実は、あれから兄さん、体調が悪くなって、家に引き篭もるようになったんだ。それで昨日は、僕が看病していたんだ。」
「あれか……無理もない。今まであんな目に遭っていたんだ。むしろ、今までそうならなかった方が不思議なくらいだ。」
弟を守るため、電車内で痴漢される日々を送っていた陸斗さん。
たとえそれから解放されたとしても、すぐに傷が癒えるはずはないだろう。
体も心もボロボロにされ、ついには外にも出られなくなるというのは、不自然な話ではなかった。
「なるほどな。それで、陸斗さんは学校を退学したんだな。」
それが失言だと気づくのに、時間はかからなかった。
先程まで目線を逸らしていた海斗が、俺を鋭く睨みつけている。
こんな表情の海斗を、俺は今まで見た事が無かった。
「……その話、誰から聞いたの?」
「誰って……七瀬さんから…だが……。」
この状況では誤魔化すわけもいかず、素直に打ち明けた。
「なんで、遥華から……。もしかして、今までも何度か話してたわけ⁉︎」
七瀬さんの名前を出した途端、海斗が興奮したように、席から立ち、俺に詰め寄った。
その声に反応して、他の生徒たちの目線が、一斉にこちらに向けられる。
「待て、海斗。ここじゃ目立つ。事情は後で話すから、一旦落ち着け。」
その言葉を聞いて、ようやく周りの様子に気づいた海斗は、気まずそうに下を向いた。
「………ごめん。僕ちょっと、疲れてるみたい。」
海斗はそう言い残し、再び自分の席に着いた。
今はそっとしておいた方がいい。
そう思い、俺も自分の席へと向かった。
席に着いた俺は、先程の海斗の変貌について、考えをよぎらせた。
やはり、2人の関係に何かあったのだろうか。
以前、4人で会った時は、仲が良いように見えたのだが……。
ひょっとして、2人の関係が悪化した原因は、陸斗さんにあるのかもしれない。
とはいえ、それを海斗に確認することは、おそらく不可能だろう。
俺は深くため息をつくと、一旦、2人の関係について考えるのをやめ、ホームルームが始まるのを待った。
きっかけは、昨日の七瀬さんとのやりとりだ。
あの時の七瀬さんは、気が動転しているように、俺が口を挟めないほど一方的に、話し始めた。
そして、本心かどうか分からなかったが、海斗を悪く言った。
それでつい、俺はカッとなってしまい、横暴な態度をとってしまった。
本当は、俺だけでも冷静になって、七瀬さんを落ち着かせなければいけなかったのだが、あの時の俺には無理だった。
そのせいで、どうして七瀬さんがあんなに取り乱していたのか、把握出来ず終いだった。
そんな中、唯一分かった事は、陸斗さんが退学したという事。
俺自身は、そんな話は海斗から聞かされておらず、驚いたのは事実だ。
だが、果たしてそれだけで、七瀬さんは取り乱したのだろうか。
俺にはそう思えない。
何か、他にも理由があるはずだ。
とはいえ、俺1人がいくら考えても、答えは思い浮かばない。
そのため昨日、海斗に事情を聞くため連絡を入れたが、応答は無かった。
「………そういえば昨日、海斗は学校を休んでいたな。」
その事が、陸斗さんが学校を退学した事と、何か関係があるのかもしれない。
もし今日、海斗が登校していれば、陸斗さんの事、七瀬さんの事、昨日の事について、尋ねなければいけない。
何故なら、俺は既に、無関係ではないのだから。
そう思いながら、俺は学校へと向かった。
そして、教室に入った俺は、すでに机の前に座っていた海斗の方へ向かった。
海斗は、何か考えていたのか、少し眉を顰めながら、目線を落としていた。
「おはよう、海斗。」
「あっ、純……。おはよう。」
海斗は笑顔で答えたが、やはり声に元気がなく、何かあったのは明白だった。
「そういえば、昨日は学校を休んでいたが、何かあったのか?」
すると海斗は俺から目線を外し、少しの間黙り込んだ。
「………実は、あれから兄さん、体調が悪くなって、家に引き篭もるようになったんだ。それで昨日は、僕が看病していたんだ。」
「あれか……無理もない。今まであんな目に遭っていたんだ。むしろ、今までそうならなかった方が不思議なくらいだ。」
弟を守るため、電車内で痴漢される日々を送っていた陸斗さん。
たとえそれから解放されたとしても、すぐに傷が癒えるはずはないだろう。
体も心もボロボロにされ、ついには外にも出られなくなるというのは、不自然な話ではなかった。
「なるほどな。それで、陸斗さんは学校を退学したんだな。」
それが失言だと気づくのに、時間はかからなかった。
先程まで目線を逸らしていた海斗が、俺を鋭く睨みつけている。
こんな表情の海斗を、俺は今まで見た事が無かった。
「……その話、誰から聞いたの?」
「誰って……七瀬さんから…だが……。」
この状況では誤魔化すわけもいかず、素直に打ち明けた。
「なんで、遥華から……。もしかして、今までも何度か話してたわけ⁉︎」
七瀬さんの名前を出した途端、海斗が興奮したように、席から立ち、俺に詰め寄った。
その声に反応して、他の生徒たちの目線が、一斉にこちらに向けられる。
「待て、海斗。ここじゃ目立つ。事情は後で話すから、一旦落ち着け。」
その言葉を聞いて、ようやく周りの様子に気づいた海斗は、気まずそうに下を向いた。
「………ごめん。僕ちょっと、疲れてるみたい。」
海斗はそう言い残し、再び自分の席に着いた。
今はそっとしておいた方がいい。
そう思い、俺も自分の席へと向かった。
席に着いた俺は、先程の海斗の変貌について、考えをよぎらせた。
やはり、2人の関係に何かあったのだろうか。
以前、4人で会った時は、仲が良いように見えたのだが……。
ひょっとして、2人の関係が悪化した原因は、陸斗さんにあるのかもしれない。
とはいえ、それを海斗に確認することは、おそらく不可能だろう。
俺は深くため息をつくと、一旦、2人の関係について考えるのをやめ、ホームルームが始まるのを待った。
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