堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

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束の間の日常

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いつもと変わらない朝が来て、いつもと変わらず家を出る。

そして、いつもと変わらず彼を待つ。

でも、それがいつしか当たり前じゃなくなってしまった。

「リッくん、どうしちゃったんだろう?」

最近リッくんが学校に来ないのだ。

電話をしても、全然繋がらなかった。

その理由をカイくんに尋ねても、詳しく話してくれなかった。

それがなんだか、私だけ仲間外れにされているようで、寂しかった。

きっと今日も、リッくんは来ないのだろう。

そう諦めていた時、不意に彼は現れた。

「……久しぶりだな、遥華。」

その声を聞いた途端、心臓がドクンとなった。
そして自然と、涙が溢れてくる。

彼の姿を見るだけで、こんなにも心を奪われていたのだと実感する。

「久しぶりじゃないよ!一体今まで何してたの!!心配したんだから…。」

本当は嬉しいはずなのに、つい声を荒げてしまう。

「ごめんな、心配かけて。」

リッくんは私のすぐそばまで来ると、そっと頭を撫でた。

その手はとても優しくて、リッくんは何も変わっていないのだと思い、安心した。

「ねえ、それじゃあまた、こっちに来られるの?」

けれどもリッくんは、首を縦には振ってくれなかった。

「悪い…。話せば長くなるんだ。それよりも、早く行かないと、学校に遅れるぞ。」

幼馴染の私にさえ、言えない事情とは一体何なのだろうか。

でも無理に問いただしても、今は答えてくれそうになかったので、諦めて学校に行くことにした。



それからは普通に授業を受け、お昼休みの時間になった。

チャイムが鳴ると、すぐに私はリッくんの元に駆け寄った。

「リッくん、一緒にご飯食べよー!」

久しぶりにリッくんと昼食を取れるということで、私は浮かれていたのだが、周りには変に見えたようだ。

「なんでそんなに喜んでるの?いつも一緒に食べてるでしょ。」

クラスメイトに言われ、はっと我に帰る。

そうだった。
みんなはリッくんとカイくんが入れ替わってるって、知らなかったんだ。
気をつけないと。

「そっそうじゃないって。今日の弁当は私が作ったから、見て欲しかっただけ!」

咄嗟に嘘をつき、なんとかその場を凌いだ私は、気を取り直してリッくんの隣に座った。

そしてそれぞれに弁当を広げたが、その時違和感を覚えた。

「あれ?リッくん。今日のお弁当、コンビニで買ったの?」

いつもならリッくんの手作り弁当のはずだが、どう見てもコンビニ弁当だった。

あのしっかり者のリッくんが、弁当作りをサボるだなんて、どうしたのだろうか。

「その、昨日、店長からもらったんだよ。どうせ廃棄になるからって。」

だとしても、昨夜の弁当なら、昨日の夕食に食べているはずだ。

どう考えても、いつものリッくんじゃなかった。

「リッくん、疲れてるの?授業中も眠たそうだったし…。」

そう、リッくんは、明らかに調子が悪そうだった。

いつもなら真面目に授業を受けているのに、今日は居眠りをしてしまい、先生に怒られてしまうほどだ。

「その、最近バイトを増やしたんだ。今のままだと、海斗を進学させるためのお金が足りないと思ったんだ。」
「もしかして、それが学校に来ないことと、何か関係してるの?」

だけど、その質問には答えてくれなかった。

「ごめん。また、話せるようになったら、話すから…。」

このままでは気分が落ち込むばかりだと思い、私は話題を変えることにした。

「リッくん、バイトもいいけど、たまには息抜きしないと、体が持たないよ。だから、今度の日曜日、リッくんと私、そしてカイくんの3人で遊園地に行かない?」

突然の提案に、リッくんは驚いた表情を見せた。

私も咄嗟に言ったことだが、本気だった。

「でも、バイトが──」
「駄目!リッくん、無理してるでしょ。私、リッくんに体を壊してほしくないから言ってるの。」

私が引き下がらないでいると、リッくんは渋々承諾してくれた。

「じゃあ決まり!その日はバイト、空けててね。」

久しぶりに3人で遊べると思い、私は興奮を抑えられなかった。

「ヒューヒュー。いいねえ陸斗、デートに誘われてさあ。」

せっかくいい気分だったのに、クラスメイトの男子が邪魔してきた。

「そんなんじゃないって!っていうか用がないなら、どっか行けよ。」
「用ならあるさ。はい、コレ。」

そう言って男子がリッくんに見せたのは、音楽プレーヤーだった。

「これさ、お前の弟に直してもらっただろ?でもさ、またぶっ壊れてさあ。だから、また頼めねえかな?」

リッくんは一瞬理解ができないようだったが、すぐに話を合わせた。

「あのなあ、俺の弟は便利屋じゃないんだよ。」

リッくんは呆れたようにため息をついた。

「まあまあ、そう言わずに。お前の弟は機械に詳しいんだろ。ケチくさいこと言うなよー。」
「機械に詳しいって…。確かに弟は車の整備士を目指してるけど、それとこれとは違うだろ。」

このままでは埒があかないので、間に割って入ることにした。

「はいはい、リッくんを困らせない!そんなにすぐ壊れるならもう寿命だと思うよ。新しく買い直した方がいいって。」

男子は納得がいかないようだったが、私の剣幕に負けたのか、渋々ながら引き下がったようだ。

男子が立ち去る姿を見送った後、リッくんが笑みをこぼした。

「……なんか、懐かしいな、こういうの。」

それは私も同じだった。

こうやってリッくんと楽しく過ごして、クラスメイトと戯れる。

少しの間でも、そんな日々が戻ってきて、嬉しかった。

そしてこの時初めて、自分の秘めていた思いを知った気がした。
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