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第五章 それぞれの……
第4話 新しい生活
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櫻井家で行われたパーティの翌日
私は本格的にマンションで生活を始めた。
生まれて初めての一人っきりの生活だ。
誰も朝の支度を手伝ってはくれない。
誰もご飯を作ってくれない。
誰もいない一人だけの朝が、とても新鮮だと思った。
「さ、朝ごはん作ろ。」
と誰もいない部屋で独り言を呟く。
知らず知ら独り言を言ってしまう事に、これから独り言が増えるのかしら?と一抹の不安を抱きつつも、それを吹き飛ばすかの様に頭を一振りしてから冷蔵庫の扉を開けた。
さっき朝ごはんを作ろうとは言ったものの、実は昨日マンションへ戻る時に、大貫さんが、昨晩のパーティの残り物や、当面の和洋折衷織り交ぜたおかずを、それぞれ保存容器に入れて持たせてくれた物が沢山あるのだ。なので、お皿に移してレンチンするだけの簡単朝ごはんなんだけど……。
「嬉しいけど…いつまでも大貫さんのお世話になるのもねぇ……。」
と言いながら、トーストが出来るまでの間珈琲を入れ、パソコンを起動しメールのチェックをした。
『加賀城先生
担当の稲森です。
新作の進捗具合は如何ですか?お忙しい大学生活も終わられたと思いますので、執筆の方にもお力を入れて頂けますと有難いです。
よろしくお願い致します。
追記
ご卒業 おめでとうございます。』
と編集さんから……
「学生じゃなくなったから、執筆に専念して欲しいって言い方に聞こえない?これって……。稲森さんには、就職しましたって言ったのにな。仕事しながら執筆するって事は、今までとペースはあんまり変わらないと思うのよね。それを分かってて力を入れてくれって言ってるんだとしたら、鬼よね。」
とトーストを齧りながら文句を言ってみた。って、誰も返事してくれないんだけどね。
返信をどうしようか?と考えていたら、今度はスマホの方で、メッセージアプリの通知音がした。
「あ!駿斗」
〖おはよう りり。起きてる?〗
【おはよ 駿斗。起きてる】
〖昨日はお疲れ。動画見た〗
【ありがと。お爺様と柊伯父様 なかなかの演技だったでしょ?】
〖あぁ、そうだったなw〗
【私も櫻井家で見てたんだけど、同じ空間に居なくて良かったって思ったわ。
リビングでお爺様達と一緒にいたら、きっと笑ってしまったと思うの。】
〖それは正解だな。あ!そういえば、卒業おめでとう〗
【ありがと。駿斗も、おめでとう】
〖あぁ。ありがとう りり〗
毎日の様にやり取りしているメッセージだけど、やっぱり駿斗との話は面白いし嬉しくなるものだ。
嬉しくなっていたら、今度は通話の着信音だ。
「もしもし。」
『もしもし りり。おはよ』
「おはよ駿斗」
『今、マンションなのか?』
「うん。」
『そうか。じゃ、今からそこへ行くから』
「え?な、何?」
『今から行くから、コンシェルジュに来客有りって言っといてくれよ?』
「え?」
プツン
ツー ツー ツー
「切ってるし……。って今から本当に来るのかしら?って、駿斗の事だから絶対来るわよね。」
私は慌てて、コンシェルジュに連城駿斗という男性が私を訪ねてくる事を伝え、服を着替えると軽くメイクをした。
もう地味子メイクをする必要がないにも関わらず、ソバカスを描きそうになる事に小さく笑ってしまった。
そう。今日からは伊達メガネもウィッグも地味子メイクも必要ない、私の新しい生活が始まったんだ。
駿斗が来るまでの時間、そんな些細な事ではあるけど、本来の自分に戻れた事への喜びを実感したのだった。
私は本格的にマンションで生活を始めた。
生まれて初めての一人っきりの生活だ。
誰も朝の支度を手伝ってはくれない。
誰もご飯を作ってくれない。
誰もいない一人だけの朝が、とても新鮮だと思った。
「さ、朝ごはん作ろ。」
と誰もいない部屋で独り言を呟く。
知らず知ら独り言を言ってしまう事に、これから独り言が増えるのかしら?と一抹の不安を抱きつつも、それを吹き飛ばすかの様に頭を一振りしてから冷蔵庫の扉を開けた。
さっき朝ごはんを作ろうとは言ったものの、実は昨日マンションへ戻る時に、大貫さんが、昨晩のパーティの残り物や、当面の和洋折衷織り交ぜたおかずを、それぞれ保存容器に入れて持たせてくれた物が沢山あるのだ。なので、お皿に移してレンチンするだけの簡単朝ごはんなんだけど……。
「嬉しいけど…いつまでも大貫さんのお世話になるのもねぇ……。」
と言いながら、トーストが出来るまでの間珈琲を入れ、パソコンを起動しメールのチェックをした。
『加賀城先生
担当の稲森です。
新作の進捗具合は如何ですか?お忙しい大学生活も終わられたと思いますので、執筆の方にもお力を入れて頂けますと有難いです。
よろしくお願い致します。
追記
ご卒業 おめでとうございます。』
と編集さんから……
「学生じゃなくなったから、執筆に専念して欲しいって言い方に聞こえない?これって……。稲森さんには、就職しましたって言ったのにな。仕事しながら執筆するって事は、今までとペースはあんまり変わらないと思うのよね。それを分かってて力を入れてくれって言ってるんだとしたら、鬼よね。」
とトーストを齧りながら文句を言ってみた。って、誰も返事してくれないんだけどね。
返信をどうしようか?と考えていたら、今度はスマホの方で、メッセージアプリの通知音がした。
「あ!駿斗」
〖おはよう りり。起きてる?〗
【おはよ 駿斗。起きてる】
〖昨日はお疲れ。動画見た〗
【ありがと。お爺様と柊伯父様 なかなかの演技だったでしょ?】
〖あぁ、そうだったなw〗
【私も櫻井家で見てたんだけど、同じ空間に居なくて良かったって思ったわ。
リビングでお爺様達と一緒にいたら、きっと笑ってしまったと思うの。】
〖それは正解だな。あ!そういえば、卒業おめでとう〗
【ありがと。駿斗も、おめでとう】
〖あぁ。ありがとう りり〗
毎日の様にやり取りしているメッセージだけど、やっぱり駿斗との話は面白いし嬉しくなるものだ。
嬉しくなっていたら、今度は通話の着信音だ。
「もしもし。」
『もしもし りり。おはよ』
「おはよ駿斗」
『今、マンションなのか?』
「うん。」
『そうか。じゃ、今からそこへ行くから』
「え?な、何?」
『今から行くから、コンシェルジュに来客有りって言っといてくれよ?』
「え?」
プツン
ツー ツー ツー
「切ってるし……。って今から本当に来るのかしら?って、駿斗の事だから絶対来るわよね。」
私は慌てて、コンシェルジュに連城駿斗という男性が私を訪ねてくる事を伝え、服を着替えると軽くメイクをした。
もう地味子メイクをする必要がないにも関わらず、ソバカスを描きそうになる事に小さく笑ってしまった。
そう。今日からは伊達メガネもウィッグも地味子メイクも必要ない、私の新しい生活が始まったんだ。
駿斗が来るまでの時間、そんな些細な事ではあるけど、本来の自分に戻れた事への喜びを実感したのだった。
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