総ての海を征するもの……の正妻?

白いモフモフ

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誰の試練か

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 頬の左側を包む手が上をむかせるように顎先をとらえた。両腕をセオの肩に回して受け入れを了承する。武骨な武人の癖にセオの口づけはあまやかだ。唇を舐められ、くすぐったさに口を開くと厚い舌が口内を蹂躙する。逃げても追ってくる舌は本当に器用で私の舌を捕らえて味わう。
 鼻で呼吸をするのも限界に近くなり、口を放し「酸欠だ」と告げると首筋に狙いを変更してきた。口ひげのせいでくすぐったさが倍に広がる。しかしこれが直ぐに快感に変わる事を私は知っている。

 ……少し外が騒がしい。

「様子が変だぞ?」

「部屋に籠ると言ってある。誰も邪魔はしない。」

 ああ、そうだ。邪魔が入るのが嫌だから変だと聞いたのだ。今のうちに安心したいのだが、これはもう獣になってしまっているようだ。
 首筋やうなじに口づけを降らし、私の臭いをかぐ。時折、歯をたてて甘噛みをしてはまた口づけをする…この行為に夢中だ。

 セオの上着に手を差し入れる。襟元から肩に……そう、上着を脱ぐようにと示したのだ。すぐに肩を動かし脱がすのに協力する。そして私の腰に回していた手を上着の下になるよう回し直してきた。セオがしっかりと腰を抱いてるのを良いことに両腕を放す。私の全体重が乗ったとしてもびくともしないだろうこの男は自ら上着を脱ぐためにかけた体重も易々と支えた。その余裕さが私の自慢なのに、同じαとしては嫉妬を感じる。
 その嫉妬を、セオのシャツをたくしあげて腹筋をなぞることで発散させる。意外なことにセオは私のこうしたに弱いのだ。
 
 セオは私が両腕を放して腹筋を撫で上げてるせいで私を支えるために手を放せない。このような状態ではあるが、とんでもなく強い男の手を封じているのが自分という存在だという事実に優越感がうまれる。
 密接している下肢は著しい変化が現れており、それもまた私の優越感に輪をかけた。非常に気分が良い。

 ガンガン!ガンガン!
けたたましい音と共に従者のマオの声が聞こえた。「密航者~」と喚いている。一瞬にして私の気分は最悪のものになった。
 ドアを開けた瞬間に「捨てろ」と言ってやる。密航者など海に投げ込んでしまえ。邪魔者は馬に蹴られて死ぬというではないか。馬はいないので船員に蹴り出されてしまえば良い。
 指示してやったのだから文句はないだろうとドアを閉めようとしたが今日はしつこい。
 そしてとんでもない台詞を放った。

「デジレ様のお孫ちゃん~。」
耳を疑った。
 ……は?なんと?……孫?

 連れて来られたのは間違いなく孫だ。一瞬にして頭が痛くなる。あのノエル様のことだ……どんな騒ぎになっていることか。国境閉鎖か…兵士を総動員して捜索か……。
 何はともあれ、説教だ。

 言っておくが、セオとの時間を邪魔された腹いせではない。違うぞ。八つ当たりではないからな。
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