30 / 34
誰の試練か
しおりを挟む
頬の左側を包む手が上をむかせるように顎先をとらえた。両腕をセオの肩に回して受け入れを了承する。武骨な武人の癖にセオの口づけはあまやかだ。唇を舐められ、くすぐったさに口を開くと厚い舌が口内を蹂躙する。逃げても追ってくる舌は本当に器用で私の舌を捕らえて味わう。
鼻で呼吸をするのも限界に近くなり、口を放し「酸欠だ」と告げると首筋に狙いを変更してきた。口ひげのせいでくすぐったさが倍に広がる。しかしこれが直ぐに快感に変わる事を私は知っている。
……少し外が騒がしい。
「様子が変だぞ?」
「部屋に籠ると言ってある。誰も邪魔はしない。」
ああ、そうだ。邪魔が入るのが嫌だから変だと聞いたのだ。今のうちに安心したいのだが、これはもう獣になってしまっているようだ。
首筋やうなじに口づけを降らし、私の臭いをかぐ。時折、歯をたてて甘噛みをしてはまた口づけをする…この行為に夢中だ。
セオの上着に手を差し入れる。襟元から肩に……そう、上着を脱ぐようにと示したのだ。すぐに肩を動かし脱がすのに協力する。そして私の腰に回していた手を上着の下になるよう回し直してきた。セオがしっかりと腰を抱いてるのを良いことに両腕を放す。私の全体重が乗ったとしてもびくともしないだろうこの男は自ら上着を脱ぐためにかけた体重も易々と支えた。その余裕さが私の自慢なのに、同じαとしては嫉妬を感じる。
その嫉妬を、セオのシャツをたくしあげて腹筋をなぞることで発散させる。意外なことにセオは私のこうしたお誘いの行動に弱いのだ。
セオは私が両腕を放して腹筋を撫で上げてるせいで私を支えるために手を放せない。このような状態ではあるが、とんでもなく強い男の手を封じているのが自分という存在だという事実に優越感がうまれる。
密接している下肢は著しい変化が現れており、それもまた私の優越感に輪をかけた。非常に気分が良い。
ガンガン!ガンガン!
けたたましい音と共に従者のマオの声が聞こえた。「密航者~」と喚いている。一瞬にして私の気分は最悪のものになった。
ドアを開けた瞬間に「捨てろ」と言ってやる。密航者など海に投げ込んでしまえ。邪魔者は馬に蹴られて死ぬというではないか。馬はいないので船員に蹴り出されてしまえば良い。
指示してやったのだから文句はないだろうとドアを閉めようとしたが今日はしつこい。
そしてとんでもない台詞を放った。
「デジレ様のお孫ちゃん~。」
耳を疑った。
……は?なんと?……孫?
連れて来られたのは間違いなく孫だ。一瞬にして頭が痛くなる。あのノエル様のことだ……どんな騒ぎになっていることか。国境閉鎖か…兵士を総動員して捜索か……。
何はともあれ、説教だ。
言っておくが、セオとの時間を邪魔された腹いせではない。違うぞ。八つ当たりではないからな。
鼻で呼吸をするのも限界に近くなり、口を放し「酸欠だ」と告げると首筋に狙いを変更してきた。口ひげのせいでくすぐったさが倍に広がる。しかしこれが直ぐに快感に変わる事を私は知っている。
……少し外が騒がしい。
「様子が変だぞ?」
「部屋に籠ると言ってある。誰も邪魔はしない。」
ああ、そうだ。邪魔が入るのが嫌だから変だと聞いたのだ。今のうちに安心したいのだが、これはもう獣になってしまっているようだ。
首筋やうなじに口づけを降らし、私の臭いをかぐ。時折、歯をたてて甘噛みをしてはまた口づけをする…この行為に夢中だ。
セオの上着に手を差し入れる。襟元から肩に……そう、上着を脱ぐようにと示したのだ。すぐに肩を動かし脱がすのに協力する。そして私の腰に回していた手を上着の下になるよう回し直してきた。セオがしっかりと腰を抱いてるのを良いことに両腕を放す。私の全体重が乗ったとしてもびくともしないだろうこの男は自ら上着を脱ぐためにかけた体重も易々と支えた。その余裕さが私の自慢なのに、同じαとしては嫉妬を感じる。
その嫉妬を、セオのシャツをたくしあげて腹筋をなぞることで発散させる。意外なことにセオは私のこうしたお誘いの行動に弱いのだ。
セオは私が両腕を放して腹筋を撫で上げてるせいで私を支えるために手を放せない。このような状態ではあるが、とんでもなく強い男の手を封じているのが自分という存在だという事実に優越感がうまれる。
密接している下肢は著しい変化が現れており、それもまた私の優越感に輪をかけた。非常に気分が良い。
ガンガン!ガンガン!
けたたましい音と共に従者のマオの声が聞こえた。「密航者~」と喚いている。一瞬にして私の気分は最悪のものになった。
ドアを開けた瞬間に「捨てろ」と言ってやる。密航者など海に投げ込んでしまえ。邪魔者は馬に蹴られて死ぬというではないか。馬はいないので船員に蹴り出されてしまえば良い。
指示してやったのだから文句はないだろうとドアを閉めようとしたが今日はしつこい。
そしてとんでもない台詞を放った。
「デジレ様のお孫ちゃん~。」
耳を疑った。
……は?なんと?……孫?
連れて来られたのは間違いなく孫だ。一瞬にして頭が痛くなる。あのノエル様のことだ……どんな騒ぎになっていることか。国境閉鎖か…兵士を総動員して捜索か……。
何はともあれ、説教だ。
言っておくが、セオとの時間を邪魔された腹いせではない。違うぞ。八つ当たりではないからな。
10
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説




男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる