放浪者

側溝

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機械世界

第八話

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「あ・・・」

俺は目を覚ました、いや、というよりも覚めるしかなかったのかもしれない。
俺はさっきまで目の前で起こっていたことを思い出したまらず吐き出してしまった。

「はぁ、こんなこと・・・」

正直思い出すことすらも苦痛だが、もう一人の俺の世界はあっけなく崩壊の道を辿った。
あの世界の元々の仲村が帰ってきた後、機械たちは人間殲滅のために本格的に機械を送り込んできた。
もう一人の俺が言うには、今まで見たことのない機械ばかりで、自分たちが今まで遊ばれているに過ぎないということを嫌なほどわからされたそうだ。
そして、機械は何の躊躇もなく人間を惨殺していった。
目の前で、何も知らない仲村が恐怖に怯えながら殺されるところも見た。
子供を抱きしめて必死に守る家族がまとめて刺し殺されるところも見た。
これからこれ以上の恐ろしい体験をするのかというほどのトラウマになった。
しかし、その恐怖を跳ね除けてまで俺には二つ気になることがあった。

なぜ、あの仲村がいなくなったタイミングだったんだろうか。
あいつを信用していないわけではないし、直接関与している証拠があるわけでもないのでたまたまそうだったと受け止めるのが一番簡単ではあるのだが、どうしても腑に落ちなかった。
まぁ、考えてもしょうがないことだからこれはいい。

もう一つは、俺は次寝たらどこに行くのだろうか。

あの世界は崩壊した、間違いなく。
生き残りがいたとしても、俺は間違いなく殺された。
正確に言えばもう一人の俺だが、間違いなく死に直面した瞬間の悍ましい感覚を嫌というほど体感した。

もしも、また別の世界に飛ばされたら、また崩壊を見ないといけないのだろうか、それとももっと平和な世界が待ってくれているのだろうか。
あの仲村とは再開できるのだろうか、また別世界に飛んだら記憶がまた消えるのを繰り返し、また別世界に飛んでいることを気づくことすらできないのだろうか。

「あー、くそ」

俺はもはやヤケクソだった。
やっと分かりかけてきたこの異変がまた振り出しに戻ったのだ、それも想定できる中で最も最悪な形で。
それに、振り出しに戻ったのではなく戻されてしまったのではないかとも考えてしまう。
この事件に黒幕がいて、自分は手のひらで踊らされていたのでは無いかと思うと怒りと絶望感が湧いてくる。
そして、その犯人を仲村じゃないかと疑ってしまう自分にはさらに怒りの念があった。
別世界の仲村とはいえ、大の親友すらも信じれなくなるほどにこの出来事は自分の中で強烈だった。

「絶対に何かヒントを掴んで見せる」

そう意気込んだ俺は、眠くもないのにどうしても寝たかった。

そうして俺は、今まで躊躇していた睡眠薬を買いに外へ足を運んだ。



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