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機械世界
第六話
しおりを挟む「そういえば、最近周囲でめっきり機械共を見なくなったな」
「そうだな、資源の枯渇問題に関しては機械共も同じハンデさ」
「そう易々と侵攻もできん」
「このままだと侵攻が来なくても結局資源枯渇が最終的に俺たちを滅ぼすのか」
「まぁ、そういうことになるな、それまでに機械どもとの抗争を終わらせてなんとか立て直さなきゃだ」
「そうだな・・・」
「どうした、お前らしくもない」
「もう一人の俺の世界を見てしまうとな」
「それこそ、俺たちの世界で機械共が反乱を起こす前以上に平和が世界に満ちていた」
「それを見た後だと、どうしてもこの世界が行き過ぎた技術による一種の世界の終着点なんじゃないかと思ってしまうのさ」
「・・・確かにな」
「だけど諦めるわけにはいかない、お前の見てきた世界ほどまでに戻せるかはわからないが、俺たちはこの世界の平和を取り戻して少しづつ世界全体に広げ戻していく義務がある」
「そうだよな、少し卑屈になってたよ」
「俺たちで平和を戻すんだ」
「とりあえず今日はもう寝るか、またあっちの世界に行けたのなら何かヒントが得られるといいな」
「そうだな、しかしこれ以上あっちの世界を見るとより卑屈になってしまいそうな自分がとても怖く感じるよ」
「まぁ、気をしっかり持つんだとしか言えないな」
「できる限り頑張るさ、おやすみ」
「おやすみ」
「ん・・・ここはあいつの世界か」
カーテンから漏れる優しい光を浴びて俺は目を覚ます。
「やはりこの世界は平和だな・・・」
「・・・いけない、気をしっかりもたなきゃな」
「仲村は自分の世界でもない場所なのに、あの荒廃した世界で必死に頑張ってるんだ」
「俺が頑張らなくてどうする」
そう思い立ち、俺は起きて外に行く準備を着々と進めた。
「いってきます」
俺はこの世界の外に初めて出る。
降り注ぐ日の光、鳥の鳴き声、そこには童話に出てくる理想郷のような美しい世界が広がっていた。
「いつかは自分の世界でこの感覚を体感したいものだ」
「そのためには、少しでも調べなくては」
しかし、どこで何を調べればいいんだろうか。
的を絞れているわけでもなく、正直言って見当や予測もつかない。
とりあえず幸運なのは、ここまで自分の意識が持っていると言うことだけだ。
「とりあえず歩くか」
俺は街中を歩き始めた。
しかし、飲食店が立ち並んでいるだけでヒントなんて何も得られそうにない。
俺はスマホを開き、マップを見て行き先を決めようと思った。
「近くにお寺があるな、ここに行って夢にまつわる伝承がないか聞いてみるか」
俺はいつ意識が飛ぶかわからないので、足早にお寺へと向かった。
お寺に着くと、そこの住職が箒を履いて掃除をしていた。
俺はすかさず話しかける。
「あのー、すみません」
「はい、どうかしましたか?」
「この地域で、夢とかにまつわる伝承ってありますかね?」
「んー、特にないですよ、取材か何かですか?」
「まー、そういうところなんですけど」
「ないならいいんです、失礼しました」
「まぁ、お待ちなさい」
「見たところ複雑な事情を抱えてそうですが、お話だけでも聞いて差し上げましょうか?」
「お力になれるかはわかりませんけど」
俺は時間に焦りを感じていたが、他にあてもないので所々端折ってだが神主さんに相談をしてみることにした。
「・・・ということなんです」
「なるほど、にわかには信じ難いですが、あなたは違う世界から来たということなんですね?」
「そういうことになりますね、そしてここにいつまで入れるかは自分でもわからないのです」
「もし話してる途中にこの世界の私と入れ替わったら事情を説明してやってください」
「わかりましたよ」
「それにしても、正直今まで相談されたどんなことよりも複雑で奇妙な出来事ですな」
「しかし、あなたが入れ替わる前に魂を一度切り離したらどうなるんでしょうか」
「そ、それは一体どういう?」
俺はすかさず聞き返す。
「あなたの魂は別の世界から来ていて、一時的にこちらの世界のあなたの肉体に魂を宿すことでこの世界に定着している、私はそう解釈しています」
「つまりは、あなたの魂を一時的に切り離してこの世界にとどめることができるやもしれんということです」
「そんなことが・・・」
ここのお寺に来てよかったと心から思った。
「やりますか?正直私もどうなるかは全く見当がつきません」
「ぜひやらせてください、私はこの世界でもっと調べなければならないことがあるのです、そのための時間を稼げる可能性があるのならどんなことだろうとやる覚悟です」
「わかりました、あなたの覚悟、しかと受け取りましたよ」
「では、こちらに来てください」
そう言われると、俺はお寺の本堂のような場所へと通された。
住職は服を着替え、今から使うであろう道具などを準備すると、私に向かって真ん中に座るように指示してきた。
「それでは、今から魂の切り離しを行います」
「一度魂を切り離し、この世界のあなたが目覚めたなら、あなたを霊としてその体にもう一度取り憑かせます」
「まぁ、もう一人のあなたがあなたを切り離すことで起きるかわからないですが、あまり期待はしないように」
「本当にありがとうございます、ではお願いします」
「分かりました」
そう返事をすると、住職はお経のようなものを唱え始めた。
俺はその間、意識が飛ばないことだけを祈りながらそのお経を聞いていたが、だんだん意識が遠のく感覚があった。
これがはたして幽体離脱に成功しているのか、はたまた時間が迫ってきているのかはわからなかった。
いくらか時間が経った時、お経がパタリとやみ、俺は一瞬気を失った。
そして、すぐに感覚が戻り、目の前に抜け殻のようになった自分の体を見ることができた。
どうやら成功したようだ。
「幽体離脱は成功したみたいですね、あとはこの体が起き上がるか・・・」
しばらくの間、この無言の時間が続いた。
「頼む、起き上がってくれ」
そう願っていると、まるで抜け殻のようだった体が急に生気を帯び、起き上がる。
「あれ、ここは・・・?」
「いきなりですみませんが、もう一人のあなたからのご依頼でして」
「もうひとりの・・・俺?」
少し考え込むと、俺は思い出した。
夢の中でもう一つの世界を体験していたことを。
「そうか、それでなぜ寺に?」
「相談をしにきたのです、もう一人のあなたがね」
「なるほど、で、あいつは?」
「今は実体を持たない幽霊になってもらっています、そして今からあなたに取り憑かせます」
「えっ、」
俺はギョッとした。
「取り憑くといっても、そんな身構えるものではありません」
「もう一人のあなたを一時的にこの世界に繋ぎ止めるために施した細工のようなものです」
「詳しいことは後でお話ししますのでまずは」
そう言うと、住職はまたお経を唱え始めた。
最初はなんとなくでしか理解してなかったが、お経を聞きながら頭に整理をつけていると今の状況がなんとなく分かってきた。
数分後、お経はパッと止み、俺の体に何かが入ってくる感覚があった。
「これは・・・」
「うまくいきましたかな」
「・・・お、うまくいったな」
頭の中から自分の意思とは違う声がする、声色などは全く一緒だが。
「これで、この世界にとどまれそうだ、それに、仲村みたいに記憶の同期に近い状態に持って来れたんじゃないか?」
やはり慣れない感覚が頭に走ったが、どうやらうまくいったことだけは分かった。
「住職、本当にありがとうございました」
「いえいえ、お気になさらず」
「行きなさい、もう一人のあなたの世界のためにね」
「分かりました」
そう言うと俺は、いや、俺たちは寺を出てヒントを探しに街へ出た。
「そうだな、資源の枯渇問題に関しては機械共も同じハンデさ」
「そう易々と侵攻もできん」
「このままだと侵攻が来なくても結局資源枯渇が最終的に俺たちを滅ぼすのか」
「まぁ、そういうことになるな、それまでに機械どもとの抗争を終わらせてなんとか立て直さなきゃだ」
「そうだな・・・」
「どうした、お前らしくもない」
「もう一人の俺の世界を見てしまうとな」
「それこそ、俺たちの世界で機械共が反乱を起こす前以上に平和が世界に満ちていた」
「それを見た後だと、どうしてもこの世界が行き過ぎた技術による一種の世界の終着点なんじゃないかと思ってしまうのさ」
「・・・確かにな」
「だけど諦めるわけにはいかない、お前の見てきた世界ほどまでに戻せるかはわからないが、俺たちはこの世界の平和を取り戻して少しづつ世界全体に広げ戻していく義務がある」
「そうだよな、少し卑屈になってたよ」
「俺たちで平和を戻すんだ」
「とりあえず今日はもう寝るか、またあっちの世界に行けたのなら何かヒントが得られるといいな」
「そうだな、しかしこれ以上あっちの世界を見るとより卑屈になってしまいそうな自分がとても怖く感じるよ」
「まぁ、気をしっかり持つんだとしか言えないな」
「できる限り頑張るさ、おやすみ」
「おやすみ」
「ん・・・ここはあいつの世界か」
カーテンから漏れる優しい光を浴びて俺は目を覚ます。
「やはりこの世界は平和だな・・・」
「・・・いけない、気をしっかりもたなきゃな」
「仲村は自分の世界でもない場所なのに、あの荒廃した世界で必死に頑張ってるんだ」
「俺が頑張らなくてどうする」
そう思い立ち、俺は起きて外に行く準備を着々と進めた。
「いってきます」
俺はこの世界の外に初めて出る。
降り注ぐ日の光、鳥の鳴き声、そこには童話に出てくる理想郷のような美しい世界が広がっていた。
「いつかは自分の世界でこの感覚を体感したいものだ」
「そのためには、少しでも調べなくては」
しかし、どこで何を調べればいいんだろうか。
的を絞れているわけでもなく、正直言って見当や予測もつかない。
とりあえず幸運なのは、ここまで自分の意識が持っていると言うことだけだ。
「とりあえず歩くか」
俺は街中を歩き始めた。
しかし、飲食店が立ち並んでいるだけでヒントなんて何も得られそうにない。
俺はスマホを開き、マップを見て行き先を決めようと思った。
「近くにお寺があるな、ここに行って夢にまつわる伝承がないか聞いてみるか」
俺はいつ意識が飛ぶかわからないので、足早にお寺へと向かった。
お寺に着くと、そこの住職が箒を履いて掃除をしていた。
俺はすかさず話しかける。
「あのー、すみません」
「はい、どうかしましたか?」
「この地域で、夢とかにまつわる伝承ってありますかね?」
「んー、特にないですよ、取材か何かですか?」
「まー、そういうところなんですけど」
「ないならいいんです、失礼しました」
「まぁ、お待ちなさい」
「見たところ複雑な事情を抱えてそうですが、お話だけでも聞いて差し上げましょうか?」
「お力になれるかはわかりませんけど」
俺は時間に焦りを感じていたが、他にあてもないので所々端折ってだが神主さんに相談をしてみることにした。
「・・・ということなんです」
「なるほど、にわかには信じ難いですが、あなたは違う世界から来たということなんですね?」
「そういうことになりますね、そしてここにいつまで入れるかは自分でもわからないのです」
「もし話してる途中にこの世界の私と入れ替わったら事情を説明してやってください」
「わかりましたよ」
「それにしても、正直今まで相談されたどんなことよりも複雑で奇妙な出来事ですな」
「しかし、あなたが入れ替わる前に魂を一度切り離したらどうなるんでしょうか」
「そ、それは一体どういう?」
俺はすかさず聞き返す。
「あなたの魂は別の世界から来ていて、一時的にこちらの世界のあなたの肉体に魂を宿すことでこの世界に定着している、私はそう解釈しています」
「つまりは、あなたの魂を一時的に切り離してこの世界にとどめることができるやもしれんということです」
「そんなことが・・・」
ここのお寺に来てよかったと心から思った。
「やりますか?正直私もどうなるかは全く見当がつきません」
「ぜひやらせてください、私はこの世界でもっと調べなければならないことがあるのです、そのための時間を稼げる可能性があるのならどんなことだろうとやる覚悟です」
「わかりました、あなたの覚悟、しかと受け取りましたよ」
「では、こちらに来てください」
そう言われると、俺はお寺の本堂のような場所へと通された。
住職は服を着替え、今から使うであろう道具などを準備すると、私に向かって真ん中に座るように指示してきた。
「それでは、今から魂の切り離しを行います」
「一度魂を切り離し、この世界のあなたが目覚めたなら、あなたを霊としてその体にもう一度取り憑かせます」
「まぁ、もう一人のあなたがあなたを切り離すことで起きるかわからないですが、あまり期待はしないように」
「本当にありがとうございます、ではお願いします」
「分かりました」
そう返事をすると、住職はお経のようなものを唱え始めた。
俺はその間、意識が飛ばないことだけを祈りながらそのお経を聞いていたが、だんだん意識が遠のく感覚があった。
これがはたして幽体離脱に成功しているのか、はたまた時間が迫ってきているのかはわからなかった。
いくらか時間が経った時、お経がパタリとやみ、俺は一瞬気を失った。
そして、すぐに感覚が戻り、目の前に抜け殻のようになった自分の体を見ることができた。
どうやら成功したようだ。
「幽体離脱は成功したみたいですね、あとはこの体が起き上がるか・・・」
しばらくの間、この無言の時間が続いた。
「頼む、起き上がってくれ」
そう願っていると、まるで抜け殻のようだった体が急に生気を帯び、起き上がる。
「あれ、ここは・・・?」
「いきなりですみませんが、もう一人のあなたからのご依頼でして」
「もうひとりの・・・俺?」
少し考え込むと、俺は思い出した。
夢の中でもう一つの世界を体験していたことを。
「そうか、それでなぜ寺に?」
「相談をしにきたのです、もう一人のあなたがね」
「なるほど、で、あいつは?」
「今は実体を持たない幽霊になってもらっています、そして今からあなたに取り憑かせます」
「えっ、」
俺はギョッとした。
「取り憑くといっても、そんな身構えるものではありません」
「もう一人のあなたを一時的にこの世界に繋ぎ止めるために施した細工のようなものです」
「詳しいことは後でお話ししますのでまずは」
そう言うと、住職はまたお経を唱え始めた。
最初はなんとなくでしか理解してなかったが、お経を聞きながら頭に整理をつけていると今の状況がなんとなく分かってきた。
数分後、お経はパッと止み、俺の体に何かが入ってくる感覚があった。
「これは・・・」
「うまくいきましたかな」
「・・・お、うまくいったな」
頭の中から自分の意思とは違う声がする、声色などは全く一緒だが。
「これで、この世界にとどまれそうだ、それに、仲村みたいに記憶の同期に近い状態に持って来れたんじゃないか?」
やはり慣れない感覚が頭に走ったが、どうやらうまくいったことだけは分かった。
「住職、本当にありがとうございました」
「いえいえ、お気になさらず」
「行きなさい、もう一人のあなたの世界のためにね」
「分かりました」
そう言うと俺は、いや、俺たちは寺を出てヒントを探しに街へ出た。
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