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第十二章 本願

本願(8)

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 僕は願った。篠宮明莉と恋人になり一つになりたいと。
 ペニスは彼女の子宮に向って今深く深く差し入れられている。
 膣口から入る僕の分身に明莉の襞が絡みつく。
 最初は引っ掛かりを覚えた膣にも数往復する間に潤滑液が染み渡り、歓迎するように僕の肉棒を包み込み始めた。

「あぁあ……、あぁ……」
「明莉……明莉……」

 明莉の口から漏れる苦悶の溜め息に、少しだけ甘い吐息が混じる。
 背中に爪を立てていた指先も、ピンと伸ばされて僕の背中に触れている。

「――いやぁ、どうして、どうしてぇ~」
「明莉……明莉……気持ちいいよ」

 香奈恵さんとのセックスも、森さんとのセックスも心地よかった。
 でも性器同士の相性とでも言うのだろうか。
 明莉のあそこはやっぱり僕のペニスにジャストフィットだった。

 やはり運命の相手は、セックスの相性においても運命の相手ということなのかもしれない。ただ快感に溺れる。

「――脱がすよ」
「ん――」

 明莉のブラトップに手を掛けて、彼女の上半身から引き抜いた。続けてスカートも。
 形の良いおっぱいと、その先端に少し大きな乳輪が露出する。僕は時を移さずその先端に吸い付いた。

「んっ! 秋翔くん、秋翔くん!」

 口に含んだ乳頭を舌先で転がす。
 何度も吸って舐めあげると、明莉の唇から揺れるように吐息が漏れた。

 空色のショーツを残して裸になった明莉の頭を僕は撫でる。
 閉じていた目を明莉が薄っすらと開いた。
 彼女は僕を反抗的な目で見上げながら、唇を噛み締めていた。
 その瞳に浮かぶ嫌悪感が、僕の繊細な心をちくりと傷つける。

 だから僕は彼女の腰を両手で掴んで抽送を繰り返す。何度も何度も。
 体に快感が広がりだしたのか、明莉の息遣いが細かくなっていく。

 僕は一旦ペニスを抜き去ると、彼女のベッドに仰向けに横たわった。
 明莉の身体を引っ張り上げると、僕は彼女を太腿の上に跨がらせた。

「――え、何?」
「明莉――自分で入れて、自分で動いて?」
「――そんな。い……嫌だよ……」
「――動画……報告するよ?」
「……うううう」

 明莉は不満げに唇を噛むと、目頭を手の甲で押さた。
 性交で高くなった体温と激しくなった動悸を抑えるように息をする。
 内股でベッドに膝をつけながら、僕に跨がりつつ腰を上げた。
 右手で僕の性器を捉えると、ゆっくり腰を下ろしていく。

「あ、……あぁ……」
「おおっ! すごい! 明莉――明莉っ!」

 気持ち良さで頭がおかしくなりそうだ。

 脳内にイメージ広がる。
 四次元の時空間に伸びるいくつもの世界線。
 発散していたその経路が、彼女の膣の温かさによって、真っ直ぐに伸びる一本の世界線へと収束していく。そんな映像が浮かんだ。
 それは僕と明莉が一緒に生きていく未来。
 明莉が僕の子供を子宮に宿して、僕と共に生きていく未来。

「――嫌だよ、嫌だよこんな。こんな風に秋翔くんと……秋翔くんとエッチするなんてぇ……!」
「明莉っ! 僕らは恋人だから、大丈夫! 大丈夫だからっ!」

 腰を掴まえて下から何度も突く。
 僕も肉棒の先端が彼女の最奥を突く度に彼女は肩を震わせた。
 止まらない、――止まれない。

 しばらく騎乗位を続けた後、僕は上体を起こし彼女をベッドに押し倒す。
 最後に残った空色のショーツも剥ぎ取った

 ずっと好きだった幼馴染の裸体が――僕の目の前に横たわっている。
 股間にある秘密の場所は濡れている。
 そこがさっきまで僕の性棒を美味しそうに咥えていたのだ。
 僕は彼女の体を撫でて、何度かおっぱいの先端を啄んだ。

「……ああ、……あん」

 胸を揉んで、乳首吸って、クリトリスを撫で上げる。
 その度に僕の明莉は小さな声を漏らした。小鳥の鳴き声みたいに。

 そしてまた唇にキスをする。
 もう明莉は抵抗しなかった。
 諦めたように。悲しそうに。

 僕は彼女をそうやって少しずつ。引きずり込んでいく。
 ――僕が考える最良の世界線へと。

 舌を差し入れたまま、腰を浮かせて、彼女の股間に狙いを定める。
 彼女の手を引くと、その手に僕のペニスを握らせて、自らの膣口へと導かせた。

 腰を下ろす。今度はさっきよりも、ずっと滑らかに挿入されていく。彼女の内側にある襞の一つ一つが僕を歓迎するみたいに、情熱的かつ繊細に僕の分身をなで上げていく。

「――気持ちいい。――たまらない。明莉――明莉も気持ちいいだろ? 僕の肉棒を下の口で咥えて――気持ちいいだろ?」
「あぁ。――そんなこと……あん」

 何度か抽送を繰り返す。
 明莉は制御を失ったみたいに、おとがいを反らした。
 僕はピストン運動を繰り返す。
 ありったけの愛を、彼女へと送り込むみたいに。

「体の相性も凄くいいと思うんだ。……うっ、気持ちいい……。僕らは幼馴染だからさ、一番の存在だからさ、セックスの相性だって、最高なんだよ。――きっと」
「――幼馴染は、こんなことっ」

 何度も突く。

「明莉っ! 真白先生とどっちがいい? どっちが気持ちいいんだいっ!?」

 真白先生の名前を出すと、明莉の膣口がきゅっと締まるのが分かった。
 自分が浮気していることを思い出したのだろう。
 そもそも僕以外の誰かと付き合うことこそが浮気なのだが。

「――そ、そんなこと……言えない」
「ああああ」

 恥じらうように彼女が言った時に、膣の内側が僕の全体を強く包み込んだ。
 言葉ならない快感が僕を絶頂へと引き摺り込み始める。

 ――これはもう、我慢出来ない。

「あ……明莉。イキそうだ。……イキそうだっ!」
「え? そうなの!? ――あ、着けてない。ゴム着けてないよぉ」

 明莉が慌てて体横に向けて、机の方に視線動かした。多分、財布を探しているのだろう。真白先生に持たされたコンドームの入った。
 僕はその顔に左手を添えて、強引に僕の方を向かせる。

「……コンドームは着けないよ!」
「え、……そんな。駄目だよ、着けないと。真白先生は――いつもちゃんと着けてくれたよ」

 狼狽しながら、両目の端を垂らして、彼女は僕を見上げる。
 その瞳を、真剣に見つめ返した。

「――真白先生と僕を比較しないで。――真白先生は真白先生。……僕は僕さ。明莉――僕を……悠木秋翔を見てよ」

 困惑したように明莉は口を半分開ける。

「そ……それはそうだけど。――でも中に出したら……赤ちゃん出来ちゃうかもだし。今日は安全日じゃないんだよ? せめて外に……出して。あん!」

 腰を強く深く彼女に押し付ける。
 亀頭が彼女の中で子宮口へとキスをする。

「外になんて――出さないよ。明莉。……僕は君の中に――出すよ」
「えっ? ……やめて! 秋翔くん、それは本当にやめて!」

 僕は彼女の両腕を抑え込む。そして腰を前後にまた振った。
 快感が止まらない。彼女の悲しそう顔がまた僕を滾らせる。

 本質的な意味において、今、彼女を苦しめているのは真白先生なのだ。あいつがいなければ、明莉は僕の腕の中で、幸せだったはずなのだ。

 だからこそその不条理を正すために、彼女の膣の中を僕は僕で満たしたい。
 正しい世界線へと僕らが至るために。

 彼女の中で僕の肉棒が動く度に、感じたこともない快楽が体を突き抜けて、――僕は天国への階段を上り始めた。

「出すからね! 明莉! 中に出すからね! 僕の精子を――明莉の中に、いっぱい出すからねっ! いいよね!?」
「駄目っ! 駄目だよ! 秋翔くん、ダメェ~っ!」

 僕の中の堤防が決壊し、ついに股間の奥にある熱い塊が爆発した。

「ああ、イクッ! イクゥ~っ!」
「抜いて! ねぇ、抜いて! 外にっ! お願いぃ~~っ! んぐっ」

 いつまでも我儘を言う幼馴染の唇を僕は唇で覆った。
 キスをして、彼女を強く抱きしめる。
 そして腰を最奥まで結合させると――僕は彼女の中にありったけの精子を放った。

 全ての放出を終えると、唇をゆっくりと離す。唾液が糸を引いた。

「あぁ……、あぁ……、ああ」

 頬を赤く火照らせながら、怯えたように明莉が震えた声を漏らす。

「――明莉、気持ちよかったよ」
「中に……、中に出したの? ――どうするの? 赤ちゃんが出来たら……どうするのよ」

 そんなの答えは決まっている。
 僕は君に子供を産んでほしい。――僕の子供を。
 でもそんな言葉は口に出さない。

 僕を見つめる彼女の目には幼馴染としての信頼と突然の変化への不安が同居しているようだった。
 だから僕はそっと明莉の髪を撫でた。彼女を安心させるみたいに。

 そして自分のペニスを彼女の股間から抜き取った。
 内股から漏れ出た白い精液が溢れて太腿を伝う。

「――ひどいよ。秋翔くん。これ……これじゃあ無理矢理だよ。……秋翔くんは大切な友達だったし……、信用してたのに。――いろいろあったけれど、それでも私のことを嫌いになったんじゃない、大切に思ってくれているって、信じていたのにぃ……」

 全裸のままベッドの上で明莉が仰向けに天井を見上げる。
 彼女の目尻から涙が溢れ顔の側面へと溢れ落ちた。

 そんな彼女を見て、僕は不思議な気持ちに包まれる。
 僕は彼女を正しい世界線へと導いたのに、どうして彼女は泣いているのだろう? ――と。

 刹那。僕の中で真っ黒な闇が弾けた。
 抵抗できない虚無感が僕を支配する。
 いつも来る射精後における性欲の減退、そして喪失感と倦怠感。
 ――それがいつもの何倍にも膨れ上がったような暴発だった。

 それは身体中に広がり、僕の精神を溶かしていく。
 やがて頭が冷静さを取り戻し、僕はベッドの上に腰を下ろした。

 不安で胸は激しく拍動し、全身から冷や汗が噴き出す。
 手足が痙攣するみたいに震えた。

 彼女は寝返りを打って、僕に背を向ける。そしてまた呟いた。

「――秋翔くん……酷いよ」

 その白くて滑らかな背中に視線を落としながら、僕はようやく自分が取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない、と気付いたのだ。

 本当の願いを叶えたはずなのに。

 ――僕の心は不安で軋み、崩れ始めた。
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