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第四章
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しおりを挟む見られてたのはかなり恥ずかしいことだけど、それを知れて少し肩の力が抜けた。
私がどういう人間かわかってて頼むなら、心配する必要はなさそうだ。
『勝手に見ていて申し訳ありません…』
「いえ…」
『でも…本当に貴女しかいないと思うのです。…どうかジュゼッペをっ……』
サシェル様の気持ちはよくわかった。どれほどの強い思いか。
正直、適役は私なのかとどうしても疑問がいまいち晴れずにいるがここで断るような非道な人にはなりたくない。
ジュゼッペ様とは凄い仲が良いわけではないが、一度おせっかいすると決めたならきちんとやりきらなくてはいけない。
「わかりました。私にできることを頑張ってみます」
『っ!』
「最大限の努力をします」
『あぁ……ありがとうございます…!』
「いえ…」
『感謝してもしきれぬことです…!』
「その感謝は……ジュゼッペ様を救えてからください」
少し苦笑いをしてしまった。
承諾したはいいもの、どうすればいいのか思いつかない。
『どうか…ジュゼッペをお願いします』
「はい。頑張ります…!」
サシェル様に何度もお礼等を言われつつ、そろそろ目を覚まそうと思い、変ではあるが再び意識を手放した。
「ん……」
今度は、いつもの天井をまず見ることができ安心した。
「あれ…リーシェは」
どこかに行っているのだろうか。
部屋にはいないみたいだった。
「何か仕事かな…?ま、リーシェなら一人でも大丈夫よね」
そんなことよりも。
今はとにかくジュゼッペ様だ。
彼女が本格的に平民になる準備を始める前にどうにか説得しないといけない。
「ジュゼッペ様が本当ならギャルツ家で最も優秀…」
それならそこを活かしたい。
…まずはジュゼッペ様がどう優秀なのか知る必要があるな…。
「まぁ何にしろまずは説得だよね…」
私ごときの言葉で考えを変えてくれなさそうなのはわかりきったことなので。
サシェル様とそこは作戦会議をしてきた。
上手く行くといいんですけど…。
問題はその後だよな…。
説得してもその先は何も考えてないじゃ駄目だ。
そう頭を悩ませていた。
「どうしようかな」
「そうだね…このまま悩むのを放棄して寝るなんてどう?」
「それもいいかも…」
あれ?
私以外の声がする…。
独り言に提案が返ってきた。
下を見ていた目線を前へと向けると…。
「えっ!?」
「相変わらず元気そうだね。何よりだよ」
「どうして…」
「ん?もしかして会いに来られたら迷惑だった?」
「誰もそんなこと言ってませんよ…というか部屋に入るならノックしてください」
「したけど無反応だったから。いないのかと思って部屋開けたらいたから良かった」
「それは…すみません」
「別にいつものことでしょ」
「……聞いてもいいですか」
「うん、どうぞ」
いきなり現れたから普通に驚いた。
相変わらずなのはお互い様で元気な姿を見れて良かった。
「何故ここにいるんです?兄様」
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