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第十八話 恐竜園
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「ただいま」
夕食時少し前。キャンプ道具を手にした、らいあが帰ってくると、皆に「おかえりなさい」と挨拶される。
「楽しかった?」
「うむ」
ベッドに腰掛け、あみぐるみを作っていた奏と、道具をしまいながら、そんななんでもない会話を交わす。
「そういえばね、雁州さん、調理器具一式買ったのよ。カセットコンロも付けて」
「へえ」
遠くから帰ってきて疲れていたので、ベッドに横になる。
「彼女のことだ、さっそくなにか作ったんだろう?」
「うん。昨日はやきそばをね。そしたら、ここのお昼でも、焼きそばが被っちゃった」
苦笑するらいあ。
「今日は、ミニホットケーキ。美味しかったー。らいあにも食べてほしかったって、切なそうだったわよ」
「そりゃ、申し訳ないね。でも、あたしの趣味が、アウトドアだからなあ」
ため息をつく。
一方その頃、あくあと里愛は食堂で。
「先輩、なんで恐竜園ってないんでしょうね?」
オレンジジュースを飲みながら、里愛に問うあくあ。
「理由は簡単。日本の気候から、恐竜を守れないからね」
「そうなんですか?」
「うん。恐竜はね、とても暑い時代に生きていたの。だから、日本の気温じゃ寒すぎるのよ」
「へー」
ペットボトルをゆすぎ、ペットボトル用ゴミ箱に捨てる。
「屋内型テーマパークには、できないんですか?」
「世界最大の恐竜、アルゼンチノサウルスは、全長三十メートルもあるのよ? 彼らを屋内で不自由なく飼おうと思ったら、とんでもない巨大施設になっちゃう」
「ティラノとか、あのへんの有名どころも、必要ですしねー」
腕組みして、悩むあくあ。
「アメリカでは、いっそ本気で作ろうかなんて話も、出てるらしいけど」
「すごいですね。さすが大陸!」
「あとは、熱帯雨林気候のブラジルでも、屋外型テーマパークとして造れないか、検討してるみたい」
「夢が膨らみますねー」
瞳を、キラキラさせるあくあ。
「なんのお話ですか?」
そこに、まりんが通りかかった。
「んー? 恐竜園ないねって話」
両手で頬杖ついて、答えるあくあ。
「そういえば、聞いた事ないですね」
もう一度、同じ説明をする里愛。
「なるほど。確かに、夢が膨らみますね」
ちなみに、オルドビス・アクアリウムやシルル・アクアリウムといった施設も、カンブリアン・アクアリウムの成功を受けて順次開館したが、今ひとつ不人気な時代なことと、案内がAI搭載ロボットなためか、カアンブリアン・アクアリウムほどの人気は博していない。
なお、二〇二〇年代初頭に、日本のネットユーザーの間で大人気を誇ったサカバンバスピスは、オルドビス・アクアリウムにいるが、一世紀経ち、とっくの大昔にブームが沈静化した事と、実物が、ヘルシンキ博物館が再現した、あのゆるい姿ではないため、当時の人気の見る影もない状態である。
そうこうしていると、夕食の時間になり、奏とらいあも自室から出てきたので、食卓を囲みながら、またも恐竜園の話に花を咲かせる。ちなみに、今日のメニューはキスと野菜の天丼。
うんちく話も終わり、実際見てみたい恐竜の話になると、まりん、始祖鳥。あくあ、ティラノサウルス。奏、フタバスズキリュウ。らいあ、アルゼンチノサウルス。里愛、ステゴサウルスと、見事にばらばらであった。
それじゃあ、うちの館で好きなのは? と決を採ると、アノマロカリス四対、トリブラキディウム一という、わかりやすい結果に。トリブラキディウムに投票した人物は、言うまでもないだろう。
古生物大好き五人娘、その後も古生物トークを交わしながら、天丼を食む。
こうして、夕食も楽し美味しく食べ終わり、入浴タイムを待つ。らいあなど、二日ぶりだから、特に湯が恋しい。
入浴を終えると、めいめい入眠前のちょっとした作業に打ち込みながら、就寝時間を待つのであった。
夕食時少し前。キャンプ道具を手にした、らいあが帰ってくると、皆に「おかえりなさい」と挨拶される。
「楽しかった?」
「うむ」
ベッドに腰掛け、あみぐるみを作っていた奏と、道具をしまいながら、そんななんでもない会話を交わす。
「そういえばね、雁州さん、調理器具一式買ったのよ。カセットコンロも付けて」
「へえ」
遠くから帰ってきて疲れていたので、ベッドに横になる。
「彼女のことだ、さっそくなにか作ったんだろう?」
「うん。昨日はやきそばをね。そしたら、ここのお昼でも、焼きそばが被っちゃった」
苦笑するらいあ。
「今日は、ミニホットケーキ。美味しかったー。らいあにも食べてほしかったって、切なそうだったわよ」
「そりゃ、申し訳ないね。でも、あたしの趣味が、アウトドアだからなあ」
ため息をつく。
一方その頃、あくあと里愛は食堂で。
「先輩、なんで恐竜園ってないんでしょうね?」
オレンジジュースを飲みながら、里愛に問うあくあ。
「理由は簡単。日本の気候から、恐竜を守れないからね」
「そうなんですか?」
「うん。恐竜はね、とても暑い時代に生きていたの。だから、日本の気温じゃ寒すぎるのよ」
「へー」
ペットボトルをゆすぎ、ペットボトル用ゴミ箱に捨てる。
「屋内型テーマパークには、できないんですか?」
「世界最大の恐竜、アルゼンチノサウルスは、全長三十メートルもあるのよ? 彼らを屋内で不自由なく飼おうと思ったら、とんでもない巨大施設になっちゃう」
「ティラノとか、あのへんの有名どころも、必要ですしねー」
腕組みして、悩むあくあ。
「アメリカでは、いっそ本気で作ろうかなんて話も、出てるらしいけど」
「すごいですね。さすが大陸!」
「あとは、熱帯雨林気候のブラジルでも、屋外型テーマパークとして造れないか、検討してるみたい」
「夢が膨らみますねー」
瞳を、キラキラさせるあくあ。
「なんのお話ですか?」
そこに、まりんが通りかかった。
「んー? 恐竜園ないねって話」
両手で頬杖ついて、答えるあくあ。
「そういえば、聞いた事ないですね」
もう一度、同じ説明をする里愛。
「なるほど。確かに、夢が膨らみますね」
ちなみに、オルドビス・アクアリウムやシルル・アクアリウムといった施設も、カンブリアン・アクアリウムの成功を受けて順次開館したが、今ひとつ不人気な時代なことと、案内がAI搭載ロボットなためか、カアンブリアン・アクアリウムほどの人気は博していない。
なお、二〇二〇年代初頭に、日本のネットユーザーの間で大人気を誇ったサカバンバスピスは、オルドビス・アクアリウムにいるが、一世紀経ち、とっくの大昔にブームが沈静化した事と、実物が、ヘルシンキ博物館が再現した、あのゆるい姿ではないため、当時の人気の見る影もない状態である。
そうこうしていると、夕食の時間になり、奏とらいあも自室から出てきたので、食卓を囲みながら、またも恐竜園の話に花を咲かせる。ちなみに、今日のメニューはキスと野菜の天丼。
うんちく話も終わり、実際見てみたい恐竜の話になると、まりん、始祖鳥。あくあ、ティラノサウルス。奏、フタバスズキリュウ。らいあ、アルゼンチノサウルス。里愛、ステゴサウルスと、見事にばらばらであった。
それじゃあ、うちの館で好きなのは? と決を採ると、アノマロカリス四対、トリブラキディウム一という、わかりやすい結果に。トリブラキディウムに投票した人物は、言うまでもないだろう。
古生物大好き五人娘、その後も古生物トークを交わしながら、天丼を食む。
こうして、夕食も楽し美味しく食べ終わり、入浴タイムを待つ。らいあなど、二日ぶりだから、特に湯が恋しい。
入浴を終えると、めいめい入眠前のちょっとした作業に打ち込みながら、就寝時間を待つのであった。
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