怪盗貴族

青火

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王国編

第5話 決行の日②

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「そろそろ始まるな」

とノアがそう口にする。
時はもう16時に迫ろうとしている。そろそろ開催の時間だ。時間はこく一刻と過ぎていく。
数十分後……時は16時になると同時におおきな鐘の音が聞こえた。鐘の音がなると屋台に光が灯る。そして人が川のように流れていく。そしてパーティーが開催された。

一方鐘の音がなると同時にノア達は家の屋根を渡り、移動を開始する。黒いコートを身にまとい、仮面をつけている。ノアの後ろにソフィアもいる。

「今夜はやけに風か強いな」
「そうですね。なにかありそうです」

と疾風のように移動し、会話をする。黒いコートがひらひらとし、今にも縫い目が解けそうだ。ノア達は少し屋台から離れるように移動する。侵入の時間は最もひとが集まる17時だ。その時ならば警戒態勢も薄れていく。ノア達は17時になるまで人気のない所で休憩をとる。

「ノア様、お水です」

とソフィアが魔法でコップに水を注ぐ。ノアはそれを受け取り、ごくごくと飲む。

「ソフィア、今日はなにか起こりそうだな。遠くから魔力の風が時々流れている」
「分かります。魔力自体は見えませんが肌で感じます」

と2人に緊張が走る。王国の中心地ではわいわいと人が楽しんでいる。灯りをノアは眺めているとある声が聞こえる。
助けて……お願い…なんでもしますから…
とこの声に反応したノアは声の聞こえる方向に目を向ける。
だが、何もない。

「ただの幻聴だったのだろうか」

とノアは疑問気に頭を悩ませる。それにソフィアは?、とばかりに首を僅かに傾ける。
突然王国の外から大きな音が聞こえた。ノア達はなんだ、と思い、爆音地に目を向けた。そこには……大勢の魔物の群れが横一列に並んで、雄叫びを上げていた。

「魔物だと!?」

とノアは目を開き驚いた。ソフィアも同様に驚く。中心地の方では音がなった瞬間、キャーの言う声が沢山聞こえた。

「魔物の襲撃か……まさか今とはな…」
「そうですね…」

とノアは愕然とした。と思ったらノアはある考えが浮かんだ。悪そうな顔をし、口を少し釣り上げる。

「これを利用させてもらおう」

とノアの顔は悪人同様になってしまった。ノアの考えはこうだ。
魔物を討伐するため王国は大勢の兵士と魔法使いを送るだろう。多くの兵士達が防衛に徹している間は、学院にはほぼ誰をいなくなる。そう王立学院の教師は元魔法使いが沢山いる。しかも名を挙げた者も中には多数いる。その人たちは必ず防衛戦に参加させられるはずだ。学院の警備所では無くなる。その防衛をしている間、ノア達は自由に中を歩き回れると言うことだ。この絶好のチャンスは絶対逃す訳にはいかぬ。どんな状況だろうがこんな機会は絶対今後はないだろう。ノアは口を釣り上げ、魔王のように笑いだす。

「ソフィア、あと1分後にはここを離れて玄関まで走るぞ」
「はい、ノア様!」

お城からは大量の兵士たちが防衛しようと流れ込む。

「さあ、いくぞ」

ノアの声と同時にノアとソフィアは身体強化魔法をかけ、玄関まで走り出す。ものすごい勢いだ。ものの数分で玄関に到着する。ノア達は屋根をおり、玄関前に姿を表す。

「さあ、まずは職員室で鍵を回収、その後に鍵を使い、地下への道を開く」

ノアが合図し、ソフィアはこくりと頷く。

「職員室に行くまでには何かしらのトラップが仕掛けられているはずだ。俺も一緒にいく。さすがにソフィ1人には行かせられないな」

とノアはソフィアを庇うように言う。その言葉にソフィアは顔を赤くし、モジモジし始めた。その言葉にソフィアはノア様、かっこいい!!と感じたらしい。
職員室にゆっくりと2人は歩き始める。まだ道中にトラップは仕掛けられていない。暗闇の中、仮面だけが少し光り、なんとも物騒だ。

「魔眼を使っているがなにも感じないな。職員室の道中にはなにも無さそうだ。ならスピードをあげ、さっさと鍵を回収しよう」

とノア達は歩くスピードを上げる。
職員室についた。やはりトラップは何も無かった。ゆっくりと扉をあけ、中を確認する。中には誰もいなかった。教師はみんな防衛戦に行ったのか。こちらとしては好都合だ。職員室の奥に行き、鍵を保管している場所へとやってくる。そこにはそこにはずらりと並んだ鍵があった。さすがにこの鍵の量には度肝を抜かれた。ノアは地下倉庫の鍵を手にする。

「これだ。じゃあ一旦戻り、地下への道を開こう」
「はい!ノア様!」

2人は耳元で囁くようにお互い、見つめ合う。2人はこの場をあとにし、職員室を出た。そして玄関まで走っていった。
玄関から左側に地下への道はある。2人はその前に立ち、鍵を使い、扉をあける。カチャと音がなり、扉が開く。仲は少しホコリぽかった。ゴホゴホと咳をした。

「随分汚いな。少しは手入れぐらいしたらどうだ」

ノアはホコリを手で仰ぎながらまえへ進む。少し歩いたら扉が見えてきた。金色の枠で縁取られていて、先程の扉とは比較にならないぐらい綺麗だ。2人はこの神々しさ溢れる扉に目が奪われる。

「綺麗だな。こんな扉が俺の部屋の扉だったらな…」

とノアは妄想を始める。ソフィアはその言葉に同意したかのようにコクコクと頷く。

「まあそれはいいとして、中に入るか」
「はい!では私が開けさせて貰います!ノア様!」

ソフィアは投げキスをするように振舞った。そしてソフィアは扉に鍵を差し、扉を開く。扉が開いた瞬間、金色の光が溢れてくる。なんと神々しい。勇者が使っていたのになんて綺麗だ。さすが地下へ隠すほどのものだ。
恐る恐る2人は中へ入る。ノアはひと通り魔眼でトラップを確認したがなにもなかった。

「不思議だな。なんでトラップがないのだ…」

ノアが少し頭を悩ませる。こんな綺麗な国宝級の物があるのにトラップが1個も仕掛けられていないとはなんて物騒だ。でも警戒は怠らない。いくらトラップがないとはいえ慎重に行動するしかない。なぜならトラップが高等な幻術魔法【シーク】で隠されているかもしれないからだ。

「ソフィア、幻術魔法でトラップが隠されているかもしれない。むやみに動かない方が良さそうだ」
「了解致しました。ノア様」

慎重に行動する2人は怪盗というより泥棒に近かった。ゆっくり1歩ずつ的確に足を踏み入れる。ノアが先頭に立ち、その場に魔力を流し込みながら幻術魔法があるか確認しながら前へ進む。
地下へ入ってから数十分後……
ノアの目線の先に昔勇者一行が使っていたと言われている装備が並んだいた。ノアは少し見とれてしまったが直ぐに気合いを入れ、歩き始める。勇者が装備していた剣や魔道具がある場所についた。

「これが勇者一行が使っていたと装備か…あんまり綺麗とは言えないな。扉の手前にあったほうが綺麗だ」

と本音が出てしまう。だが綺麗さとは裏腹に魔力量が桁違いだ。さすが勇者が魔王を倒すだけだけに作られた聖剣だ。この魔力量ならば王国の半分は一振りで消し飛びそうだ。

「ソフィア、一応魔力を流してみたがなにもトラップは無さそうだ」
「はい、わかりました」

小さな声でことばを交わす。1度ノアは外に置いておいた魔法具に視界共有魔法【シジラ】を使って、視界を共有する。そして外の様子を確認した。まだ外では防衛戦をしている。その事を確認し終えたノアは【シジラ】を解き、視界共有をやめる。

「ソフィア、まだ外では防衛戦が続いているらしいが直ぐにここから出なくてはな。もしバレたらひとたまりもないからな」
「承知致しました。ノア様」

2人は目的のためにすぐに魔法具に付与されている魔法を確認したり、本を読み、勇者一行が使っていた魔法も確認した。

「付与されている魔法は……防御耐性・自然影響無効・魔力増幅魔法だな」
「そうですね。大体はその3つかと思われます」

防御耐性・自然影響無効・魔力増幅が主に付与されているらしい。この3つはノアが使える付与魔法だ。これなら付与に冠する問題は解決だ。だが魔力が問題だ。どれにも桁違いの魔力を帯びている。この魔力量を確保するためには少なくても50年はかかりそうだ。

「さすがにこの量の魔力を集めるのは難しいな。一応血を媒介とした魔力増幅魔法の術式は出来たが血が持たないな」
「ですね。いくら魔力を増幅させてもこの量の魔力にはならないかと」

2人はうーん、と頭を悩ませる。血を使った魔力増幅魔法なら時間は短縮形されるがそれでも時間はかかってしまう。このことは後にした方が良さそうだ。
続いて魔法についてだ。勇者一行が使っていた魔法術式が書かれているが全く見たことの無い文字で書かれている。さすがにノアの家系脳力【魔法構築】があるとはいえ、魔法を作るのは難しそうだ。

「とりあえずこの本は俺の新作魔法具で記憶だけでもしておくか…いつかこの文字が読めるになった日のために……」

ノアは新作の魔法具を取り出した。その魔法具は円盤状で中央部分には魔力を流す水晶玉がついている。この魔法具の使い方は単純だ。記憶だけさせたいものに魔法具をかざし、水晶玉に魔力を流すだけで記憶が出来てしまうと言うなんと便利な魔法具だ。だがさすがに人に使うことはできない。
魔法具を使い、本の内容を記憶がさせる。その記憶はこの水晶玉に描かれ、ほかの水晶玉で投影するも可能だ。いわゆる記憶共有だ。

「よし、成功だ」
「お見事です!ノア様!」

ソフィアはしたかのように喜ぶ。そして喜びが高まり、抱き合う。ノアは魔法具を作ることに関しては天才に近い。家の中には色んな魔法具が置かれている。それは全てノアが制作にしたものだ。

「そろそろここを出るか!」
「承知致しました!」

とこの部屋を出ていく。そして職員室に鍵を返し、玄関に到着した。ノアはあくびをし、眠たそうだ。

「今日はいい収穫とは言えないが新作の魔法具がこれ程便利とは思わなかったな」

ノアは背伸びをし、肩を落とし楽にする。ソフィアも同じく肩を落とし楽にした。ノア達は体を伸ばした後、すぐに屋根へ登り、周りをみわたす。まだ防衛中のようだ。1度防壁をへ登り魔物の数を見た。襲ってきた時の数より半分以下になっていた。

「そろそろ防衛戦も終わりそうだな」
「では家へ帰りましょう!」

2人は黒いコートの帽子を被り、ここをあとにした。
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