怪盗貴族

青火

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王国編

第6話 魔物の襲来に巻き込まれた!?

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少し移動した後、王国の隅に1軒の家があった。屋根か黒色で少し明るめの壁で出来ていた。ノアは中に誰かいるかも確認するため扉をコンコン、とノックする。特に返事がないのでその家の屋根で腰を下ろし、少し休憩をとる。

「ここなら魔物の接近に気が付きやすいし、新しい魔法具の試しがしやすそうだ」
「新しい魔法具ですか?」

そう言うとノアは収納魔法の中から新たな魔法具を取り出す。その魔法具は今で言うドローンに似ている。ドローンの裏側にはやはり魔法具に欠かせない水晶玉が5つ付いている。4つの水晶玉に囲まれていた真ん中の水晶玉は先程使用していた、視覚共有ができる特殊な水晶玉だ。その水晶玉に視覚共有魔法【シジラ】を使用することで文字通り、視界を見渡せることができる。360度では無いが270度前後は視界を見ることができる。
そのドローンを使用し、壁伝いに登り、外の景色を見た。そこはまるで戦争をしているのかという、戦いが繰り広げられていた。そしてドローンの下を見たノアは壁を登っていた魔物と目があってしまった。お互い?、を浮かべ、あらこんにちは、と言わんばかりの挨拶を交わした。

「ソフィア、俺、魔物と意思疎通出来たかもしれないわ……」

ソフィアは何を言っているんでしょうという顔をして首を傾げる。ノアは口をあけ、愕然としている。
すると魔物はそのドローンにむかい、火の玉を吐いた。ノアはギリギリ意識を取り戻し、それを回避する。
ノアはドローンについている残り4つの水晶玉に魔力を込め、魔物の足の裏側に強めの小さな竜巻を起こした。

「風竜巻【ウィンドトルネード】!」

魔物は壁に足がつかなくなり下へ落ちる。その音を聞いたほかの魔物がこちらへ流れるように来る。空を飛ぶ魔物や2足歩行の走ってくるトカゲの魔物だ。

「これはまずいことになった……ソフィア!やるぞ!」

その掛け声とともにソフィアははい!と頷き、折りたたみ式の剣を取り出す。そしてソフィアは身体強化魔法をかける。
ノアは壁を走り、壁の上に着く。ノアとソフィアは両手を広げ、魔法陣を作り出す。ノアの手元の魔法陣からは青いスパークが迸り、ソフィアの手元の魔法陣からは赤いスパークが迸る。

「水の槍【ウォーターランス】」
「炎の槍【ファイアーランス】」

2人の手元からは2属性の槍が魔物に向かい、飛んでいく。それに追い打ちをかけるようにノアが剣を即座に作り出す。

「炎よ、我が敵を斬る刃となれ、乱炎刀【フレイムカッター】」

いくつもの炎の刃が斬撃となり、魔物を切り裂いていく。切り目が燃え、再生が鈍くなる。魔物は通常魔石というものを持っており、それを壊すか魔力枯渇の状態でしか魔物を倒す方法はない。ノアは魔石を見抜き、そこへ斬撃を飛ばした。あっという間に魔物は残り数体まで数を減らす。

「残り2体か」
「ですね。ノア様、魔力の方は大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。この服には魔力増幅魔法を付与してあるからな」

まだ2人とも魔力には余裕がありそうだ。だか、ノアの方は少し息を切らしている。

「残りの魔物は赤色の鱗が付いているな。なら炎属性は効きずらいか…なら直接体内で魔法を放てば魔石も1発で壊れそうだな」
「剣を刺し、剣先に魔力をながし魔法を放てばよろしいのですね!」

2人はお互い見つめ合い、やるぞ、という決心を持ち、壁から身を乗り出す。

「はぁぁぁぁあ!!」

ノアとソフィアの剣は脳天を貫き、剣先に魔力を込め、魔法を放つ。

「爆破斬撃【エクソパルソ】!!」

剣先に大量の魔力が流れこみ、脳天から爆破する。見事に魔物の魔石を砕き、魔物を撃破する。2人は地面に足をつき、ソフィアが少しふらついた。恐らく魔力枯渇だろう。ソフィアは元から魔力量が少ない。

「ソフィア、大丈夫か?俺に捕まれ」
「申し訳ありません…」

ノアは肩を貸し、ソフィアを立たせる。ノアは心配になり、魔法陣を作り、魔力を少し分け与える。

「ありがとうございます。ノア様」

顔色が少し良くなったソフィアは少しずつ自分で立てるようになっていく。ノア達は壁を登り、離れた一軒家の屋根に腰をかけ、休憩する。

「もう少しここで休んでいこう。ここならあまり人も来ないだろうし、丁度いい場所だ」

そう言うとソフィアは体を倒し、横になる。念の為、周りにはドローンを飛ばし、警戒態勢もとる。

数十分後……ようやく防衛戦に出ていた兵士達が中央の道を通り、王国へ帰還する。中には重症の人もおり、完全勝利とはいかないだろう。魔物は逃げる奴もいたが大体は魔石ごと消えている。さすが王国兵士達だ。なにも付与されていない剣を使ってここまで戦えるとは。
ノアは中央を通る兵士たちの中から学院の教師を探していた。特に用がある訳でもないが何となく見ている。まあ暇潰しだろう。まだソフィアは1人で歩ける状態ではないからだ。

「ソフィア、1人で歩けるようになったら声を変えてくれ。その間、ソフィアの新しい剣を作っているから」

ソフィアは小さな声ではい、と返す。ノアは早速作業を始める。
時が過ぎ、ソフィアが1人で歩けるようになってきたみたいで声をかけてきた。

「ノア様、心配をかけて、申し訳ありません」

目を瞑り、頭を下げる。ノアは手を止め、こう言う。

「気にしなくても大丈夫だ。元々魔力が少ないから仕方がないよ。そのために今魔力増幅魔法と魔力効率化の魔法を新しく改良しているからね」

その言葉に少し、頬を赤く染める。自分のためにこんなことまでしてくれるなんて!と嬉しみが湧いてくる。恥ずかしくなってきたのか両手で顔を隠し始めた。

「やはりノア達は魔法具を作るのがお好きのようですね!」

ニコッと笑い、ノアに笑顔をみせる。

「好きなのは好きだけど、怪盗をする上で捕まったら元も子もないからね。なにせ仲間は誰一人失いたくないから」
「私も仲間は失いたくありませんし、何よりもノア様だけは絶対に失わける訳にはいけませんから…………こんな暗い話はやめてさっさと家へ帰ってしまいましょう!」

ソフィアは暗い話の無理やりとめ、暖かい家へ帰りましょうと言い、場を和ませようとした。2人は黒いコートを身にまとい、家へ走り出す。
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