怪盗貴族

王国編

第4話 決行の日①

あれから5日後……
王国ではパーティーが始まる日になった。つまりノア達が決行する日だ。ここ5日間でノアは学校へ行き、最終確認も出来た。もうすぐ朝を迎える。そろそろソフィアが起こしに来るだろう。

ドアからコンコンと言う音が聞こえる。恐らくソフィアがノアを起こしに来たのだろう。ドアを開ける前に一言超えをかける。

｢ノア様、朝になりましたよ｣

と声を掛け、ドアをカチャッとあける。そこでもう一度

｢ノア様、朝になりました｣

優しい声が部屋全体へ広がる。まるで天使のような声だ。だがノアは朝が苦手なのでなかなか起きてこない。なので足跡を立てずにゆっくりと忍び足でノアの元へ歩いていく。ベットの横に立ち、ノアの耳元で囁くように

｢朝ですよ｣

やわらかボイスが耳元で聞こえる。その声が聞こえたのかノアが少しずつ目を開く。ゆっくりと。

｢もう朝か……ソフィア…おは…よう｣

ノアがソフィアにおはようと返す。上体を起こしながら、眠たそうに目を擦る。1度背伸びをし、フゥーと息をし、リラックスする。まだソフィアに焦点があっていなく、視界はぼやけている。数十秒後……ようやく焦点があってきたようだ。

｢おはようございます！ノア様！｣

元気にニコッと笑い、笑顔をみせる。今までの朝で1番の笑顔だ。誰もが心を落ち着かせるような表情をしている。

｢おはよう、ソフィア。俺は朝が弱いからいつものように肩を貸してくれるかい？｣

とソフィアに頼み事をする。嬉しそうにソフィアは、はい！と答える。そして肩を貸し、お布団からノアを出す。これが日課である。ノアはあまりにも朝に弱すぎて力が入らない。なので毎朝肩を貸してもらい、ベットから降りる。そのまま家族が集まる食堂へ移動させる。

｢着きましたよ！ノア様！｣

食堂に着き、ノアを椅子へ座らせる。その横にソフィアが座る。クラウス家は食事の時は1度仕事を止め、メイドさんとも一緒にご飯を頂く。もちろん料理人もだ。
全員が席へ着く。そしてノアのお父さんがグラスを片手に持ち、立ち上がる。

｢みんな、おはよう！良い朝だな！みんなの元気そうな顔が見れて私は大変嬉しいよ！では頂くとするか！いただきます！｣

父親がそう皆へ告げる。そして皆がスプーンやフォークを取り食べ始める。先ほど父親はみんなの元気そうな顔が見れて嬉しいよと言っていたが、1人全く元気がなさそうな顔をしている奴がいる。そうあなた(父親)の息子である、ノアだ。
朝はいつも不機嫌そうな顔をして食堂へ来ている。その不機嫌そう顔を少しでも緩めようとソフィアが隣からお肉を口元へ運んでくる。そういわゆる”あーんだ。

｢ノア様、はい！あーん！｣

その声を聞き、ノアは口を開く。そして口の中へ。もぐもぐとじっくり味わう。肉の旨みが染み出てきたのかノアの目が徐々に開いていく。そして目がぱっちりと空いた。

｢美味しい……｣

と言われた瞬間、ソフィアは嬉しそうに笑顔をみせる。なぜそんなに喜んでいるのか。それはこのお肉はいつもは料理人が調理するのだが、今回はソフィアが調理をしたのだ。だからその料理に美味しいと言って頂けてとても満足している。

｢どうした？ソフィア、そんなに嬉しそうにして｣
｢いえ！なんでもありません！うふふっ！｣

可愛い素振りをみせる。好きな人から言われた言葉なのだから、それは嬉しい。
そして朝食を食べ終わり、ノアは1度部屋へ戻る。

｢決行日は今日だったな。なんか緊張してきたな…あの仮面も完成した事だし、もし見つかっても認識阻害が上手く発動し、謝った情報を与えることになるだろう｣

コンコンと音が鳴る。そしてドアの開く音がした。

｢ノア様、今日の日程についてお話があります｣

ソフィア以外のメイドさんが来て、慌てて手に持っていた仮面を後ろへ持ち隠す。もう少しで仮面が見られてしまうところだった。

｢あー分かった。話してくれ｣

そう言うとメイドさんは日程について話す。

｢本日は王国でのパーティーが開催されます。それに伴って変則な日程になっております｣

その後も話が続き、日程確認が終わった。

｢では日程の確認が終わりましたのでこれで私は失礼させていただきますね｣

ドアの前まで歩いていき、1度お辞儀をし、部屋をあとにした。
数分後……トントンとドアがなる音が聞こえた。

｢ノア様、入ってもよろしいでしょうか？｣

この優しい声はソフィアだ。ノアはすぐに許可を出し、部屋へ入れる。

｢ソフィア、こっちへおいで。仮面が出来たから先に渡しておくよ｣

そうしてソフィアの手に仮面が渡った。女の子らしいピンクの模様が描かれている。そしてなんとも美しい。

｢お綺麗ですね！ノア様！！｣

この日のために仮面を改良し、デザインも凝って作り直したのだ。そうこの日はソフィアのクラウス家へ迎えた日である。

｢今日はソフィアがこの家に来た日だからね！これがプレゼントかな｣

少し照れるように頬を赤くする。これは初めてのプレゼントだ。なのでなかなか緊張していた。

｢ノア様、ありがとうございます！！｣

と元気にニコッと笑う。もちろんソフィアは初めてのプレゼントを貰ったのだ。もちろん嬉しいだろう。

｢ゴホン……今日はこの仮面を付け、決行するよ｣

ソフィアは頷くようにはいと静かに返事をする。そしてソフィアが手を差し伸べる。

｢了解致しました！ノア様の役に立てるように頑張ります！ではそろそろ馬車へ乗り、少し買い物にでも行きましょうか！｣

そうだなと言うようにノアが頷く。