怪盗貴族

青火

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王国編

第3話 準備②

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学院から帰ってきたノアは夜の会議に向けて準備をしている。部屋の真ん中には、丸いテーブルを出し、椅子を向かい合うように設置する。テーブルの上には大きな紙を広げ準備が終わった。だが、このままではソフィア以外のメイドさんたちに見られてしまうので幻術魔法【シーク】を使用し、見えないようにした。これで会議の準備は終了だ。
準備が終わって20分後……ソフィアが買い出しから帰ってきた。
「ただいま帰りました」
と玄関からソフィアの声が聞こえる。他のメイドさん達も「おかえり」と声をかける。すると、厨房から料理人が出てきた。片手にフライパンを持ち、ガタイのいい人だ。見た目は怖いが実は優しい人だ。
「おかえり、ソフィアちゃん。今日はノア坊は何を食べたいっだって?」
とソフィアに質問をする。
「今日は何も答えてくれませんでしたのでおまかせで大丈夫だと思います!」
ソフィアは落ち込んで声で返す。料理人はそんなソフィアちゃんを見て、何かあったのかと思い込んだ。
「珍しいな、ノア坊……何かあったのか?」
と料理人は思ってしまったことをすぐ声に出てしまう。周りのメイドさん達からの支線が痛い。「ほんとに何かあったらどうするのよ」「また声に出してしまったわよ…」などと周りから聞こえてくる。料理人は焦ってしまいアセを流しながらソフィアに謝る。
「ソフィアちゃん、ごめんな。ほんと…ごめん……」
手を合わせながら頭を下げる。
「ノア様とはなにもありませんでしたので心配してもらわなくても大丈夫です」
料理人が今にも土下座をしそうになっていたので慌ててソフィアは料理人に声をかける。
「そうか………じゃあ……俺…料理作ってくるわ……」
料理人はこの場に居ずらくなり、すぐに厨房へ戻る。
「では私は1度ノア様の様子を見てきますね」
ソフィアはこの場の空気を明るくしようと笑顔をみせる。
コンコンと音を鳴らしソフィアはノアの部屋のドアをノックする。
「ノア様入ってもよろしいでしょうか?」
声をかけると中からノアの声が聞こえた。
「ソフィアか。入っても大丈夫だよ」
「では失礼します」
ドアノブを押し、ノアの部屋へ入る。そこには魔法で作られたタンスや本棚などがあった。部屋は暗く、真っ暗だ。ソフィアはドアの右側にある魔法陣に手をかざす。するとたちまち部屋は明るくなり、部屋全体の内装が見えるようになった。ノアはいつも暗いところで自分の仕事をしている。
「ノア様、また部屋を暗くして仕事をしているんですか?」
口を膨らませ、注意をする。ソフィアが入る時は全て部屋が暗いので注意をするのにも飽きてきただろう。
「ドアを閉めてくれる?」
「はい」
ソフィアはドアを閉め、ノアの座っている近くに腰を下ろす。
「今夜23時に俺の部屋に来てくれ。王立学院の内装図について教える」
ノアはソフィアの耳元で囁く。ソフィアも小さな声ではいと答える。要件を聞きおわり、立ち上がる。ソフィアはそのまま部屋を出ていく。
「この部屋も魔法具で沢山になってきたな。父様に行って部屋拡張していいか聞いてみようかな」
数時間後……ノアは夕飯を済ませ、部屋に戻る。もちろんソフィアも一緒だ。「11時まではまだ1時間ほど余っているから新しい魔法の開発でもしていたいところだが、せっかく早く集まったんだ。早く初めるとするか…」
指を鳴らし、先ほど隠していたテーブルと椅子を出す。幻術魔法を解き少しテーブルを拭く。
「さて、会議を始めよう」
宝の地図のように丸まっている紙を重力魔法で固定する。
ノアが椅子に座り、その向かい側にソフィアがすわる。
「どうやら、王立学院には隠された部屋があるという噂だ。そこには昔の勇者一行が使っていた魔法の一覧や防具があるらしい。今回はそれを盗むのでは無く、装備に付与されている魔法や魔法の一覧を見てみたい。まあ下見とでも言っておくか」
そう今回は盗むのではなく、あくまでも下見というわけだ。「下見ということは盗まないという訳ですね。ならいつかはそれを盗むのですね!」
もちろんそうだ。下見と言ったのならばいつかは必ずその物を盗みに行く。
「王立学院はその物を大切に扱っている。1日中監視してあるし、恐らく魔法でトラップも設置しているだろう。それほど外部に情報を漏らしたくないようだな」
「ということはそれほど大事なものがあるというのですね」
ソフィアは緊張が走る。それほど厳重な警備がされていたら少しでも足を滑らせれば大惨事だ。
「いずれは必ずそれを盗むよ。いきなりそんなもん盗んでも代わりがないからね。」
「ではなぜその場で付与魔法もかけ、代わりを置いて宝を盗まないのですか?」
付与されている魔法が分かればその剣をいくらでも作れる。付与魔法は単純な物が多く、簡単なものばかりだ。ならその場で作って盗めるはずだか……
「勇者の武器とは付与されてる魔法は簡単なものばかりだが魔力の量がその代わりに作った剣とは桁が違う。魔力の波長も荒々しい。だから代わりの剣を置いて盗めないんだよ」
勇者の武器は魔王を倒せるほどの魔力を帯びていて有名だ。
その武器は代々勇者が使っているがほぼ魔力が減っていない。
「なるほど。分かりました。でも、魔力の波長を変えるのはできるのですか?」
ソフィアは首を傾げる。
「魔力の波長を変えるのははっきり言って無理だろうね。でも新しい魔法を作ってしまえばなんとかなるんじゃないかなと俺は思っているよ」
クラウス家の家系能力【魔法構築】で魔力波長操作と言う魔法を作れてしまえばいつでも波長をかえ、剣に炎や風といった属性を付与できる。勇者の武器は光属性なので光属性の波長に変え、常に魔力を暴走させればいい。
「では付与魔法と勇者一行が使っていた魔法を調べれば良いのですね!」
ソフィアは笑顔で元気に発した。
「そうだね。ただ調べるのにも注意が必要だよ。触る前にトラップ魔法がかかっていないか確認するんだよ」
「はい!ノア様の役に立てるよう頑張ります!!」
ガッツポーズをするようにし、喜ぶ。
「侵入経路はまず、生徒玄関から入り前へ進む。数メートル行ったところの上に空気を入れ替える配管があるからそこへ入る。その後右へ進み、職員室へ向かう。恐らく鍵は職員室の倉庫にあると思うよ。鍵を回収後、生徒玄関に戻り1度配管を降りる。そのまま左側にある幻術で隠された道を通る。その先に地下へ続く道があるはずだよ。鍵を使い、地下倉庫を開ける。そこからは俺も分からなかったよ。決行は5日後」
決行する5日後は町でパーティーが開かれる。その場には色んな人が集まる。もちろん教師の9割近く行くはずだ。人の警備が薄くなったら生徒玄関への侵入は容易い。その瞬間を狙う。
「時間は3時間。パーティーが終わる2時間前だ。パーティーは16時から始まる。そして1番人が集まるのが17時だ。その17時に生徒玄関へ向かうよ。そこから3時間、だから20時には退散してるようにする。少しでも時間が過ぎたら危うくなってしまう。残り2時間は片付けがあるからね」
「はい!承知致しました!」
「仮面には認識阻害と魔力感知を付与しておくよ。くれぐれも外さないようにね」
「はい!」
「では、会議を終了するよ!これから僕は仮面制作に入るから」
ノアは立ち上がり仮面に手をかける。そして付与する作業が始まった。ソフィアはノアの邪魔をしないように足音を立てず、ゆっくり部屋を出ていく。
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