sweet!!

仔犬

文字の大きさ
357 / 378
misunderstanding!!!

3

しおりを挟む
「なんだか面白い事になってますね」

ドアを開けた赤羽さんがいつもと変わらぬさわなかな笑顔で立っていた。赤羽さんは容姿だけならものすごくスポーツなんかが似合う爽やか青年だけど中身を知っていると頭脳派にしか見えながら不思議だ。
瑠衣先輩に群がる俺たちを見て面白そうに微笑みながら部屋の中に入っていく赤羽さん。


「赤羽、これ調べて」

「また物騒な物仕込まれましたね」

暮刃先輩から渡されたものを見てすぐに何か分かったのか了解ですと微笑んだ。物騒と言いながらも驚いた様子はないしどちらかといえば楽しそうにすら見える。

俺はふと盗聴機が仕掛けられていたと言うことは発見するまでの間に何か情報でも漏れてしまったのではと不安になった。

「この袋に入ってたんですけど、大丈夫かな。ここの話が筒抜けだったかも……」

「大事な話向こうではしてないから。それに漏れて困るものでもないし」

「これでどうにかしよう、というより喧嘩を売ってるつもりだと思いますよ」

赤羽さんは盗聴器を指先で弄ると少し楽しげな様子で握り直す。綺麗な唇で微笑むと視線が俺の方を向いた。

「少し調べてみます。それから相手の名前は聞きました?」

「あ、いえ。でもチャットIDなら貰いました。あだ名はキツネさんです」

スマホの画面を見せると赤羽さんが笑顔のまま固まった。

「……交換しちゃったんですか」

「なんでもする代わりに逃してくれって言ったら」

「また大博打して……」

やっぱり苦笑だ。
今日あと何人かにこの顔をされることは覚悟しよう。

「それで、返信はどうするんですか?」

「えーと返すようには言われているんですけど……うーん、先輩達を通したら良いですかね?」

「その方が良いかと、向こうも俺たちに筒抜けだなんて分かるでしょう」

「じゃあ、そうします」

はい、と微笑んで赤羽さんはすぐに部屋を出て行ってしまった。キツネさんの情報が知りたかったのか見た目とか性格何かを伝えるとタブレットに入力していた。

それにしても連絡なんて来るのだろうか。おはようとか来たらどうしよう。来る可能性は低くあって欲しい。

「ね、キツネさんとやらのチャット見てみたい」

「良いけど、はい」

瑠衣先輩の腕の中が渋滞しているので流石に唯が席を一つずれた。秋と俺だけ瑠衣先輩シートのままスマホを渡すと楽しげに見始める唯。氷怜先輩も見るのか唯の横に移動する。

「勝手に返信すんなよ」

「しませんよー」

唯がピースをすると瑠衣先輩が俺の頬をつつきながらけらけらと笑う。
向こうからはまだ何も来ていないので最後の言葉は笑顔で手を振らなきゃ帰らない、だ。唯がそれをみて眉を寄せた。

「わがままな人……?」

「わがままで済めば良かったけど……」

やっぱりこんなふうに可愛い顔は可愛らしい発言をしてくれないと、キツネさんは勿体ない。

「そう言えばどうして暮刃先輩はそのチームの人だって分かったんですか?キツネさんが誰かと言うのは知らなかったんですよね……あ、腕にタトゥーがありました。フード被った死神みたいな」

「そう、それが奴らのマークなんだよ」

「でも服で隠れてたのによく気がつきましたね」

「腕を最初に確認するくらいには有名なんだよね……」

言葉の後に忌々しいとでも続けるのかと思ったくらい暮刃先輩が綺麗な顔を歪めた。髪をかきあげると仕方ないと言って足を組み直す。

「あんまりこう言う話君たちにするの好きじゃないけど、今回は話そうかな……良い?」

「こいつらに関係ある時はしょうがねぇ……」

氷怜先輩も本当に仕方がないと言った様子で頷いた。先輩達がこうして俺たちにチーム関係の話してくれた時と言えば桃花と初めて会ったあの試合の時くらいだ。

チームの試合があったり、テリトリーをかけた争いが生まれたりと何となくは知っててもどんなチームがどういう動きをしてるのかみたいな深い話は全く知らない。幹部の人たちからもその下に付く人たちからももちろん聞いたことはないから俺たちに下手な事は言わないようにしてるんだろうな。まあ俺たちも聞いたりはしないようにしてるから余計に。

「ヘッドイーターはねかなり前から存在してるんだよ、しかもチームなんだけどチームじゃないから情報掴みづらいんだよね……」

「チームだけどチームじゃない……?瑠衣先輩も知ってます?」

秋が見上げるとこくんと頷いた瑠衣先輩。

「オレ1番試合したかったんだー……今はほんとに殺りたいケド」

「あ、ちょまた地雷踏む!進めてどうぞ!」

また黒いオーラが見えた気がして慌てて秋が暮刃先輩に続きを促した。

「ヘッドイーターのヘッドはさチームの頭を意味してる。それを食らう、だからヘッドイーター」

とても分かりやすい。あのキツネさんのなんとも言えない怖さもそのチーム名なら納得だ。

「失礼します」

「ああ、紫苑ありがとう」

丁度そこで紫苑さんが顔を出して俺たちの分までドリンクを置いてくれた。ついでに痛くないけど頭をこつんと小突かれたので赤羽さんから話を聞いたようだ。
紫苑さんの王子様フェイスが少し硬め。ごめんなさいと手を合わすとため息をつきながらも頭を撫でて部屋を出ていく。心配かけてしまった。みんなにも謝らないとな。

ちなみに瑠衣先輩には例のごとく巨大なケーキも運ばれたおかげで、漏れ出てしまった黒いオーラも消えてご機嫌に食べ出した。ついでに秋の口と俺の口にもたまに運ばれる。

「先輩達は出会ったの初めてなんですか?」

「ああ、俺たちがここに居付く前から存在してるけど出会した事は一度も無い。だいたいそいつらの目的も分からねえし」

「わがままそうだしなぁ……」

唯がまだチャット見ながら呟いた。
たまたま連絡がくるのでも待っているんだろう。

秋は少し考えるように唸る。

「えーと、テリトリー目的じゃないって事ですか?」

「そう。チームはある、らしいがどこにいるのかも不明、そもそも拠点すらねぇと思う。赤羽が言うにはほぼ単独で動いてるからヘッドイーターだと名乗らない限りは区別もつかない」

「だからチームだけど、チームじゃないと」

唯がスマホを持ったまま真面目に言葉を繰り返した。暮刃先輩は指の甲を顎に添えてそれでねと話を続けた。

「チームそのものを壊したい、乗っ取りたい、それだけなら他のチームとやってる事はほとんど同じだし別に困ったものでも無いけど……奴らは食べるだけじゃない。頭を取り込む。つまり自分たちのところに引き抜くんだ」

暮刃先輩が手を伸ばした紅茶は湯気が立ちいい香りがしていた。口をつける前にカップを見つめる。

「誘う方が強い力とか繋がりが欲しいって言うのは分かるんだけど……正直自分が誘われたとして入るメリットが分からなくてね。だって全員が元トップで動きもバラバラ、やることも明確じゃ無い。うちに入った桃花みたいに誰もが良い子なわけでも無いだろうし」

「桃花はとくべつ優しいですしね」

何故か唯が嬉しそうだ。
でも暮刃先輩の言いたい事はわかる。テリトリーも戦力も欲しい訳でもなくただトップだけを集めてる。集めたところで何をするわけでも無い。確かに不思議だ。

しかしそれが本当であれば先輩たちが知っているくらい長く存在し、なおかつ全員が元トップの集まり。未だにその引き抜きが続いているのであればそれなりの数がいるのではないだろうか。


「それってつまり……」

「うちで言えば幹部より上の、つまり俺たちレベルしかヘッドイーターには存在しない」






嵐の予感がする。


しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

処理中です...