sweet!!

仔犬

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misunderstanding!!!

2

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「盗聴機……?!」

びっくりして唯が思わず氷怜先輩に抱きついたのを横目に秋も俺も固まってその黒い機械を見つめる。

「キツネさん、いつのまに……」

きっと近くに寄ってきた時、だと思うけど全く分からない。もちろん盗聴機なんて初対面だ。こんなに小さいのか。

「そんなものから匂い感じます……?すごー……」

秋の驚きの言葉は瑠衣先輩の顔を見て声が途切れる。不機嫌、どころではなくなっている。

「キツネが、なにー……?」

「あ、あー瑠衣先輩?顔、顔が」

瑠衣先輩のあからさまな不機嫌は盗聴機を発見した時にはすでにブチギレているのではないかと思ったくらいの変化だった。静かに空気が重くなっていく。

「えっと、そのストーカーだと思ってた人、ヘッドイーター?……がキツネって呼んでって……アカウント名もキツネの絵文字だったので」

「へー、そーなんだぁ……」


悪いのが俺と言うより盗聴機を仕込んだ犯人なので俺たちに嫌悪を向けないよう口調はかろうじて伸ばしている感じだけど、隠しきれてない。
名前を出したらさらに黒いオーラが。なんだ、盗聴機はそんなにトリガーなのか。

「か、可愛い顔がもったいないですよ~!」

秋も瑠衣先輩の機嫌急降下をいち早く察知して思わず瑠衣先輩の両頬を手で挟む。俺もすぐに足元にしゃがんでもう一度謝った。

「ごめんなさい瑠衣先輩。そんなに嫌な思いをさせてしまうとは……」

「ンー……」

いきなり秋と俺をぐいっと引っ張って瑠衣先輩の腕の中にすっぽり。意味が分からず固まっていると聞いたこともない低い声が響く。

「……うぜぇ」



そんな声についにフリーズ。
氷怜先輩や暮刃先輩は盗聴機にピクリと眉を動かした程度でそこまでの反応はなかった。それに瑠衣先輩のこの急降下現象は見慣れているのか氷怜先輩の咎めるような声が聞こえてきた。

「瑠衣落ち着け、怖がらせんな」

「その握ってるやつも壊さないでね。赤羽に調べさせるから……」

すでにメキッと耳元で音がしたけど、瑠衣先輩はそれを暮刃先輩に投げたようだ。赤羽さん盗聴機も調べられるなんて多才な。
唯の驚いた声がする。

「瑠衣先輩がこんな風に怒るなんて珍しい……」

「こいつの地雷踏んだんだよ。喧嘩は良いけどお前らにこうやって付け入るのは嫌なんだろ」

つまり威嚇的な心情なんだろうか。
秋ともつれながらも目が合って2人で瑠衣先輩を宥めるように撫でる。

李恩に連れ去られたってこんな風に怒ったりしなかったのに、いやでも李恩は先輩達何故か割と気に入ってたんだ。今やチームにも出入りしてるし。
瑠衣先輩の中ではキツネさんは敵と判断されたんだろう。確かに得体が知れない度は李恩なんて比じゃなかった。

それに瑠衣先輩は気に入ったものを大事にするって暮刃先輩と氷怜先輩が教えてくれたことがある。じゃなきゃ恋人じゃない俺たちまで一緒にシェアハウスなんてしないのだ。


「それは、なんだか……瑠衣先輩おれも!」


何故か唯が嬉しそうに俺たちの所に飛び込んできた。怖がるどころか秋と俺の間にすっぽり入って、下から覗き込む瑠衣先輩の青い目がギラギラと揺れてアテのない怒りが見えるのに唯がそれに負けないキラッキラの目で微笑む。

「……ナニ笑ってんの唯ちん~」

「だって、おれたちの事大切だから怒ってるのすごい伝わるから嬉しくて~」

ほわっと唯が笑ったら瑠衣先輩も毒気を抜かれたらしい。俺も秋も釣られて笑っちゃって、そしたらもういつも通りだ。

「俺のせいで怒らせちゃいましたけど、おれも嬉しくなっちゃいましたよ」

「瑠衣先輩のこういうとこ俺結構好きっすよ」

俺も秋もそう言えば驚いた顔から次第に少し呆れたような笑みが返ってきた。いつもの大爆笑じゃなくて、口元を少しだけ上げる瑠衣先輩は本当に美人だ。



「バカだねぇ~」

「ええ?!」



最後はいつもの悪戯な笑み。
瑠衣先輩はこうでなくては。
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