357 / 379
misunderstanding!!!
2
しおりを挟む
「盗聴機……?!」
びっくりして唯が思わず氷怜先輩に抱きついたのを横目に秋も俺も固まってその黒い機械を見つめる。
「キツネさん、いつのまに……」
きっと近くに寄ってきた時、だと思うけど全く分からない。もちろん盗聴機なんて初対面だ。こんなに小さいのか。
「そんなものから匂い感じます……?すごー……」
秋の驚きの言葉は瑠衣先輩の顔を見て声が途切れる。不機嫌、どころではなくなっている。
「キツネが、なにー……?」
「あ、あー瑠衣先輩?顔、顔が」
瑠衣先輩のあからさまな不機嫌は盗聴機を発見した時にはすでにブチギレているのではないかと思ったくらいの変化だった。静かに空気が重くなっていく。
「えっと、そのストーカーだと思ってた人、ヘッドイーター?……がキツネって呼んでって……アカウント名もキツネの絵文字だったので」
「へー、そーなんだぁ……」
悪いのが俺と言うより盗聴機を仕込んだ犯人なので俺たちに嫌悪を向けないよう口調はかろうじて伸ばしている感じだけど、隠しきれてない。
名前を出したらさらに黒いオーラが。なんだ、盗聴機はそんなにトリガーなのか。
「か、可愛い顔がもったいないですよ~!」
秋も瑠衣先輩の機嫌急降下をいち早く察知して思わず瑠衣先輩の両頬を手で挟む。俺もすぐに足元にしゃがんでもう一度謝った。
「ごめんなさい瑠衣先輩。そんなに嫌な思いをさせてしまうとは……」
「ンー……」
いきなり秋と俺をぐいっと引っ張って瑠衣先輩の腕の中にすっぽり。意味が分からず固まっていると聞いたこともない低い声が響く。
「……うぜぇ」
そんな声についにフリーズ。
氷怜先輩や暮刃先輩は盗聴機にピクリと眉を動かした程度でそこまでの反応はなかった。それに瑠衣先輩のこの急降下現象は見慣れているのか氷怜先輩の咎めるような声が聞こえてきた。
「瑠衣落ち着け、怖がらせんな」
「その握ってるやつも壊さないでね。赤羽に調べさせるから……」
すでにメキッと耳元で音がしたけど、瑠衣先輩はそれを暮刃先輩に投げたようだ。赤羽さん盗聴機も調べられるなんて多才な。
唯の驚いた声がする。
「瑠衣先輩がこんな風に怒るなんて珍しい……」
「こいつの地雷踏んだんだよ。喧嘩は良いけどお前らにこうやって付け入るのは嫌なんだろ」
つまり威嚇的な心情なんだろうか。
秋ともつれながらも目が合って2人で瑠衣先輩を宥めるように撫でる。
李恩に連れ去られたってこんな風に怒ったりしなかったのに、いやでも李恩は先輩達何故か割と気に入ってたんだ。今やチームにも出入りしてるし。
瑠衣先輩の中ではキツネさんは敵と判断されたんだろう。確かに得体が知れない度は李恩なんて比じゃなかった。
それに瑠衣先輩は気に入ったものを大事にするって暮刃先輩と氷怜先輩が教えてくれたことがある。じゃなきゃ恋人じゃない俺たちまで一緒にシェアハウスなんてしないのだ。
「それは、なんだか……瑠衣先輩おれも!」
何故か唯が嬉しそうに俺たちの所に飛び込んできた。怖がるどころか秋と俺の間にすっぽり入って、下から覗き込む瑠衣先輩の青い目がギラギラと揺れてアテのない怒りが見えるのに唯がそれに負けないキラッキラの目で微笑む。
「……ナニ笑ってんの唯ちん~」
「だって、おれたちの事大切だから怒ってるのすごい伝わるから嬉しくて~」
ほわっと唯が笑ったら瑠衣先輩も毒気を抜かれたらしい。俺も秋も釣られて笑っちゃって、そしたらもういつも通りだ。
「俺のせいで怒らせちゃいましたけど、おれも嬉しくなっちゃいましたよ」
「瑠衣先輩のこういうとこ俺結構好きっすよ」
俺も秋もそう言えば驚いた顔から次第に少し呆れたような笑みが返ってきた。いつもの大爆笑じゃなくて、口元を少しだけ上げる瑠衣先輩は本当に美人だ。
「バカだねぇ~」
「ええ?!」
最後はいつもの悪戯な笑み。
瑠衣先輩はこうでなくては。
びっくりして唯が思わず氷怜先輩に抱きついたのを横目に秋も俺も固まってその黒い機械を見つめる。
「キツネさん、いつのまに……」
きっと近くに寄ってきた時、だと思うけど全く分からない。もちろん盗聴機なんて初対面だ。こんなに小さいのか。
「そんなものから匂い感じます……?すごー……」
秋の驚きの言葉は瑠衣先輩の顔を見て声が途切れる。不機嫌、どころではなくなっている。
「キツネが、なにー……?」
「あ、あー瑠衣先輩?顔、顔が」
瑠衣先輩のあからさまな不機嫌は盗聴機を発見した時にはすでにブチギレているのではないかと思ったくらいの変化だった。静かに空気が重くなっていく。
「えっと、そのストーカーだと思ってた人、ヘッドイーター?……がキツネって呼んでって……アカウント名もキツネの絵文字だったので」
「へー、そーなんだぁ……」
悪いのが俺と言うより盗聴機を仕込んだ犯人なので俺たちに嫌悪を向けないよう口調はかろうじて伸ばしている感じだけど、隠しきれてない。
名前を出したらさらに黒いオーラが。なんだ、盗聴機はそんなにトリガーなのか。
「か、可愛い顔がもったいないですよ~!」
秋も瑠衣先輩の機嫌急降下をいち早く察知して思わず瑠衣先輩の両頬を手で挟む。俺もすぐに足元にしゃがんでもう一度謝った。
「ごめんなさい瑠衣先輩。そんなに嫌な思いをさせてしまうとは……」
「ンー……」
いきなり秋と俺をぐいっと引っ張って瑠衣先輩の腕の中にすっぽり。意味が分からず固まっていると聞いたこともない低い声が響く。
「……うぜぇ」
そんな声についにフリーズ。
氷怜先輩や暮刃先輩は盗聴機にピクリと眉を動かした程度でそこまでの反応はなかった。それに瑠衣先輩のこの急降下現象は見慣れているのか氷怜先輩の咎めるような声が聞こえてきた。
「瑠衣落ち着け、怖がらせんな」
「その握ってるやつも壊さないでね。赤羽に調べさせるから……」
すでにメキッと耳元で音がしたけど、瑠衣先輩はそれを暮刃先輩に投げたようだ。赤羽さん盗聴機も調べられるなんて多才な。
唯の驚いた声がする。
「瑠衣先輩がこんな風に怒るなんて珍しい……」
「こいつの地雷踏んだんだよ。喧嘩は良いけどお前らにこうやって付け入るのは嫌なんだろ」
つまり威嚇的な心情なんだろうか。
秋ともつれながらも目が合って2人で瑠衣先輩を宥めるように撫でる。
李恩に連れ去られたってこんな風に怒ったりしなかったのに、いやでも李恩は先輩達何故か割と気に入ってたんだ。今やチームにも出入りしてるし。
瑠衣先輩の中ではキツネさんは敵と判断されたんだろう。確かに得体が知れない度は李恩なんて比じゃなかった。
それに瑠衣先輩は気に入ったものを大事にするって暮刃先輩と氷怜先輩が教えてくれたことがある。じゃなきゃ恋人じゃない俺たちまで一緒にシェアハウスなんてしないのだ。
「それは、なんだか……瑠衣先輩おれも!」
何故か唯が嬉しそうに俺たちの所に飛び込んできた。怖がるどころか秋と俺の間にすっぽり入って、下から覗き込む瑠衣先輩の青い目がギラギラと揺れてアテのない怒りが見えるのに唯がそれに負けないキラッキラの目で微笑む。
「……ナニ笑ってんの唯ちん~」
「だって、おれたちの事大切だから怒ってるのすごい伝わるから嬉しくて~」
ほわっと唯が笑ったら瑠衣先輩も毒気を抜かれたらしい。俺も秋も釣られて笑っちゃって、そしたらもういつも通りだ。
「俺のせいで怒らせちゃいましたけど、おれも嬉しくなっちゃいましたよ」
「瑠衣先輩のこういうとこ俺結構好きっすよ」
俺も秋もそう言えば驚いた顔から次第に少し呆れたような笑みが返ってきた。いつもの大爆笑じゃなくて、口元を少しだけ上げる瑠衣先輩は本当に美人だ。
「バカだねぇ~」
「ええ?!」
最後はいつもの悪戯な笑み。
瑠衣先輩はこうでなくては。
23
お気に入りに追加
1,388
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる