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christmas!!!
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真っ黒な髪と白い肌と細い体に高身長。
纏うものは氷怜先輩と同じでも、こうも似ない人間がいるから不思議だ。
「あんた、やっぱ1番分かりやすいな」
俺の表情にいち早く気づき鼻で笑う。まさか今日会うなんて思っても見なかったから一瞬口ごもる。でも、この口でしっかり話して理解して貰いたい人間が目の前にいる。黙るわけには行かない。
「お久しぶりです……榊さん」
「へえ、嬉しいね。俺の名前を覚えた訳か」
そう言いつつ対して嬉しそうじゃない。
いまいち掴めないこの男は本当に何が目的なのだろう。
暮刃先輩の腕が腰に回る。気付いたら立ちはだかっていた数人はすでに地面の上に横たわっている。
振動すら来なかった。
「……あんたも頭脳だけだなんて噂出回ってるけど、当てにならないもんだな」
「光栄だよ」
暮刃先輩は榊李恩を見ると、綺麗に微笑む。
暮刃先輩の笑顔って万能だ。威嚇も牽制も許容も感謝も、全部笑顔ひとつで表せる。
「この子に何か用でも?」
「いいね、王子様らしい顔するんだな」
質問には答えず相変わらず挑発するような口ぶりに俺はあえて口の端をあげて心を落ち着ける。唯がいつも笑うから。
それでも、その瞳孔から俺の心を見すかすように話し始めた。
「俺も俺だが、あんたも大概だな。笑ってるけど顔に出てる、要注意、早く帰れ、絶対言い負かす……この辺りか?」
あろうことか笑いだした。
演技力が無いのは承知の上だけど、相変わらず調子が狂う話し方だ。唯が崩されちゃうのも何となくわかる。
強いて言うなら見定めるような目が気になるところだ。
「最初はあんたかな」
「何……と言うか前言ったことを訂正して……いや、訂正しなくても良いけど理解して欲しいんです俺は」
唯は講義すると言っていたが話はおそらくこのままだと平行線をたどる。俺が最初にこの人に会ったのなら、第1段階として聞いてもらう体制を作りたい。
片眉をあげた榊が口を開いた。
「理解?」
「この人達のことを悪く言ったから」
「ああ……」
さして気にも止めていない様子でとりあえず返事をしたように見える。なんだ、なにか違和感がある。
「あなたの見ている先輩達が本当のように、俺らが見ている先輩達も本当。つまり、今のところこの言い争いに決着は無いんです……だからまずは」
「わかった」
「え?」
まさか肯定が来るとは思わなくて聞き返してしまった。暮刃先輩を見上げても首をかしげるだけだ。
「お前らの王子様を悪く言うつもりはもうねえよ。第1、悪く言ったところで傷つくのがお姫様どころか、王子はご満悦だ。これほど無意味なことはないな」
「…………結局それは先輩達を傷つけたいって事?」
「さあな」
「あんまり、俺たちに敵意も無いよね」
「それはどうかな」
暮刃先輩が聞いても返事は大して変わらず、鼻で笑うだけだ。
全く意味がわからない。
何しに来たんだ本当に。早く帰ったら良いのに。
そう考えたらまた眉間に力が入ってしまった。すると目を三日月にした蛇が笑い出す。
「くっ……お前本当にわかりやすい。なあ、優夜」
俺の名前に反応したように、腰の腕に力が入った。
纏うものは氷怜先輩と同じでも、こうも似ない人間がいるから不思議だ。
「あんた、やっぱ1番分かりやすいな」
俺の表情にいち早く気づき鼻で笑う。まさか今日会うなんて思っても見なかったから一瞬口ごもる。でも、この口でしっかり話して理解して貰いたい人間が目の前にいる。黙るわけには行かない。
「お久しぶりです……榊さん」
「へえ、嬉しいね。俺の名前を覚えた訳か」
そう言いつつ対して嬉しそうじゃない。
いまいち掴めないこの男は本当に何が目的なのだろう。
暮刃先輩の腕が腰に回る。気付いたら立ちはだかっていた数人はすでに地面の上に横たわっている。
振動すら来なかった。
「……あんたも頭脳だけだなんて噂出回ってるけど、当てにならないもんだな」
「光栄だよ」
暮刃先輩は榊李恩を見ると、綺麗に微笑む。
暮刃先輩の笑顔って万能だ。威嚇も牽制も許容も感謝も、全部笑顔ひとつで表せる。
「この子に何か用でも?」
「いいね、王子様らしい顔するんだな」
質問には答えず相変わらず挑発するような口ぶりに俺はあえて口の端をあげて心を落ち着ける。唯がいつも笑うから。
それでも、その瞳孔から俺の心を見すかすように話し始めた。
「俺も俺だが、あんたも大概だな。笑ってるけど顔に出てる、要注意、早く帰れ、絶対言い負かす……この辺りか?」
あろうことか笑いだした。
演技力が無いのは承知の上だけど、相変わらず調子が狂う話し方だ。唯が崩されちゃうのも何となくわかる。
強いて言うなら見定めるような目が気になるところだ。
「最初はあんたかな」
「何……と言うか前言ったことを訂正して……いや、訂正しなくても良いけど理解して欲しいんです俺は」
唯は講義すると言っていたが話はおそらくこのままだと平行線をたどる。俺が最初にこの人に会ったのなら、第1段階として聞いてもらう体制を作りたい。
片眉をあげた榊が口を開いた。
「理解?」
「この人達のことを悪く言ったから」
「ああ……」
さして気にも止めていない様子でとりあえず返事をしたように見える。なんだ、なにか違和感がある。
「あなたの見ている先輩達が本当のように、俺らが見ている先輩達も本当。つまり、今のところこの言い争いに決着は無いんです……だからまずは」
「わかった」
「え?」
まさか肯定が来るとは思わなくて聞き返してしまった。暮刃先輩を見上げても首をかしげるだけだ。
「お前らの王子様を悪く言うつもりはもうねえよ。第1、悪く言ったところで傷つくのがお姫様どころか、王子はご満悦だ。これほど無意味なことはないな」
「…………結局それは先輩達を傷つけたいって事?」
「さあな」
「あんまり、俺たちに敵意も無いよね」
「それはどうかな」
暮刃先輩が聞いても返事は大して変わらず、鼻で笑うだけだ。
全く意味がわからない。
何しに来たんだ本当に。早く帰ったら良いのに。
そう考えたらまた眉間に力が入ってしまった。すると目を三日月にした蛇が笑い出す。
「くっ……お前本当にわかりやすい。なあ、優夜」
俺の名前に反応したように、腰の腕に力が入った。
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