sweet!!

仔犬

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christmas!!!

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突然親しげに名前を呼ぶがそんな事はもうどうでもいい。もはや隠すこともやめて、いつも通りの顔にする。唯と秋がいたら迷わず眉間を注意されるんだろうな。


「なんですか……」


不機嫌な俺の表情にふっと笑って、あろうことか今まで見せたことない笑顔でこう言った。


「いいクリスマスを」

「…………はあ?」


ついに頭でもおかしくなったのか声を上げて笑い出す。

世界で一番似合わなそうな言葉を下げてひらりと踵を返していく。やはりその真っ黒な背中はあまりにもクリスマスには似合わない。


「え……」

「なにしに来たんだろうね。あいつは」


暮刃先輩はさして気にした様子はない。だけど、俺は今日という日を邪魔された相手に良いクリスマスをなんて言われてしまった。

俯く俺に気付いた暮刃先輩は片手だけだった腰に両手を回して包み込む。


「優?」

「なんか……」



たぶん、負けた。
あの陰険そうな目は何かしらの理由があってこの訳のわからない会話をされたのだ。そう思ったらムッとしてきた。

それでも負けたなんて言ったら余計に悔しくなりそうだから暮刃先輩を見上げる。いつも通り綺麗で優しいグレーの瞳。


「まあ、勝手に名前を呼ばれたのは嫌だったかな」


気にするところはそこで良いのかと思ったが、先輩達にしてみるともともと榊をそこまで気にしていない節がある。なんだか、それもじれったい。

俺にしては珍しく甘えた声が出た。


「暮刃先輩……」

「ん?」

「あたま、撫でて下さい」
 


暮刃先輩の綺麗な顔が笑顔のまま固まり、数秒後。手だけが頭を撫で始める。
 
悔しいから甘えられない素直さの糧にしようなんて、
自分がこんなに子供っぽい思考をした事に驚く。

さらりと心地いい手が数回行ったり来たり。

そういえば、今朝は唯がヘアセットをしてくれた。その時に俺の髪をサラサラだと褒め、撫でたくなる髪ってかなりの武器になるんだよって何故か熱弁し始めたから、そういうのは女の子に言いなよって話したのを思い出した。
今なら触り心地のいい髪質でよかったと思えるから唯講座は侮れない。

全く違うことを考えていた俺を他所に暮刃先輩は何かを堪えるようにゆっくり視線を横にずらし、気まずそうに言った。


「本当に送り狼になりそうなんだけど……」

「というかいつでも持ち帰れるじゃないですか」


すらすら出る言葉に煽るも煽らないも無い。

本当のことだし、そもそもこの人になら全部を許せる。このモードが何かなんてわかってる、唯のブチ切れと同じだ。唯と秋に帰ったら絶対話を聞いてもらうと決め、このもやもやに一旦蓋をして暮刃先輩にすり寄った。

年々唯に似ていく自分がいて笑ってしまう。きっと秋だってそうだと思いながら、頭を撫でる手が頰に来るので口付ける。



「優、ストップ……」



ため息混じりだが、暮刃先輩的には俺が甘えてくる事が嬉しいらしい。それでも俺がムカついたのも分かっているからか、しなやかな眉を下げて困った顔をした。


 
 「俺は榊に感謝してるくらいだよ」



その顔が可愛くても
それだけは許せそうにない。



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