閻魔の息子

亜坊 ひろ

文字の大きさ
上 下
9 / 29
第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】9

しおりを挟む

社内―

 「輪廻様が参りました」

 「うむ、後はよい下がっておれ」

 重苦しい空気の中、閻魔が先にやさしい口調で切り出した。

 「眠れたか?」

 「…。いや、寝てない、友人に会って来た」

 「そうか…。どうだ、気持ちは整ったか?」

 「…。そんな急に気持ちを切り替えろって、無理に決まってるし…。なるようにしかならないだろ。何とかやってみるさ」

 「うむ、そうだな」

 手前味噌だがプレッシャーには強い息子だと日々感心に思う閻魔であった。

 「誰かおらぬか!」

 「お呼びですかな」

 「爺か、輪廻の出発の準備じゃ、衛兵に天城門を開けるように指示してくれ。帰生穴には誰も近づかせない様に」

 「かしこまりました」

 輪廻が緊張してると思い、爺が輪廻の耳元で囁く。

 「緊張せずとも大丈夫ですよ、輪廻様なら立派にこの命はやり遂げられますです。人間の女子にも中々可愛い~のがいるみたいで…あ~うらやましい~この、このぉ」

 ふざけた話のカド爺に閻魔の一喝が飛ぶ。

 「なーにをごちゃごちゃ言っとる。はよせんか!」

 「ありゃ、はい、ただいまー。」

 「よいか輪廻、人間界にはこちらの案内人がいてお前の身体となる人間を手配してもらっている。まず人間界に着いたら案内人の指示を仰ぎ、人間の姿で行動するのだ」

 「人間の身体!?じゃこの身体は?」

 「ここに残す、でなければ帰ってこられぬからな」

 「残す?残すって…」

 「人間になると、一時的ではあるが天魔人としての能力も弱まってしまう、霊波動が極端に落ちている時に人間の身体を傷つけるとお前の魂も傷つき衰退していく、しいてはお前自身が死んでしまう恐れがあるから、くれぐれも無茶な行動は控える様に」

 「ああ…。わかった」

 素直に受け入れたような返事だったが内心は。

 “な、無茶苦茶不安な事を聞かせやがってー。”

 すると、閻魔がなにやらヘンテコな機械を奥から出してきた。マイクのようなものを持って本体のダイヤルを回してる。

 「あー、あー。聞こえるか、沙羅、聞こえたら返事を」

 「“は~い、大王様。沙羅で~す。”」

 「うむ、輪廻の身体は見つかったか?」

 「“え~と、どうなのよ!あんたた達!見つかったの?どうなのよ!は~い、只今こちらに出稼いでいます死神どもを締め上げて、上等な身体をあたっていま~す。どんなのでもいいから、早く~”」

 「聞こえてるって…」

続く

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...