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婚約パーティ
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――パチリ
目を開けると、木目の低い天井が見えた。
なけなしの薄い毛布に包まって、直に床に寝ていた体が痛い。
段々と明るくなっていく様子で今は朝な事が分かる。
リューイはぼーっとする頭で、状況確認を始める。
……そうだ。転移で連れて来られたんだ。
父親達と話し合った次の日の夜、夕飯を食べ終わり、スチュアートが片付けに部屋を出て行った後、勇者であるリョウコが突然部屋に現れてリューイだけを連れて転移したのである。
異変に気が付いたサスケの必死な顔を見たのを最後に、簡素な小屋に連れて行かれたようだ。
……サスケ大丈夫だろうか? 責任を感じてないと良いが。スチュアートのお仕置きは免れないかもしれないが。
まぁ、勇者のチートっぷりが凄いから今回はしょうがないだろう。
寒気がしてぶるりと震える。
……せっかく微熱になったのに、絶対熱上がったわ。
昨日ぶつぶつ言っていたリョウコの話と現状を整理すると、どうやらリョウコとシルバリウスの婚約パーティに参加させる為に、強制的に連れて来られたらしい。
逃げても良かったが、どこに連れて来られたか不明だし、長い間会っていないシルバリウスを連れて帰る良い機会だと思い、留まったものの体調は絶不調っぽい。
まぁ、寝巻きでベッドもない床に毛布1枚で転がされていればそりゃ悪化するだろう。
……何もする事ないし、もう一眠りするか。
壁に背を預けたまま、毛布にくるまり寝た。
――バンッ! ツカツカ
「あんた図太いわね! よくこんな所で寝られるわね」
リョウコの登場である。
「いや、やる事ないし。……トイレ行きたいんだけど」
「はぁー!? トイレはそっち」
小屋を出て律儀にトイレに案内される。
……逃げられるとかは考えないのだろうか? まぁ、逃げるつもりはないから良いが。
用を足して戻ると、リョウコが踏ん反り返っている。
よく見れば白いシンプルなドレスを着ていた。
「あんたのせいで、いつまで経ってもシルが靡かないのよ」
「……そりゃ、人の婚約者奪っておいて、好かれようなんておかど違いだろ。仲が冷め切っているならまだしも、俺たちは愛し合っていたからなぁ」
「その口調……。あんた性格変わってない?」
リョウコが若干引いている。
「あ”? あんたに言われたくないね」
……シルバリウスが居ない半年で、俺も成長したんです! ※(注意)擦れたとも言う。
「はっ、本性を表したわね! やっぱりシルには相応しくないわ! 情けをかけたのが間違いだったわ。私の婚約パーティでしっかり婚約破棄を皆の前で宣言してもらうからね」
「それはあんたが勝手に言っている事だろ? シルバリウスはフォゼッタ王国の国民で、俺と正式に婚約を交わしている。婚約は一種の契約だ。双方合意の元ちゃんとした手続きを行わないと簡単に破棄は出来ない」
「え? そうなの?」
キョトンとするリョウコ。
……やっぱり相当な馬鹿か? まぁ、まだ若そうだしその辺りは知らないか。
「そうだ」
「でも、同人誌とかにあったのは婚約破棄を告げれば、それで終わって断罪されていたのに……」
「そりゃ、同人誌だからだろ。同人誌は印刷コストなどの関係でページ数を抑える事もあるから、その辺りはカットされたんだろ」
お互い見つめ合う。
「……」
「……」
「……!? あなたやっぱり転生者ね!」
「それが?」
俺からすれば今更感満載である。
大切な人にはどう思われるか怖くて打ち明けられていないが、リョウコみたいなどうでも良い存在1人にバレるのは問題ない。
この半年でぶりっ子も猫被りも上手くなっているし、誤魔化す事も可能だろう。
「もう生意気ね!」
「そりゃ、どうも。まぁ、だからそろそろシルバリウスは返してもらうぞ」
「はぁ? 嫌に決まっているでしょ! それに返して貰うってシルはあなたの物じゃないのよ」
「……それはあんたに言われたくない言葉だな」
「もう手続きとかよく分かんないけど、合意が有れば良いんでしょ? あとそれを認める権力者がいれば完璧ね。さっさと婚約パーティに行くわよ」
勇者に手を掴まれ、再び転移した。
――草原の中にある石で出来た舞台が見える。
ここは、勇者が召喚された古代召喚陣のある石舞台だ。
ゲームでは勇者が召喚された始まりの地であり、最終決戦の場でもある。
ゲームの最終決戦では、この広場前にローワン王国の騎士達がズラリと並び勇者が聖剣を掲げ、勇者パーティの仲間と共に大量の魔物を倒すというエンディングで登場する舞台である。
いわばゲームファンであれば憧れの聖地でもある。
直接目に出来て嬉しい気持ちはあるものの、わざわざ8/31ここで婚約パーティを開催するという何ともフラグっぽい展開に、俺自身は微妙な気持ちだ。
今俺は少し離れた木陰に座っている。
正直体はしんどいし、俺は寝巻きで婚約パーティ? に出るのだろうか?
そんなとりとめもないことを考えていたら、俺を置いて1人で転移していた勇者が勇者パーティを引き連れて来た。
久しぶりに見たシルバリウス。
距離が離れているため、まだ俺の存在には気が付いていない。
白いスーツっぽい衣装を着たシルバリウスはすっごく格好良かった。
ただ、中のクラバット? がボーリューミー過ぎてちょっと浮いているように見えるし、頬は痩け全体的に窶れているし、闇落ちしているんじゃない? という位目が昏い。
奇しくも、ゲームの序盤に出てくるシルバリウスとそっくりだった。
目を開けると、木目の低い天井が見えた。
なけなしの薄い毛布に包まって、直に床に寝ていた体が痛い。
段々と明るくなっていく様子で今は朝な事が分かる。
リューイはぼーっとする頭で、状況確認を始める。
……そうだ。転移で連れて来られたんだ。
父親達と話し合った次の日の夜、夕飯を食べ終わり、スチュアートが片付けに部屋を出て行った後、勇者であるリョウコが突然部屋に現れてリューイだけを連れて転移したのである。
異変に気が付いたサスケの必死な顔を見たのを最後に、簡素な小屋に連れて行かれたようだ。
……サスケ大丈夫だろうか? 責任を感じてないと良いが。スチュアートのお仕置きは免れないかもしれないが。
まぁ、勇者のチートっぷりが凄いから今回はしょうがないだろう。
寒気がしてぶるりと震える。
……せっかく微熱になったのに、絶対熱上がったわ。
昨日ぶつぶつ言っていたリョウコの話と現状を整理すると、どうやらリョウコとシルバリウスの婚約パーティに参加させる為に、強制的に連れて来られたらしい。
逃げても良かったが、どこに連れて来られたか不明だし、長い間会っていないシルバリウスを連れて帰る良い機会だと思い、留まったものの体調は絶不調っぽい。
まぁ、寝巻きでベッドもない床に毛布1枚で転がされていればそりゃ悪化するだろう。
……何もする事ないし、もう一眠りするか。
壁に背を預けたまま、毛布にくるまり寝た。
――バンッ! ツカツカ
「あんた図太いわね! よくこんな所で寝られるわね」
リョウコの登場である。
「いや、やる事ないし。……トイレ行きたいんだけど」
「はぁー!? トイレはそっち」
小屋を出て律儀にトイレに案内される。
……逃げられるとかは考えないのだろうか? まぁ、逃げるつもりはないから良いが。
用を足して戻ると、リョウコが踏ん反り返っている。
よく見れば白いシンプルなドレスを着ていた。
「あんたのせいで、いつまで経ってもシルが靡かないのよ」
「……そりゃ、人の婚約者奪っておいて、好かれようなんておかど違いだろ。仲が冷め切っているならまだしも、俺たちは愛し合っていたからなぁ」
「その口調……。あんた性格変わってない?」
リョウコが若干引いている。
「あ”? あんたに言われたくないね」
……シルバリウスが居ない半年で、俺も成長したんです! ※(注意)擦れたとも言う。
「はっ、本性を表したわね! やっぱりシルには相応しくないわ! 情けをかけたのが間違いだったわ。私の婚約パーティでしっかり婚約破棄を皆の前で宣言してもらうからね」
「それはあんたが勝手に言っている事だろ? シルバリウスはフォゼッタ王国の国民で、俺と正式に婚約を交わしている。婚約は一種の契約だ。双方合意の元ちゃんとした手続きを行わないと簡単に破棄は出来ない」
「え? そうなの?」
キョトンとするリョウコ。
……やっぱり相当な馬鹿か? まぁ、まだ若そうだしその辺りは知らないか。
「そうだ」
「でも、同人誌とかにあったのは婚約破棄を告げれば、それで終わって断罪されていたのに……」
「そりゃ、同人誌だからだろ。同人誌は印刷コストなどの関係でページ数を抑える事もあるから、その辺りはカットされたんだろ」
お互い見つめ合う。
「……」
「……」
「……!? あなたやっぱり転生者ね!」
「それが?」
俺からすれば今更感満載である。
大切な人にはどう思われるか怖くて打ち明けられていないが、リョウコみたいなどうでも良い存在1人にバレるのは問題ない。
この半年でぶりっ子も猫被りも上手くなっているし、誤魔化す事も可能だろう。
「もう生意気ね!」
「そりゃ、どうも。まぁ、だからそろそろシルバリウスは返してもらうぞ」
「はぁ? 嫌に決まっているでしょ! それに返して貰うってシルはあなたの物じゃないのよ」
「……それはあんたに言われたくない言葉だな」
「もう手続きとかよく分かんないけど、合意が有れば良いんでしょ? あとそれを認める権力者がいれば完璧ね。さっさと婚約パーティに行くわよ」
勇者に手を掴まれ、再び転移した。
――草原の中にある石で出来た舞台が見える。
ここは、勇者が召喚された古代召喚陣のある石舞台だ。
ゲームでは勇者が召喚された始まりの地であり、最終決戦の場でもある。
ゲームの最終決戦では、この広場前にローワン王国の騎士達がズラリと並び勇者が聖剣を掲げ、勇者パーティの仲間と共に大量の魔物を倒すというエンディングで登場する舞台である。
いわばゲームファンであれば憧れの聖地でもある。
直接目に出来て嬉しい気持ちはあるものの、わざわざ8/31ここで婚約パーティを開催するという何ともフラグっぽい展開に、俺自身は微妙な気持ちだ。
今俺は少し離れた木陰に座っている。
正直体はしんどいし、俺は寝巻きで婚約パーティ? に出るのだろうか?
そんなとりとめもないことを考えていたら、俺を置いて1人で転移していた勇者が勇者パーティを引き連れて来た。
久しぶりに見たシルバリウス。
距離が離れているため、まだ俺の存在には気が付いていない。
白いスーツっぽい衣装を着たシルバリウスはすっごく格好良かった。
ただ、中のクラバット? がボーリューミー過ぎてちょっと浮いているように見えるし、頬は痩け全体的に窶れているし、闇落ちしているんじゃない? という位目が昏い。
奇しくも、ゲームの序盤に出てくるシルバリウスとそっくりだった。
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