我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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後日談 サミュエル編 奥手な2人の誘惑大作戦!!

4  遠距離恋愛(4)

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「休みってないのかしら?」

 私は休憩の合間に、ソファーに沈み込んだ。
 シャルとルナは5日に1日交代でお休みを取っているそうだが、私はこの数か月両手で数えられるほどしかお休みが貰えていない。

「申し訳ございません。王女殿下の演奏会が終わりましたらお休みを取ることができますので!!」
 
 シャルが手帳を見ながらあやまってくれた。

「ごめんなさい。シャルがあやまる必要はないわ」

「いえいえ、王女殿下こそあやまらないで下さい」

 今日はルナはお休みでシャルが1人で私の予定を管理してくれていた。
 だから、いつもより少しだけ休憩が長かった。
 ルナがいると、休憩は時間通りだ。

「愚痴っただけよ」

「ふふふ。愚痴で解消するならお聞きいたしますよ」

「あ~~シャルは優しいわ……」

 優しいと言って私はサミュエル先生の笑顔を思い浮かべてしまった。

(ああ、サミュエル先生のあの優しい笑顔がみたいわ……)

「はぁ~~」と大きな溜息をついた途端に、ノックが聞こえた。
 入室を許可すると実父が部屋に入ってきた。

「ベル~~~~!! コンラッド君からの報告書にサミュエル君からの手紙が入っていたよ」

「え?!」

 実父の言葉で、私の疲れは吹き飛んでしまった。

「見せて下さい!!」

「もちろんだよ」

 私は実父の手から奪うようにサミュエル先生の手紙を受け取った。
 お待ちきれない想いで封を切ると、手紙を読んだ。

 私は嬉しくて泣きそうになってしまった。





『ベルナデッド様

 一日も早くあなたの元へ戻ります。
 愛しています。

 サミュエル』






 内容は短いし、いつも美しいサミュエル先生の字がどこか崩れていた。
 きっと、ずっと書類仕事をして全ての仕事が終わった後に書いてくれたのだろう。
 しかも、『愛している』の愛の字にインクだまりが出来ていた。

 きっとすごく悩んでくれたのだろう。

 とても短い手紙だったが、私には充分すぎるほどにサミュエル先生の想いが伝わってきた。

(私も愛しています)

「あ、そうそう。サミュエル君たちね~~すっごく頑張ってるみたいだよ?」

「え?」
 
 私は手紙を持ったまま実父を見た。

「もしかしたら、1年はかからないかもしれないよ?」

「そうなのですか?!」

 思いがけない報告に私は嬉しくて弾んだ声を上げた。
 当初の予定では1年以上はかかると言われていたのだ。
 だから早くサミュエル先生に会えると思うとじっとしていられなかった。

 私は手紙を抱きしめると、ソファーから立ち上がった。

「どこに行くんだい?」

「手紙を机にしまってきます。
 父上!! ありがとうございました!!」

「いえいえ~~~」

 私は軽い足取りで、自室に戻ると手紙を引き出しにしまって空を見上げた。

(弱音を吐いているヒマはないわね。私もやらなきゃ)

 そうして私はまた政務に励んだのだった。

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