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後日談 サミュエル編 奥手な2人の誘惑大作戦!!
5 遠距離恋愛を乗り越えて
しおりを挟む「ゴホッゴホッ!! え?! サミュエル先生が戻られるのですか? しかも明後日?!」
今日は、母と実父と一緒にお茶の時間を楽しんでいた。
久しぶりに3人でお茶の時間。
私がのんびりとお茶を飲んでいると急に実父が「ベル♪ 明後日、サミュエル君が戻って来るよ」との爆弾発言をしたおかげで、お茶でむせてしまったのだ。
「ああ。そうだよ♪」
「あ、もしかして一時的の戻られるのですか?」
サミュエル先生が戻るのは1年後くらいだと聞いている。
まだ半年も経っていない。
だから私は今回一時的に帰国すると思ったのだ。
だが、母と実父はやけに、にこにこしながら答えた。
「それが違うの!!」
「なんと!! 向こうでの用意は全て済ませたそうだよ」
「ええ゛??? でも、まだ半年しか経っていませんが……」
「うん。だから凄いよね~~」
実父が「うんうん」感心したように頷いた。
「私も報告を貰った時は驚いたわ!! でも、ふふふ。サミュエルとコンラッドならあり合えるかもとも思ったわ」
母もどこか得意気に語っていて、慌てているのは私だけという状況だった。
「さては、お2人とも結構前から知っていましたね?」
私が恨みがまし視線を向けると、実父が肩眉を上げた。
「ごめんね。ベル……でも、サミュエル君が戻って来るならベルも一緒に休めた方がいいと思って、とにかく仕事を終わらせることに専念してもらったんだ」
「う……確かに……サミュエル先生が戻られると思うと、仕事が手につかなかったかもしれませんが……それで、どのくらいのお休みが頂けるのですか?」
「5日よ」
母がにっこりと笑った。
「5日も!! 嬉しい!!」
その日の私は浮かれてしまって、ルナに笑顔で叱られたのだった。
+++
とうとうサミュエル先生が戻って来る日だ!
私は港までサミュエル先生を迎えに行くことにした。
今日の天気は今にも雨が降り出しそうな曇り空だった。
港についてそわそわとサミュエル先生の乗った船を待っていた。
「あ!! 見えた!!」
船が港に近づくにつれて私の心は高鳴った。
ガタガタ。
ついに船からの足場が出された。
そして……見つけた!!
背の高い姿勢が美しい2人組がこちらに向かって歩いていた。
サミュエル先生たちだ!!
サミュエル先生も私を見つけてくれたようで笑顔で手を振ってくれた。
私は嬉しいはずなのに、動けなくて手を振り返すことがやっとだった。
だんだんサミュエル先生がとの距離が近くなり、サミュエル先生が私の前に立った。
「ベルナデット様、ただいま戻りました」
「おかえりなさい。サミュエル先生!!」
サミュエル先生はかなり疲れた顔をしていたが表情はとても明るかった。
私は久しぶりにサミュエル先生に会えて嬉しいのに恥ずかしいという自分でも自分がよくわからない状況だった。
「ただいま……戻りました……」
サミュエル先生も真っ赤な顔で首に手を当てていた。
「……おかえりない……」
急に顔が熱くなるのを感じた。
きっと私も真っ赤になっていただろう。
ずっと会いたかった人なのにいざ会うと、恥ずかしいし、どんな態度を取ればいいのかわからない。
会ったら、話したいことやしたことがたくさんあったはずなのに、半年ものサミュエル先生への思いで私の頭は完全に混乱してしまっていた。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい」
(これさっき言った~~~~!!)
私たちが何度も『おかえり』と『ただいま』を繰り返していると、サミュエル先生の後ろから不機嫌そうなコンラッド君の声が聞こえて来た。
「はぁ~一体、何度ただいまと告げればいいのです?
失礼しますよ。
ベルナデット様。本日、イリュジオン国より帰国致しました。
爵位返上。学長交代。その他全てを滞りなく終わらせたことをご報告致します」
「コンラッド君!! サミュエル先生を支えてくれてありがとう!!
お疲れ様」
私が笑顔で労うと、コンラッド君は穏やかに頬んだ後、またいつもの表情になった。
「はい。とても疲れたので、私は先に戻ります。
それでは、また」
コンラッド君の去ろうとする背中にサミュエル先生が声をかけた。
「ああ、ありがとうコンラッド!! お疲れ」
「サミュエルも、今日はとりあえず休めよ」
(あら? サミュエル先生とコンラッド君……凄く仲良くなってるわ)
きっとこの半年。
本当に苦労したのだろう。
2人の間になんだか深い絆が見えて私は羨ましくなった。
コンラッド君はサミュエル先生に一言告げるとスタスタと歩いて、コンラッド君を迎えに来た馬車に乗り込んで行ってしまった。
私は、サミュエル先生をチラリと見た。
するとサミュエル先生と目がった。
サミュエル先生が頭を掻きながら、照れたように微笑んだ。
「馬車でお話しませんか? 離れていた間のベルナデット様のお話を聞かせて下さい」
「私もサミュエル先生のお話、聞きたいです!!」
こうして私たち馬車に向かったのだった。
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