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【サミュエル】(学院発展ルート)

16 選択した未来

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私は、女王になると言ってしまった。

そう。

言ってしまったのだ……。




一度、深呼吸をしてもいいだろうか?

ついでに、頭を抱えてもいいだろうか?

ついでに現実逃避をするために、超絶技巧のヴァイオリン曲を弾いてきてもいいだろうか?


ココハドコ?

ワタシハダレ?


あまりの荷が重すぎる決断に、私は、真っ白の灰になってしまった。

「ところで、ベルとサミュはキスはしてるんでしょ?」

真っ白に燃え尽きている私に、再び女王陛下の爆弾が落とされた。

(お母様!! な、なんてことを聞くんですかぁ~?!)

「キ、キス……あいさつ程度でしょうか」

隣を見ると、女王陛下のご質問を無視する訳にもいかないサミュエル先生が真っ赤な顔で、母の質問に答えていた。

(ああ!! サミュエル先生になんて質問を!! 私の母が破廉恥ですみません!!)

私は穴に入りたい程の羞恥心を感じた。

「え? そうなのかい?? 困ったなぁ~」

すると実父が訳のわからないことを言ってきた。

「困るとは?」

私は思わず実父を不審な目で見てしまった。

「いやね。お披露目式では、たくさんの人の前で愛を誓わなければいけないんだ。
数代前までは、初夜をみんなに披露していたんだけど……。
それはちょっと……ってことになって、キスの披露になったんだ。
最低でも30分以上は必須だな。まぁ大体1時間くらいみんなの前でキスすることになるけど、キスしたことなくて大丈夫かな?」

(ん? 聞き間違えかな? 今、とてつもなく恐ろしい単語が出なかった?)

「初夜披露ではなくてよかったでしょ?」

お母様は「ふふふん」と得意げに言った。

「初……初夜披露?」

サミュエル先生が真っ赤な顔で呟くように言った。

「いや、それはなくなったから。代わりに1時間くらいのキス披露でいいからね」

実父が慌てて言った。


ーー……1時間のキス披露。


もう一度、深呼吸をしてもいいだろうか?

ついでに、頭を抱えてもいいだろうか?

ついでに現実逃避をするために、超絶技巧のヴァイオリン曲を弾いてきてもいいだろうか?


ココハドコ?

ワタシハダレ?

ダレカタスケテ。


「あの、一応お伺い致しますが、冗談ってことは?」

私は、母と実父の顔を見た。


「ふふふふ。……冗談じゃないわ」

お母様は笑ってない目で見つめた後、真剣な顔で私を見た。

「はははは。……冗談なら…どれほどよかったか」

実父が遠い目をした。

「何が悲しくて、可愛い娘のキスシーンを延々と見せられなきゃいけないんだ!!
本当なら、嫁になんて出したくないんだ!!
ああ!! 見たくない!! 見たくない!! 見たくな~~い!!」

すると母が実父を見た後、私とサミュエル先生を見た。

「ということで本当よ? 理解した?」

どうやら、やっぱりこれは事実のようだ。
冗談ではないらしい。
私が愕然としていると、サミュエル先生に両手を握られて、見つめられた。

視界の端に両親がソロリソロリと隣の部屋に移動している姿が見えた。
気が付くと、部屋には私とサミュエル先生の2人だけになっていた。

「あの……ベルナデット様。
本当に私が相手でもいいのでしょうか?」

「え?」

サミュエル先生が不安そうな顔で私を見つめていた。

「みんなの前で、キ、キスをして愛を示す相手が私でもいいのですか?」

サミュエル先生の手が震えていた。

(ああ、私は肝心なことが見えていなかったのね)




そうだ。

怒涛の展開ですっかり忘れていたが、これは私とサミュエル先生が今後、共に歩むという誓いなのだ。
『女王打診』に『キス披露』と爆弾発言ばかりで、大切なことを見落としていた。

私は小さく息を吐くとサミュエル先生を見つめた。

「私が共に歩みたいと思っていた相手は昔からあなただけです」

「え? 昔から?」

私は自分の言葉に今更ながら驚いた。

「そう……昔から」

(ああ、そうか……私ずっと、サミュエル先生のことが好きだったんだ)

こんな状況に追い詰められるまで、私は自分の心に気づけなかったのだ。
私はサミュエル先生を見つめた。

「昔からずっとあなたのことが好きです」

するとサミュエル先生に抱きしめれた。

「……夢みたいだ……ずっと、私だけが……あなたのことを……好きだと……」

サミュエル先生は泣いてた。
私もいつの間にか泣いていた。


涙を流しながら、サミュエル先生と見つめ合った。


サミュエル先生の顔が段々と近づいてきた。


私は自然に目を閉じた。
すると唇に体温を感じた。
とても柔らかい感触に私たちは夢中になっていた。



ーー……これが、初めてのキスだった。


初めてのキスは涙で少しだけしょっぱいと思った。


+++


「ふふふ。まさか、あの小さかったサミュと娘のベルがねぇ」

ブリジットは隣室で、微笑ましげに目を細めた。
彼女にとって娘との思い出より、サミュエルとの思い出の方が多い。
ブリジットにとって、サミュエルは唯一の生徒だった。

「人生何があるかわからないね」

トリスタンがブリジットの肩を優しく抱き寄せた。

「ふふふ。そうね。まさか、サミュがベルにヴァイオリンを教えてくれることになるなんて」

ブリジットが嬉しそうに笑うとトリスタンが目を細めた。

「驚くのはまだ早いよ」

「え?」

「ベルの演奏は本当に君の音色にそっくりなんだ」

「ふふふ。もうそれは何度も聞いたわ。早く聴きたいわ。あの2人の音色が。
それにあの2人を見てると昔を思い出すわ」

ブリジットが笑うとトリスタンがブリジットにキスをした。

「懐かしいね」

「そうね。サミュはあなたほど強引じゃないみたいだけど」

「そう? あの子だって、表に出してないだけだよ。いざとなったら私なんて太刀打ちできないくらい強引な気がするな~彼」

「ふふふ。そうかもね……確かにそうかもね」

そう言って2人はまたキスをした。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





【 在りし日のブリジットとトリスタン エピソード出現 】
 Episode CLOSE(・・・coming soon)


【 在りし日のブリジットとサミュエル エピソード出現 】
 Episode CLOSE(・・・coming soon)







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