上 下
88 / 145
【サミュエル】(学院発展ルート)

17 新たな試練

しおりを挟む



 とうとう、私はサミュエル先生と念願だった両想いになることが出来ました!!
 ありがとうございます! これも皆様のおかげです!!

 あ~でも、これはもしかして夢?

 いきなり、王女だと言われ、サミュエル先生と両想いになって、初めてのキスをして……。

ーー……盛りすぎっ!!!

 私が心労で倒れたらどうするの??

 夢だって言われる方が納得する展開じゃない??

 私が少しだけ現実逃避をしていると、トントントンと控え目にノックされて、母と実父が部屋に入ってきた。どうやら気をきかしてくれたらしい。すると一緒にコンラッド君も入ってきた。

「どうして、コンラッド君が……」

私が呟くと、コンラッド君はいきなり私の前に膝まづくと私の手を取って口付けをした。

「次の女王陛下になられることを決意されたとお伺い致しました。ご決断をわたくたち共、臣下一同は心より嬉しく思います」

「え? え? コンラッド君どうしたの?」

私がうろたえていると、コンラッド君が今までと全く違う様子で話を始めた。

「きっとあなたは王女殿下になられることを拒否なさると思っておりましたので、これからゆっくりとあなたを口説き落とす予定だったのですが……残念です。ですが、これからは、あなたを一番近くで支える臣下として仕えます」

(口説……臣下……仕える……え? どういうこと)

混乱だらけの私は、やっとのことで口を開いた。

「……説明してくれませんか?」

 すると、実父がコンラッド君の横に来ると説明をしてくれた。

「彼はディール侯爵家の嫡男で、将来はベルの夫か、宰相、いずれかの地位に着く予定だったんだ」

ーー……なんですって?

(私の夫か、宰相?? 何……そのおかしな2択!!)

 私がコンラッド君を見るとコンラッド君は美しく微笑んだ。

「宰相として今後は、あなたを支えます……ですが……女王陛下の配偶者が1人とは決まってはいませんからね……私との子供も作る気はありませんか? ベルナデット王女殿下?」

(は? え? 子供?? コンラッド君との?)

 私がコンラッド君の言葉を理解せずに固まっていると、先程まで状況を見守っていたサミュエル先生の背中が見えた。

「そのお心は臣下としては素晴らしいですが、その心配は杞憂です。あなたとの子供を作ることが出来ない程、私が彼女のお相手を致しますので!」

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・?

(あれ? なんだか今、凄いセリフを聞いたような?)

 私が石像のごとく固まっていると、コンラッド君の後ろから母のハートマークを乱舞したような浮かれた声が聞こえた。

「キャ~~~~!! ねぇ!! トリスタン!! 今の聞いた?! サミュったら、情熱的~♪」

「……ああ、聞いたよ……聞いちゃったよ……はは……頼もしいね」

 狂気乱舞して盛り上がっている母とは対照的に実父はこの世の終わりかというほど悲壮感に溢れた顔をしていた。

「そうですか……残念です。では、お2人にこれを」

 コンラッド君は私たちの前の楽譜を差し出した。

「これは?」

私の前にかばうように立っていたサミュエル先生がコンラッド君に尋ねた。

「今度の生誕祭で披露する楽曲です」

「拝見します」

サミュエル先生が楽譜を受け取ると、私は後ろからサミュエル先生の手元の楽譜を覗き込んだ。


(『我が最愛を想う』? 初めて見る曲だわ……うっ!! 変調記号がこんなに……)

「かなり難易度の高い曲ですが、完成したらさぞ美しい音楽になるのでしょうね」

サミュエル先生が楽譜を見ながら幸せそうに笑った。

(そうだった!! サミュエル先生は曲が難しければ、難しい程燃えるんだった!!)

この楽譜を見てげんなりした私と対照的にサミュエル先生の瞳は輝いていた。

「ふふふ。サミュならきっとそう言ってくれると思ったわ」

すると母が嬉しそうに笑った。

「もしかして、これを作曲されたのは、ブリジット女王陛下ですか?」

「ふふふ。そうよ。ちなみにサミュに最後に教えた曲も私が作曲した曲よ」

「え?! あの曲が!! ということは……ベルナデット様との最後の曲は先生の曲だったということなんですね……」

 サミュエル先生が母のことを、『ブリジット女王陛下』と言うのも忘れて驚いて声を上げた。

「あの曲が……お母様の曲?」

 私も思わず声を上げてしまった。
 まだ音楽芸術学院に入る前、サミュエル先生との個人レッスンの最後の曲になった思い出の曲。あのころの私にはとてつもなく難曲だった。それでも、必死であの曲を弾けるように練習した。もしかしたら、あの曲じゃなかったら、私は途中で挫折していたかもしれない。でも、あの耳から聞こえてくるとこまでも優しく美しい戦慄に支えられながらやり切ったのだ。

私たちが唖然としていると、母が真剣な顔をして私とサミュエル先生を見つめた。

「いい、2人ともよく聞いて。
今、この国は音楽で世界を牽引しているの。
だから例え女王や王配といえども、楽器が弾けないと話にならないわ。
それこそ、何かあったら演奏する必要があるから楽器の演奏は一生続くわ。
正直、この国の音楽のレベルはかなり高い。
そんな中、もし2人がこの話を受けてくれるなら、皆の前で演奏を披露し続けなければならないわ。
どうサミュ? 逃げ出さずにできる?」

母がニヤリと悪そうな笑みを浮かべてサミュエル先生を見た。

(ふぇ~~! 音楽で世界を牽引?! その国の女王?! 荷が重い~~)

私はその話を聞いて正直身体が震えていたが、サミュエル先生はゆっくりと母の顔を見ると、美しく笑った。

「先生、誰に向かって言っているのです。
あなたに直接教えを受けた私が逃げるなど有り得ません」

(サミュエル先生……音楽家モードになってる~~~!!)

私がサミュエル先生もモデルチェンジに震えていると、母と実父が声を出して笑い出した。

「ははは。本当に、サミュは普段は謙虚なくせに、どうして音楽のことになるとそんなに強気なの?ふふふ。相変わらず君は本当に面白いわ」

「いや~頼もしいな~さすが、ベルのヴァイオリンをここまで育てた先生だな~」


コンラッド君は驚いて目を見開いていた。

「陛下の前でそんな発言……凄いな」

というわけで、私たちはこの難曲に挑むことになったのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった... その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!? たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく ここが... 乙女ゲームの世界だと これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

寝取られ予定のお飾り妻に転生しましたが、なぜか溺愛されています

あさひな
恋愛
☆感謝☆ホットランキング一位獲得!応援いただきましてありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)  シングルマザーとして息子を育て上げた私だが、乙女ゲームをしている最中にベランダからの転落事故により異世界転生を果たす。 転生先は、たった今ゲームをしていたキャラクターの「エステル・スターク」男爵令嬢だったが……その配役はヒロインから寝取られるお飾り妻!? しかもエステルは魔力を持たない『能無し』のため、家族から虐げられてきた幸薄モブ令嬢という、何とも不遇なキャラクターだった。 おまけに夫役の攻略対象者「クロード・ランブルグ」辺境伯様は、膨大な魔力を宿した『悪魔の瞳』を持つ、恐ろしいと噂される人物。 魔獣討伐という特殊任務のため、魔獣の返り血を浴びたその様相から『紅の閣下』と異名を持つ御方に、お見合い初日で結婚をすることになった。 離縁に備えて味方を作ろうと考えた私は、使用人達と仲良くなるためにクロード様の目を盗んで仕事を手伝うことに。前世の家事スキルと趣味の庭いじりスキルを披露すると、あっという間に使用人達と仲良くなることに成功! ……そこまでは良かったのだが、そのことがクロード様にバレてしまう。 でも、クロード様は怒る所か私に興味を持ち始め、離縁どころかその距離はどんどん縮まって行って……? 「エステル、貴女を愛している」 「今日も可愛いよ」 あれ? 私、お飾り妻で捨てられる予定じゃありませんでしたっけ? 乙女ゲームの配役から大きく変わる運命に翻弄されながらも、私は次第に溺愛してくるクロード様と恋に落ちてしまう。 そんな私に一通の手紙が届くが、その内容は散々エステルを虐めて来た妹『マーガレット』からのものだった。 忍び寄る毒家族とのしがらみを断ち切ろうと奮起するがーー。 ※こちらの物語はざまぁ有りの展開ですが、ハピエン予定となっておりますので安心して読んでいただけると幸いです。よろしくお願いいたします!

悪役令嬢と攻略対象(推し)の娘に転生しました。~前世の記憶で夫婦円満に導きたいと思います~

木山楽斗
恋愛
頭を打った私は、自分がかつてプレイした乙女ゲームの悪役令嬢であるアルティリアと攻略対象の一人で私の推しだったファルクスの子供に転生したことを理解した。 少し驚いたが、私は自分の境遇を受け入れた。例え前世の記憶が蘇っても、お父様とお母様のことが大好きだったからだ。 二人は、娘である私のことを愛してくれている。それを改めて理解しながらも、私はとある問題を考えることになった。 お父様とお母様の関係は、良好とは言い難い。政略結婚だった二人は、どこかぎこちない関係を築いていたのである。 仕方ない部分もあるとは思ったが、それでも私は二人に笑い合って欲しいと思った。 それは私のわがままだ。でも、私になら許されると思っている。だって、私は二人の娘なのだから。 こうして、私は二人になんとか仲良くなってもらうことを決意した。 幸いにも私には前世の記憶がある。乙女ゲームで描かれた二人の知識はきっと私を助けてくれるはずだ。 ※2022/10/18 改題しました。(旧題:乙女ゲームの推しと悪役令嬢の娘に転生しました。) ※2022/10/20 改題しました。(旧題:悪役令嬢と推しの娘に転生しました。)

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

処理中です...