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【サミュエル】(学院発展ルート)
17 新たな試練
しおりを挟むとうとう、私はサミュエル先生と念願だった両想いになることが出来ました!!
ありがとうございます! これも皆様のおかげです!!
あ~でも、これはもしかして夢?
いきなり、王女だと言われ、サミュエル先生と両想いになって、初めてのキスをして……。
ーー……盛りすぎっ!!!
私が心労で倒れたらどうするの??
夢だって言われる方が納得する展開じゃない??
私が少しだけ現実逃避をしていると、トントントンと控え目にノックされて、母と実父が部屋に入ってきた。どうやら気をきかしてくれたらしい。すると一緒にコンラッド君も入ってきた。
「どうして、コンラッド君が……」
私が呟くと、コンラッド君はいきなり私の前に膝まづくと私の手を取って口付けをした。
「次の女王陛下になられることを決意されたとお伺い致しました。ご決断をわたくたち共、臣下一同は心より嬉しく思います」
「え? え? コンラッド君どうしたの?」
私がうろたえていると、コンラッド君が今までと全く違う様子で話を始めた。
「きっとあなたは王女殿下になられることを拒否なさると思っておりましたので、これからゆっくりとあなたを口説き落とす予定だったのですが……残念です。ですが、これからは、あなたを一番近くで支える臣下として仕えます」
(口説……臣下……仕える……え? どういうこと)
混乱だらけの私は、やっとのことで口を開いた。
「……説明してくれませんか?」
すると、実父がコンラッド君の横に来ると説明をしてくれた。
「彼はディール侯爵家の嫡男で、将来はベルの夫か、宰相、いずれかの地位に着く予定だったんだ」
ーー……なんですって?
(私の夫か、宰相?? 何……そのおかしな2択!!)
私がコンラッド君を見るとコンラッド君は美しく微笑んだ。
「宰相として今後は、あなたを支えます……ですが……女王陛下の配偶者が1人とは決まってはいませんからね……私との子供も作る気はありませんか? ベルナデット王女殿下?」
(は? え? 子供?? コンラッド君との?)
私がコンラッド君の言葉を理解せずに固まっていると、先程まで状況を見守っていたサミュエル先生の背中が見えた。
「そのお心は臣下としては素晴らしいですが、その心配は杞憂です。あなたとの子供を作ることが出来ない程、私が彼女のお相手を致しますので!」
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・?
(あれ? なんだか今、凄いセリフを聞いたような?)
私が石像のごとく固まっていると、コンラッド君の後ろから母のハートマークを乱舞したような浮かれた声が聞こえた。
「キャ~~~~!! ねぇ!! トリスタン!! 今の聞いた?! サミュったら、情熱的~♪」
「……ああ、聞いたよ……聞いちゃったよ……はは……頼もしいね」
狂気乱舞して盛り上がっている母とは対照的に実父はこの世の終わりかというほど悲壮感に溢れた顔をしていた。
「そうですか……残念です。では、お2人にこれを」
コンラッド君は私たちの前の楽譜を差し出した。
「これは?」
私の前にかばうように立っていたサミュエル先生がコンラッド君に尋ねた。
「今度の生誕祭で披露する楽曲です」
「拝見します」
サミュエル先生が楽譜を受け取ると、私は後ろからサミュエル先生の手元の楽譜を覗き込んだ。
(『我が最愛を想う』? 初めて見る曲だわ……うっ!! 変調記号がこんなに……)
「かなり難易度の高い曲ですが、完成したらさぞ美しい音楽になるのでしょうね」
サミュエル先生が楽譜を見ながら幸せそうに笑った。
(そうだった!! サミュエル先生は曲が難しければ、難しい程燃えるんだった!!)
この楽譜を見てげんなりした私と対照的にサミュエル先生の瞳は輝いていた。
「ふふふ。サミュならきっとそう言ってくれると思ったわ」
すると母が嬉しそうに笑った。
「もしかして、これを作曲されたのは、ブリジット女王陛下ですか?」
「ふふふ。そうよ。ちなみにサミュに最後に教えた曲も私が作曲した曲よ」
「え?! あの曲が!! ということは……ベルナデット様との最後の曲は先生の曲だったということなんですね……」
サミュエル先生が母のことを、『ブリジット女王陛下』と言うのも忘れて驚いて声を上げた。
「あの曲が……お母様の曲?」
私も思わず声を上げてしまった。
まだ音楽芸術学院に入る前、サミュエル先生との個人レッスンの最後の曲になった思い出の曲。あのころの私にはとてつもなく難曲だった。それでも、必死であの曲を弾けるように練習した。もしかしたら、あの曲じゃなかったら、私は途中で挫折していたかもしれない。でも、あの耳から聞こえてくるとこまでも優しく美しい戦慄に支えられながらやり切ったのだ。
私たちが唖然としていると、母が真剣な顔をして私とサミュエル先生を見つめた。
「いい、2人ともよく聞いて。
今、この国は音楽で世界を牽引しているの。
だから例え女王や王配といえども、楽器が弾けないと話にならないわ。
それこそ、何かあったら演奏する必要があるから楽器の演奏は一生続くわ。
正直、この国の音楽のレベルはかなり高い。
そんな中、もし2人がこの話を受けてくれるなら、皆の前で演奏を披露し続けなければならないわ。
どうサミュ? 逃げ出さずにできる?」
母がニヤリと悪そうな笑みを浮かべてサミュエル先生を見た。
(ふぇ~~! 音楽で世界を牽引?! その国の女王?! 荷が重い~~)
私はその話を聞いて正直身体が震えていたが、サミュエル先生はゆっくりと母の顔を見ると、美しく笑った。
「先生、誰に向かって言っているのです。
あなたに直接教えを受けた私が逃げるなど有り得ません」
(サミュエル先生……音楽家モードになってる~~~!!)
私がサミュエル先生もモデルチェンジに震えていると、母と実父が声を出して笑い出した。
「ははは。本当に、サミュは普段は謙虚なくせに、どうして音楽のことになるとそんなに強気なの?ふふふ。相変わらず君は本当に面白いわ」
「いや~頼もしいな~さすが、ベルのヴァイオリンをここまで育てた先生だな~」
コンラッド君は驚いて目を見開いていた。
「陛下の前でそんな発言……凄いな」
というわけで、私たちはこの難曲に挑むことになったのだった。
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