我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
81 / 145
【サミュエル】(学院発展ルート)

10 旅のしおり~蒸気船乗り場にて~

しおりを挟む
10 旅のしおり~蒸気船乗り場にて~



公爵邸にお世話になった次の朝。
私たちはセドリック様にお礼を言って、蒸気船乗り場に向かった。

「わぁ~広い!!」

ここが湖だとは知っているが、まるで海のように大きく、船付き場も大きな蒸気船や貨物船など多くの船が止まっていた。

「凄いわ!!これが蒸気船?!大きい!!」

私がつい、船を見てはしゃいでいるとサミュエル先生が優しい顔で笑った。

「ふふふ。そうですね。凄いですね」
「あの・・はしゃいでしまって申し訳ありません」

私があやまるとサミュエル先生が私の頭に手を置いて優しく撫でてくれた。

「ベルナデット様が可愛くて抱きしめたくなります」
「え?」

私が驚いて顔を上げると愛し気に目を細めるサミュエル先生と目が合って、真っ赤になってしまった。

(ああ~抱きしめて下さい!!って言ってもいいのかしら?)

言おうかどうしようか悩んでいる間にサミュエル先生の手が離れた。

「ベルナデット様。蒸気船の切符を引き換えに行ってきます。
ここでお待ち頂けますか?」
「はい」

サミュエル先生はにっこりと笑うと人込みに入っていった。
私が言われた通り、待っていると聞き覚えのある声が聞こえた。

「もしかして、ベルナデット様?!」

声のする方を見ると、コンラッド君が立っていた。

「あら?コンラッド君?!」

意外な人物と出会って、私は驚いてしまった。

「まさか、お1人ですか?」
「1人じゃないわ。今、切符を引きかえに行かれてるからここで待っているのよ。
でも本当に偶然ね~、驚いたわ!」

するとコンラッド君が大げさに溜息をついて眉間に皺を寄せた。

「はぁ~。ベルナデット様!!
呑気に『偶然ね~』なんて言ってる場合じゃないでしょ?
どこまでおめでたい頭なのです?
それに、あなたがお1人で待つなんて何を考えているのですか?
こういう場合は待つのではなく、ついていくというのが正しい自衛方法ですよ?!」

コンラッド君は呆れた様子で私の手を取った。

「こんな人込みではぐれたら大変ですので、手を離さないで下さい」

不愛想な言い方だが、コンラッド君なりに心配していることがわかって私は嬉しくなった。

(私のこと嫌いなはずなのに・・・優しいな)

私は小さく笑うと、コンラッド君の手を握り返した。

「ありがとう」
「いえ。面倒事を避けるために仕方なくですので!!
誤解しないで下さい」
「ふふふ。わかってるよ。
ところで、コンラッド君はここで何をしているの?」

私はコンラッド君の顔を覗き込みながら尋ねた。

「ああ。実は、隣国の女王陛下の生誕祭に招待されておりまして、この蒸気船に乗って隣国に行く予定です。ところでベルナデット様はなぜこちらへ?
誰かの見送りですか?」

私は驚いて目を大きく開けた。

「私も隣国の女王陛下の生誕祭に招待されているの!!」
「え?では、ベルナデット様はこれから隣国に行かれるのですか?」
「ええ。そうよ」

するとコンラッド君が怖い顔をして近づいてきた。

「ではなぜお1人なのです?
護衛は?お供の者はいないのですか?!
不用心すぎませんか?」

私はまるで言い訳をするように慌てて口を開いた。

「だからね、今、ちょっと蒸気船の切符を交換に行って下さっているの」
「では、どなたと・・」
「ベルナデット様!!大丈夫ですか?」

コンラッド君の言葉を遮るようにサミュエル先生がスッと私とコンラッド君の間に入った。

「学長?!」
「コンラッド君?!」

コンラッド君が驚いて私の方を見た。

「まさか・・学長とお2人で?」
「え、ええ。そうなの」

するとコンラッド君が深い溜息をついて、サミュエル先生を鋭い目つきで睨んだ。

「失礼ですが、お2人はご婚約をされているのですか?」
「え?婚約?!」
「婚約なんて!!そんな・・」

コンラッド君の言葉に私とサミュエル先生が慌てた。
私たちを見てコンラッド君が「ふ~ん」というと大げさに肩を上げて両手を上に向けた。

「婚約もしていない男女がお2人でご旅行など、例えどんな理由があろうとも世間は許しません。
それとも学長はベルナデット様に悪い噂が立って社交界での立場を悪くされてもいいとおしゃるのですか?
それでなくともベルナデット様は殿下との婚約を解消されたばかりです。
ベルナデット様の不貞が理由だと勘ぐられないとも限りません。
それでも良いのですか?」
「それは・・・」

(国王陛下と王妃様に2人でと言われたから2人で来たけれど・・・サミュエル先生を不名誉な噂に巻き込むのは申し訳ないわ)

実は今回の私の護衛は剣の実力者でもあるサミュエル先生がお父様から依頼されていたのだった。
それに私たちは基本的に1人行動だ。普段から執事や侍女などは同行しない。
だから今回もサミュエル先生が護衛を兼任すれば問題ないと思っていたのだ。
現にお父様は2人で行くことを許可している。

私が俯いて考えていると、コンラッド君がふと優しげに微笑んだ。

「仕方ありません。私がお2人に同行致します」
「え?」
「いや、そこまで迷惑はかけられない。それにこんな急に蒸気船の切符など準備できないだろう?」

サミュエル先生が首を振りながら断った。

「学長。私は今回、隣国の女王陛下の生誕祭に呼ばれています。
ですから、お2人と同じ船に乗るのです。
お2人と行動を共にするなど容易いことです」
「コンラッド君も招待されているのですか?」
「はい」

サミュエル先生が「ん~~」と悩んだ。

「何を考えることがあるのですか?
現に今こうしてあなたがいない間、私がベルナデット様をお守り致しました。
まさか、学長たるお方が邪な考えで彼女を危険にされすような決断はなさいませんよね・・」

コンラッド君がそれはもう美しく微笑んでみせた。

「・・・ではお願いします」

サミュエル先生が小声で呟くように声を搾りだした。

「ええ。もちろんです♪」

こうして、コンラッド君も同行することになったのだった。




しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...