我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
82 / 145
【サミュエル】(学院発展ルート)

11 旅のしおり~蒸気船にて(1)~

しおりを挟む



(ここは本当に船の中なの?)

この船は海ではなく湖の上をゆく汽船なので、あまり揺れを感じなかった。
初めてこんな大きな船に乗った私は大きな豪華客船内部に興奮していた。

「ふふふ。後で船の中を歩いてみましょうか?」
「え?サミュエル先生もご一緒して下さるのですか?」

(え?え?船内デート?!サミュエル先生と?)

私が思わず弾んだ声で、尋ねるとサミュエル先生がふんわりと笑いながら答えてくれた。

「はい。むしろ、私はベルナデット様の護衛も兼ねているですから、部屋を出る時は遠慮せずに必ずお声をおかけください」
「あ・・そうですよね。護衛ですね」

私が肩を落としていると、私たちの様子を見ていたコンラッド君が小声で何かを呟いた。

「(なるほど・・。まだ付け入る隙は十分ありそうだな)」
「コンラッド君何か言った?」

私が尋ねるとコンラッド君は驚いて、少し不機嫌そうな顔で言った。

「別になんでもありません。
それより、船には貴族だけしか入れないエリアや、立ち入り禁止エリアなど細かなルールがあります。
心配ですので、私も同行します」
「え?ルール?それは・・確かに心配だわ。
ありがとう!」
「いえ」

そして、コンラッド君がチラリとサミュエル先生を見た。

「学長、お疲れでしたら、私が彼女の護衛を交代しましょうか?
私も一応、剣には覚えがあります。
あなたが以前、3位に入賞した剣術大会で昨年優勝しておりますので」
「え?!コンラッド君、学院でもトップなのに、オレオル学園の騎士科の生徒も出場する大会で優勝?!努力の賜物ね!!凄いわ!!」

私がコンラッド君を褒めるとコンラッド君は顔を真っ赤にして顔を逸らした。

「べ、別に、あなたに褒められたくて努力しているわけではありませんが、一応称賛は受け取って置くことにします」
「ふふふ」
「不気味な顔で笑うのはやめて下さい!!」
「不気味・・・・」

私がショックを受けていると、コンラッド君がサミュエル先生に向き直った。

「ということで、学長はお休みされていて構いませんよ?」

私はコンラッド君の言葉にはっとして、サミュエル先生を見た。
先生は確かに疲れているように見える。

無理もない。
今回の遠征、サミュエル先生は私以上に、スケジュール調整が大変そうだった。

陛下からお話があった日から、ずっと学園に泊まり込んでいたと聞いた。
それに昨日も私は早めに休ませてもらったが、サミュエル先生は、セドリック様と遅くまでお話をされていたようだった。

私がサミュエル先生を見上げて、「休んで下さい」と言おうとした瞬間にサミュエル先生が口を開いた。

「お気遣い頂きありがとうございます。
実は以前、船に乗った時はずっと寝ていたので、まだ私も船についてよく知らないのです。
後学のためにもご一緒致します。
あなたこそ休んでいて構いませんよ?」

サミュエル先生が美しく笑うと、コンラッド君がまるで、大人びた笑みを浮かべた。

「いえ。それでしたら尚更、私は何度も乗っておりますので、ご案内致します」
「では、3人で行きましょう。サミュエル先生、コンラッド君、よろしくお願いいたします」

私が頭を下げると、2人と目が合った。

「(はい・・・まぁ、とりあえずは3人でも)」

コンラッド君が小声で呟いた。

「(2人にはさせませんが)」

サミュエル先生も何かを呟いたが、船の汽笛の音でよく聞こえなかった。
それから私たちは、船に用意されている客室に向かうことにした。





部屋は3人とも貴族専用の1等客室だったので必然的に近くだった。

荷物を置くと、私たちは3人で船の中を散策した。
船の中は、貴族エリアと平民エリアに別れていた。
お互いが気を遣うことなく自由に過ごせるようにということと、防犯上の理由だ。

入口も違えば、船に乗る時の待機場所も違ったが、中も壁があり、全く行き来はできない。
普通に船の旅を楽しむ分には、特に問題なさそうに見えた。

それから私たちは船の甲板に出た。
すると強い風が吹いてきた。

「風が強いですね」
「ええ。この時間は追い風になるので、船の速度もあがります。
危険ですので、一度戻りましょう」

コンラッド君の言葉で、私たちは甲板を後にした。

(あ~外見たかったな~~)

それから、散策を終えて部屋に戻った。
私たちは少し部屋で休憩することにした。

(はぁ~、何もしてないのに疲れたわ・・・ベット気持ちいい)

船の適度な揺れと、ふかふかのベットに横になると私はいつの間にか眠ってしまっていた。





ーーコンコンコン


控え目なノックの音で目を覚ました。

(あれ?私寝てた?)

急いで、鏡を見ておかしなところがないかをチェックして、扉を開けた。

「もしかして、お休みでしたか?」

扉を開けるとサミュエル先生が立っていた。
私は、髪や顔を押さえた。

「寝ていたのわかりますか?」
「ふふふ、大丈夫、綺麗ですよ、ベルナデット様」

(・・・・・綺麗///!!)


私は顔が赤くなるのを誤魔化すようにサミュエル先生に話しかけた。

「あの・・もしかして夕食ですか?」
「いえ。風が収まったようなので、行ってみますか?」
「え?」

私は驚いてサミュエル先生を見上げた。
サミュエル先生を優しく微笑んでくれた。

「甲板、行きたかったのでしょ?」

サミュエル先生はどうして私の思っていることがわかってしまうのだろう。
それが嬉しくて、思わずサミュエル先生の腕を取った。

「はい!」

サミュエル先生は少し驚いたが、私の手が離れないように腕を曲げて私の手を迎え入れてくれた。

「では行きましょうか?」
「はい」

そして、私たちは甲板に向かった。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

処理中です...