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2回目のダンジョン
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「きゃははは、死ね死ね」「まったく、図体ばかり肥えた的ですね」
ミーアはウルフに騎乗し曲刀と逆刃刀を二刀流しながら敵に飛び掛かる。正面が駄目なら側面の壁を駆け抜け場合によっては頭上を取って攻撃する。エメリアは後方から援護射撃を行う。
「ぬうっ。これぞ我が誉れなり。かかってこい」「まったく、各自好き勝手ですね《石壁》」
バーゼルは前面に出て騎乗馬からハルバードを豪快に振り大柄な敵を優先的に始末する。シェリルは各所に石壁を構築し徐々に前線を押し上げる土台を建築する。
「《惑わす使い魔》状態異常で止めなさい」「《勇ましき人形》ゴーレムども、あばれろー」
本来は後衛にいるべきラグリンネとエトナまで召喚魔術で戦闘に加わる。個々が連携し群がるモンスターどもを駆逐していく。僕はというと。
「ぎゃあああ」
「よっと」
パーティの合間合間を通るように上位個体と射撃武器を持った奴らの始末を優先的に行う。しばらくののち殲滅が終わった。
「各自第二波に備えて。後続が来ないようなら玄室の扉を一つ一つ開けて一掃するよ」
『了解』
オットーさんらは弓兵が多い。なのでシェリルの生み出した石壁の裏側から射撃攻撃を行う体制を取る。しばらすると前方の階段から無数の足音が聞こえてくる。
「ミーアエメリアエトナは右側、バーゼルシェリルラグリンネは左側を担当。上位個体らは僕が始末する」
迅速に隊列を組み石壁に隠れながら敵を待つ。今度はオークが中心のようだ。階段より先に進ませては数で負ける。
「《草の茨》」
階段から登ってきた前列を草の茨で足止めする。これで後方が動きにくくなった。各自担当を任された範囲を虱潰しのように攻撃していく。モンスターの断末魔の声が通路中に響き渡り終わりなく続く。第二波はそこそこだった。
各自武器が血で濡れ切れ味が落ち矢も無くなり術の触媒も不足、このままだと撤退やむなしだが予備の武器などを空間から取り出し渡す。血で濡れた武器は回収する。各自武器装備し矢筒を腰に巻き付け持久の水薬を飲み次の戦いに備える。
どうやら階段からは打ち止めのようで玄室の扉を一つ一つ開き中の敵を一掃しようとして。
「我らに実戦の経験を積む機会を頂けませんか」
オットーさんが訪ねてきた。
ふむぅ、名実共に僕がここで一番戦達者なのは後方からでも分かったようでおんぶにだっこでは申し訳ないと判断したようだ。幸いにして一部屋ずつ対応させればいいだろう。後続も来ないようだし回復の奇跡が使える神官が二名もこちらにいるわけだし。
「じゃ、一部屋ずつね」
万が一に備えて隊列を組み楔を抜くのは僕がやる。どうやら半分以上の部屋に敵は潜んでいたようで楔を抜くと雪崩のように外に出てくる。
「各自連携を取りつつ敵を確実に倒せ」
オットーさんの指示に従い囲い込んで一体一体確実に倒す。派手さはないがそれでいい。大技一発で全部倒そうと考えるよりかはね。
玄室の全ての扉を開けて敵を始末したら階段を進む。事前の説明では1階下りれば終わりのはずだ。待ち受けていたのはしかるべき相手だった。
「ボーン・ジェネラルが一体だけ?。いや、明らかに外見が異なるぞ。そもそもあの装備はなんだ」
そう、装備が明らかに異なっている。その手に持つ剣、あれは光属性の物だ。アンデットモンスターが最も忌み嫌う光や聖属性の武器を有しているという時点で通常の個体とは一線を越える。間違いなく特殊個体だ。
それはこちらをゆっくりと視認する。これは危険だと判断しイヴラフグラをここで抜く。
「がぁぁあああ」
その両手剣を真上に振り上げながら急速に接近する特殊個体を僕は剣で止める。
『ピュアブリング!』
「迂闊にこの剣に触れないで。この剣光属性なのに《報復》など呪いを有している」
金間全員が心配するが打ち合ってそれを実感する。これは不味い、下手に傷つけられたら治療不可能だ。特殊個体だけありステータスがやばい。他の仲間じゃ耐えられないだろう。
「手を出さないで」
敵もこちらの剣が尋常でないことを理解したのか一度距離を取る。互いに睨み合う。あの相手に持久戦は無謀だ。即死させる必要がある。
「我を食らえ《富と咎を成すもの》」
刀身全体から迸る禍々しき輝きが際限なく増加していく。発動中は魔力を無制限に食らう代わりに限界を突破する秘術、それを発動する。
勝負は瞬きほどに一瞬であった。
ビキィン。
相手の振りかぶった攻撃よりも早く敵を消滅させる。その体が消滅し白銀に輝く両手剣だけが残った。奥の祭壇に視線を向けるがマナストーンは今回は1個しかないらしい。戦利品はこの両手剣か。
それを僕は回収しようとして、
「それを譲っていただけませんか?」
オットーさんらは聞いてきた。
「なんで」
「我らの依頼主側で『強力な両手剣が欲しい』屈強な魔剣士がおられるのです。これならば満足していただけるでしょう。マナストーンはそちらの方に譲りますので」
ふーん、審査だけではなく依頼主側ねぇ。ま、こっちにはこれを必要としている味方はいないから別にいいか。出所は秘密にする、その約束をしておく。とはいえ、このままでは呪いが強すぎて身が持たないだろう。
「《解呪》」
一度装備しバッドステータスを引き起こす呪いを全部消しておく。うん、これで問題ないだろう。一応重要な品物であるように箱に入れておく。
「それがどこでどう使われようと僕に責任はないからね」
「了解しました」
オットーさんらはそれを渡され責任を果たすつもりだ。そこまで僕は関われない。ゆっくりとダンジョンを出てお日様の温かさを噛みしめる。外に出ると粗末な簡易テントがいくつも並んでいた。
「君たちは」
「ひいっ。許して下さい。なんでもしますから」
先に逃げ出した偽エリートどもから見捨てられてしまい簡易テントで野営していたのだろう。ここまで腐ってたのか奴ら。一縷の望みを頼り先に潜った他のパーティが帰還するのを待っていたようだ。
物資の山もそのまま残っていた。
「おかえりなさいませ」
待機組が出迎える。
「あいつらどうしたの」
ダンジョンから出てきた奴らは全員絶望の表情を浮かべ物資を放り投げて逃げ帰ったそうだ。一応止めたが無視し他の連中を投げ捨てたのだと。弱者の立場からご機嫌取りをしていたけどいざこうなるとさっさと切り捨てるのは世の常識なのだろう。自分達が一番可愛いのだ。
予定より短時間で終わったので飯を食おう。簡易的に調理台を出して食材を空間から次々取り出す。それに付いては誰も聞こうとしなかった。
とはいえ、ここで出せるのは芋のシチューと穀物粥と茹でたソーセージぐらいだ。野営でこれだけでもご馳走なようで全員が唾をのむ。
「さ、食べよ」
『ほ、本当に、いいの?』
見捨てられた者達からすれば有り得ない食事、僕は宣言する
「僕たちは今『全員が同じパーティ』だ。衣食住を与えるのはリーダーの僕の仕事。遠慮せずにガツガツ食え」
『い、いただき、ますぅ』
彼らの多くが涙を浮かべながらガツガツ食う。水浴びすらあまりなかったようで地面に大穴を掘り『水を生み出す袋』でガボガボ水を入れて熱した石を入れて各自湯浴びをさせる。終わったら真新しい服を与えることにした。彼らはかなり下の方に置かれていたようだ。奴隷ではないが社会の最下層の住人。主次第で待遇は明らかに変化することを彼らは学んだ。
その日の彼らの眠りは僕が守る。
翌朝、大量に残された物資の山をどうするかを考えていると、
「《収納》が使えるのでしょう。迷う必要はないでしょう」
「あなたは審査役ですね。終始僕に張り付いていた」
ここでようやく審査役が僕の前に姿を現した。
「どこから見てた?」
「全部を見たわけではありませんが」
物資の買い占めが起こり僕が有り得ない速さで買い付けてきたこと、その後物資を冒険者ギルドに委託したこと、オットーさんらに色々融通したこと、その後どのような立ち振る舞いを心掛けていたことなど。大体のことは確認済みだと。
「あいつらは生贄だったんだね」
「ええ、そうです。依頼主側から『コネを悪用して現地の住民を困らせてる連中を吊し上げろ』上から明言されまして。ここに【記録の宝玉】バッチリ現場を記録しております」
これで大分コネを悪用し胡坐をかく連中が大人しくなる。どこでもそういう連中の対応は困りものらしい。
「で、僕への評価は」
肝心なことはそこだ。
「『最上位に入る』そう表現するしかありませんな。必要なものを揃える手段といい戦闘中の立ち回りや作戦立案まで文句のつけようがない、その後の対応も実に素晴らしい」
冒険者が皆貴方のようであれば世界の平和が早くやってくる、一切私見を挟まず称賛する。特に最後『ここにいる皆全員がパーティだ』その発言一つで大勢の心を一つに纏めた。それが実に素晴らしいと。
「依頼主達は強く正しい冒険者を切望しております。これで良い報告が持ち帰れますよ」
「こっちはどうでもいいけどね」
「今は、です。いずれは依頼主達と交流を深めることでしょう。その時貴方が何者になっているのか実に興味深い」
「僕は普通だよ」
「貴方の『普通』は普通ではありませんよ。どうやら自分がいかに貴重であるのかを理解しておられないようですね」
まぁ、それはお仲間が教えればいいことですから。ちょっと匂わせる発言をする。
「どういうこと」
「彼ら4人のことですよ。彼らが高名な氏族部族の家系であることは聞いておりましょう。正直『才能だけならある』状態だったと見切りを付けられる寸前でしたが。今回彼女達の行動を見て『現実と向き合うだけではなく進化覚醒飛躍した』そう表現できるかと」
ふーん、そうなのか。
「そちらにも良い報告が出来そうですよ、フフッ。ま、彼女らがこのまま無事に行ければですが」
まだまだ先は長い。予期せぬ場所で躓く危険性はあるし横槍だって入る可能性もある。僕はそれを許す気はないけどね。
「今回の私の役目はそれを依頼主側に届けることのみ。後のことはしかるべき方々が行いますので」
「しかるべき方々ねぇ。じゃ、頼みたいことがあるんだけど」
そちらの依頼主側に便宜を色々図って欲しいと願う。もちろんしかるべき対価は出すしそれを認めさせる実力を示すから。
金や銀の塊をいくつも足元に並べる。
「無駄金になるかもしれませんよ」
「それは僕らが必要条件をまだ満たしてないから、でしょ。逆に言えば必要条件を満たした時は後ろ盾になってくれるし便宜も図るという返答でもあるわけだ。その前払いをここでするだけ」
「いやはや、自信家なのか馬鹿なのか分かりませんな。とはいえ、受け取るからには仕事をさせてもらいますよ」
すぐさま審査役はそれを空間に仕舞う。彼も《収納》持ちのようだ。さて、物資を仕舞いパーティを連れて帰ろうか。
ミーアはウルフに騎乗し曲刀と逆刃刀を二刀流しながら敵に飛び掛かる。正面が駄目なら側面の壁を駆け抜け場合によっては頭上を取って攻撃する。エメリアは後方から援護射撃を行う。
「ぬうっ。これぞ我が誉れなり。かかってこい」「まったく、各自好き勝手ですね《石壁》」
バーゼルは前面に出て騎乗馬からハルバードを豪快に振り大柄な敵を優先的に始末する。シェリルは各所に石壁を構築し徐々に前線を押し上げる土台を建築する。
「《惑わす使い魔》状態異常で止めなさい」「《勇ましき人形》ゴーレムども、あばれろー」
本来は後衛にいるべきラグリンネとエトナまで召喚魔術で戦闘に加わる。個々が連携し群がるモンスターどもを駆逐していく。僕はというと。
「ぎゃあああ」
「よっと」
パーティの合間合間を通るように上位個体と射撃武器を持った奴らの始末を優先的に行う。しばらくののち殲滅が終わった。
「各自第二波に備えて。後続が来ないようなら玄室の扉を一つ一つ開けて一掃するよ」
『了解』
オットーさんらは弓兵が多い。なのでシェリルの生み出した石壁の裏側から射撃攻撃を行う体制を取る。しばらすると前方の階段から無数の足音が聞こえてくる。
「ミーアエメリアエトナは右側、バーゼルシェリルラグリンネは左側を担当。上位個体らは僕が始末する」
迅速に隊列を組み石壁に隠れながら敵を待つ。今度はオークが中心のようだ。階段より先に進ませては数で負ける。
「《草の茨》」
階段から登ってきた前列を草の茨で足止めする。これで後方が動きにくくなった。各自担当を任された範囲を虱潰しのように攻撃していく。モンスターの断末魔の声が通路中に響き渡り終わりなく続く。第二波はそこそこだった。
各自武器が血で濡れ切れ味が落ち矢も無くなり術の触媒も不足、このままだと撤退やむなしだが予備の武器などを空間から取り出し渡す。血で濡れた武器は回収する。各自武器装備し矢筒を腰に巻き付け持久の水薬を飲み次の戦いに備える。
どうやら階段からは打ち止めのようで玄室の扉を一つ一つ開き中の敵を一掃しようとして。
「我らに実戦の経験を積む機会を頂けませんか」
オットーさんが訪ねてきた。
ふむぅ、名実共に僕がここで一番戦達者なのは後方からでも分かったようでおんぶにだっこでは申し訳ないと判断したようだ。幸いにして一部屋ずつ対応させればいいだろう。後続も来ないようだし回復の奇跡が使える神官が二名もこちらにいるわけだし。
「じゃ、一部屋ずつね」
万が一に備えて隊列を組み楔を抜くのは僕がやる。どうやら半分以上の部屋に敵は潜んでいたようで楔を抜くと雪崩のように外に出てくる。
「各自連携を取りつつ敵を確実に倒せ」
オットーさんの指示に従い囲い込んで一体一体確実に倒す。派手さはないがそれでいい。大技一発で全部倒そうと考えるよりかはね。
玄室の全ての扉を開けて敵を始末したら階段を進む。事前の説明では1階下りれば終わりのはずだ。待ち受けていたのはしかるべき相手だった。
「ボーン・ジェネラルが一体だけ?。いや、明らかに外見が異なるぞ。そもそもあの装備はなんだ」
そう、装備が明らかに異なっている。その手に持つ剣、あれは光属性の物だ。アンデットモンスターが最も忌み嫌う光や聖属性の武器を有しているという時点で通常の個体とは一線を越える。間違いなく特殊個体だ。
それはこちらをゆっくりと視認する。これは危険だと判断しイヴラフグラをここで抜く。
「がぁぁあああ」
その両手剣を真上に振り上げながら急速に接近する特殊個体を僕は剣で止める。
『ピュアブリング!』
「迂闊にこの剣に触れないで。この剣光属性なのに《報復》など呪いを有している」
金間全員が心配するが打ち合ってそれを実感する。これは不味い、下手に傷つけられたら治療不可能だ。特殊個体だけありステータスがやばい。他の仲間じゃ耐えられないだろう。
「手を出さないで」
敵もこちらの剣が尋常でないことを理解したのか一度距離を取る。互いに睨み合う。あの相手に持久戦は無謀だ。即死させる必要がある。
「我を食らえ《富と咎を成すもの》」
刀身全体から迸る禍々しき輝きが際限なく増加していく。発動中は魔力を無制限に食らう代わりに限界を突破する秘術、それを発動する。
勝負は瞬きほどに一瞬であった。
ビキィン。
相手の振りかぶった攻撃よりも早く敵を消滅させる。その体が消滅し白銀に輝く両手剣だけが残った。奥の祭壇に視線を向けるがマナストーンは今回は1個しかないらしい。戦利品はこの両手剣か。
それを僕は回収しようとして、
「それを譲っていただけませんか?」
オットーさんらは聞いてきた。
「なんで」
「我らの依頼主側で『強力な両手剣が欲しい』屈強な魔剣士がおられるのです。これならば満足していただけるでしょう。マナストーンはそちらの方に譲りますので」
ふーん、審査だけではなく依頼主側ねぇ。ま、こっちにはこれを必要としている味方はいないから別にいいか。出所は秘密にする、その約束をしておく。とはいえ、このままでは呪いが強すぎて身が持たないだろう。
「《解呪》」
一度装備しバッドステータスを引き起こす呪いを全部消しておく。うん、これで問題ないだろう。一応重要な品物であるように箱に入れておく。
「それがどこでどう使われようと僕に責任はないからね」
「了解しました」
オットーさんらはそれを渡され責任を果たすつもりだ。そこまで僕は関われない。ゆっくりとダンジョンを出てお日様の温かさを噛みしめる。外に出ると粗末な簡易テントがいくつも並んでいた。
「君たちは」
「ひいっ。許して下さい。なんでもしますから」
先に逃げ出した偽エリートどもから見捨てられてしまい簡易テントで野営していたのだろう。ここまで腐ってたのか奴ら。一縷の望みを頼り先に潜った他のパーティが帰還するのを待っていたようだ。
物資の山もそのまま残っていた。
「おかえりなさいませ」
待機組が出迎える。
「あいつらどうしたの」
ダンジョンから出てきた奴らは全員絶望の表情を浮かべ物資を放り投げて逃げ帰ったそうだ。一応止めたが無視し他の連中を投げ捨てたのだと。弱者の立場からご機嫌取りをしていたけどいざこうなるとさっさと切り捨てるのは世の常識なのだろう。自分達が一番可愛いのだ。
予定より短時間で終わったので飯を食おう。簡易的に調理台を出して食材を空間から次々取り出す。それに付いては誰も聞こうとしなかった。
とはいえ、ここで出せるのは芋のシチューと穀物粥と茹でたソーセージぐらいだ。野営でこれだけでもご馳走なようで全員が唾をのむ。
「さ、食べよ」
『ほ、本当に、いいの?』
見捨てられた者達からすれば有り得ない食事、僕は宣言する
「僕たちは今『全員が同じパーティ』だ。衣食住を与えるのはリーダーの僕の仕事。遠慮せずにガツガツ食え」
『い、いただき、ますぅ』
彼らの多くが涙を浮かべながらガツガツ食う。水浴びすらあまりなかったようで地面に大穴を掘り『水を生み出す袋』でガボガボ水を入れて熱した石を入れて各自湯浴びをさせる。終わったら真新しい服を与えることにした。彼らはかなり下の方に置かれていたようだ。奴隷ではないが社会の最下層の住人。主次第で待遇は明らかに変化することを彼らは学んだ。
その日の彼らの眠りは僕が守る。
翌朝、大量に残された物資の山をどうするかを考えていると、
「《収納》が使えるのでしょう。迷う必要はないでしょう」
「あなたは審査役ですね。終始僕に張り付いていた」
ここでようやく審査役が僕の前に姿を現した。
「どこから見てた?」
「全部を見たわけではありませんが」
物資の買い占めが起こり僕が有り得ない速さで買い付けてきたこと、その後物資を冒険者ギルドに委託したこと、オットーさんらに色々融通したこと、その後どのような立ち振る舞いを心掛けていたことなど。大体のことは確認済みだと。
「あいつらは生贄だったんだね」
「ええ、そうです。依頼主側から『コネを悪用して現地の住民を困らせてる連中を吊し上げろ』上から明言されまして。ここに【記録の宝玉】バッチリ現場を記録しております」
これで大分コネを悪用し胡坐をかく連中が大人しくなる。どこでもそういう連中の対応は困りものらしい。
「で、僕への評価は」
肝心なことはそこだ。
「『最上位に入る』そう表現するしかありませんな。必要なものを揃える手段といい戦闘中の立ち回りや作戦立案まで文句のつけようがない、その後の対応も実に素晴らしい」
冒険者が皆貴方のようであれば世界の平和が早くやってくる、一切私見を挟まず称賛する。特に最後『ここにいる皆全員がパーティだ』その発言一つで大勢の心を一つに纏めた。それが実に素晴らしいと。
「依頼主達は強く正しい冒険者を切望しております。これで良い報告が持ち帰れますよ」
「こっちはどうでもいいけどね」
「今は、です。いずれは依頼主達と交流を深めることでしょう。その時貴方が何者になっているのか実に興味深い」
「僕は普通だよ」
「貴方の『普通』は普通ではありませんよ。どうやら自分がいかに貴重であるのかを理解しておられないようですね」
まぁ、それはお仲間が教えればいいことですから。ちょっと匂わせる発言をする。
「どういうこと」
「彼ら4人のことですよ。彼らが高名な氏族部族の家系であることは聞いておりましょう。正直『才能だけならある』状態だったと見切りを付けられる寸前でしたが。今回彼女達の行動を見て『現実と向き合うだけではなく進化覚醒飛躍した』そう表現できるかと」
ふーん、そうなのか。
「そちらにも良い報告が出来そうですよ、フフッ。ま、彼女らがこのまま無事に行ければですが」
まだまだ先は長い。予期せぬ場所で躓く危険性はあるし横槍だって入る可能性もある。僕はそれを許す気はないけどね。
「今回の私の役目はそれを依頼主側に届けることのみ。後のことはしかるべき方々が行いますので」
「しかるべき方々ねぇ。じゃ、頼みたいことがあるんだけど」
そちらの依頼主側に便宜を色々図って欲しいと願う。もちろんしかるべき対価は出すしそれを認めさせる実力を示すから。
金や銀の塊をいくつも足元に並べる。
「無駄金になるかもしれませんよ」
「それは僕らが必要条件をまだ満たしてないから、でしょ。逆に言えば必要条件を満たした時は後ろ盾になってくれるし便宜も図るという返答でもあるわけだ。その前払いをここでするだけ」
「いやはや、自信家なのか馬鹿なのか分かりませんな。とはいえ、受け取るからには仕事をさせてもらいますよ」
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