上 下
13 / 16

13

しおりを挟む


「んっ……、ぜ……たく……?んにゃ?」

朝、温かいものと懐かしい匂いに包まれて、幸せな気分で目が覚めた。

「っ!」

うぉぉぉぉ!ちっ、ちか!
無造作に開かれたシャツから見える素晴らしい胸と乳首。そして、まるで計算されたかのように無駄なく筋肉がついている大きな右腕……そんな貴重な腕を俺なんかのために腕枕だと……。更に、時雨の左腕は俺の腰辺りにあり、下半身同士が密着している。
そう、ようするに、俺の体をすっぽりと囲む形で、抱き込まれてました!
あぁ、何この安心感……いや、めっさドキドキしてるわ!
そろりと目線を上げれば、キリリと可愛い寝顔。ん?言葉がおかしい気もがするが、他に言い表しようがないのでこれでいいのです、はい。要するに尊いです!!ありがとうございます!
時雨が眠っていることをいいことに、手を伸ばし、そっと唇に触れる。
うわぁ、当たり前だけど柔らかいな。……この唇が昨日俺の唇に!くっ、想像しただけでも夜のおかずになります!何度もイケソウ……くっ、いかん。今は押さえるんだ俺!

「は……んっ」

溜め息を押し殺す。他の場所にも触りたいが起こしたら申し訳ないので至近距離で待機です。
ん、胸がヤバイぐらいドキドキしてる。カッコよくて可愛いなんて……最高か!あー、おでこにチューしたくなってきた。
でも届かないので、そっと顔を上げ、首をギリギリまで伸ばす。

「ペロ」

ぐふふ、顎をなめっちゃった。
満足顔でニマニマし、時雨の顔をもう一度見ようと視線を上げると、パチリと目と目が合いました。

「……」

「……あ……えっと、いっ、いつから、オキテマシタカ?」

時雨はニヤと笑うと俺の体をぐいっと引き寄せ、ギュッと抱きしめた。
その勢いでムニっと俺の唇が時雨の胸に触れる。
時雨の胸にキスしちゃったよー!!
嬉しさと恥ずかしさでパニックになっている俺を更なる出来事が襲う。

「いつからだと思う?」

甘い低音ボイスが耳を襲い、ゾクゾクっと全身が震え上がった。

「んっ!」

更にピチャピチャと柔らかく湿った何かが、耳を、中を、犯されている!

「んっ……ふぁ……しっ、しぐれぇ……やっ……ぁ」

これ以上されると俺のモノが完全に立ちしそうなんだけどぉぉぉぉ!
耳から時雨が離れ、今度は手が服の中へ……。
これ以上は本当にヤバイので、止めてほしいと、懇願するため視線を上げると時雨の喉仏が上下に揺れていた。

「ククク、エロい声だなぁ。誘ってんのか?」

角度的に見えないが、意地悪く笑っているであろう時雨の顔が頭に浮かび、カァーと顔が赤くなるのを感じた。

「うぅぅぅ!」

顔を合わせられない。俺の顔は真っ赤だろう。
グリグリと時雨の胸に頭を押し付けていると、時雨の長い指が俺の髪をすくいグシャと優しく撫でる。

「ふはっ、くすぐってぇよ」

穏やかな優しい声。幼い頃の無邪気に笑う時雨が脳裏に巡り、今どんな顔をしているのか気になり顔を上げた。

「ん?どうした?」

目が合いふわりと愛しそうに笑う時雨を見て、心に温かいものが巡り、心が満たされた。……が、すぐにズキリと胸が痛む。

「……ううん、なんでもない」

微笑した後、泣きたくなるのをグッと我慢し、時雨に抱きついた。
もうすぐ、時雨は主人公を……。わかってる……だから
、もう少しだけでいい……もう少しだけでいいから……時雨の側に、いたい……。





暫く抱きついた後、ふと時間が気になり時計を確認するといつもの起きる時間だった。だるい体を何とか起こし、お互い準備を始める。
その後、朝御飯を食べる準備をする。いつもはカフェオレだけなのだが、昨日時雨が折角買ってきてくれたので無理してでも食べますよ。うん。
冷蔵庫から取り出し、温められるものはレンジで温めた。
テーブルの上には、おにぎり、菓子パン、サラダ、ゆで卵、蒸しチキンが並ぶ。
うぷ、見ただけでお腹一杯です。
その中から菓子パンをチョイスした。
3口食べたぐらいで時雨と目が合うと、頬に貼ってあるガーゼを見ながら、自分の頬をトントンと叩いた。

「取れかかってるな。後でやり直してやる」

「ん、ありがとう」

何とかご飯を食べ終わると、救急箱と薬を持ってきて時雨に渡した。
向かい合わせになり、目を瞑るとビリと音を立てガーゼが外れる。

「っ!!」

微かに息を飲む音が聞こえ、そう言えば縫ったことを言わなかったなと呑気に考えていた。

「……?」

数秒立っても何も言ってこないし、触れてこないことに不思議に思い、目を開けて見ると、時雨は唖然とした表情で固まっていた。

「時雨?」

俺の声に反応してか、時雨の大きな手がそっと頬に触れてきた。その手は微かに震えているようだった。

「縫った……のか」

「えっ、うん。昨日麻酔したって言ったよね?」

眉間に皺が寄ったかと思うと、次の時雨の言葉に思考が停止する。

「ミツル、今日から俺の所にこい。一緒に住むぞ」

「……へ?」

「こんな何もないところに、ミツルを1秒たりとも一人にさせてたまるか」

「ちょっ、ちょっと待って!ケ、ケンさんは!?」

「ケンさんはその提案者だ」

「えっ?どうゆうこと!?」

思考が追い付かないんですけどぉぉぉ!

「ここ出る。俺と住む。Are you OK?」

「全然、OKじゃない!」

俺の言葉にますます眉間に皺を寄せた時雨は、両手で俺の頬を優しく包み込んだ。真剣な眼差しに逃れることができず、ゴクリと唾を飲み込む。

「俺が側にいたらこんな怪我、絶対させねぇ」

「時雨……でも……」

「ミツル、つべこべ言うな。決定だ。拒否権はねぇ」

ニヤリと笑う俺様な時雨にドキッと胸がトキメキ、思わず反射的に頷いたのだった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最弱伝説俺

京香
BL
 元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!  有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?

犯されないよう逃げるけど結局はヤラれる可哀想な受けの話

ダルるる
BL
ある日目が覚めると前世の記憶が戻っていた。 これは所謂異世界転生!?(ちょっと違うね) いやっほーい、となるはずだったのに…… 周りに男しかいないししかも色んなイケメンに狙われる!! なんで俺なんだぁぁぁ…… ーーーーーーー うまくにげても結局はヤられてしまう可哀想な受けの話 題名についた※ はR18です ストーリーが上手くまとまらず、ずっと続きが書けてません。すみません。 【注】アホエロ 考えたら負けです。 設定?ストーリー?ナニソレオイシイノ?状態です。 ただただ作者の欲望を描いてるだけ。 文才ないので読みにくかったらすみません┏○┓ 作者は単純なので感想くれたらめちゃくちゃやる気でます。(感想くださいお願いしやす“〇| ̄|_)

冴えない「僕」がえっちオナホとして旦那様に嫁いだ日常♡

nanashi
BL
[BL大賞のため全年齢パート更新予定] タイトルのまま/将来的にラブラブになるCPのすれ違い肉体関係部分 R18エロlog・♡喘ぎ・BDSM 【内容】(更新時、増えたら追加) 体格差・調教・拘束・野外・騎乗位・連続絶頂・スパンキング・お仕置き・よしよしセックス・快楽堕ち・ストリップ 結腸・アナルビーズ・ちんぽハーネスで散歩・鞭 尿道開発・尿道プレイ・尿道拡張・疑似放尿・ブジー・カテーテル 強制イラマチオ・嘔吐(少し)・ 攻めの媚薬・受の号泣・小スカ・靴舐め 婚前調教編:ストリップ・竿酒・土下座・床舐め・開発・ぺニス緊縛・イラマチオ・オナ禁 【今後書きたい】種付けプレス・体格差のあるプレイ・ピアッシング・鼻穴射精・喉奥開発・乳首開発・乳首ピアス・おちんぽ様への謝罪・ハメ懇願土下座・異物挿入・産卵・貞操帯 (らぶらぶ軸で書きたい)フィスト・アナルホール 内容が分かりやすいよう更新日とプレイがタイトル。基本繋がってない。 モチベのために、応援や感想waveboxにいただけるととても嬉しいです♡

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

エリート旦那様は淫乱な妻にご乱心

URUR
BL
大好きな旦那様と結婚して1ヶ月がたった頃妻である結斗はある悩みを抱えていた。それは初夜のあれ以来1度も抱かれていないということだった。 初夜ではあんなに愛しあっていたのに...恥ずかしくて旦那様を誘惑できない結斗は今日も1人自慰に浸る。 妻を大切にしたいエリート旦那様×旦那様に抱いてもらえなくて不満を抱える妻 ✤✤✤ 初めての官能小説です。楽しんで頂いたらと思います。

義兄のものをなんでも欲しがる義弟に転生したので清く正しく媚びていくことにしようと思う

縫(ぬい)
BL
 幼い頃から自分になんとなく違和感を感じていたシャノンは、ある日突然気づく。  ――俺、暇潰しで読んでた漫画に出てくる『義兄のものをなんでも欲しがるクソ義弟』では? と。  断罪されるのもごめんだし、俺のせいで家がむちゃくちゃになるのも寝覚めが悪い!  だから決めたのだ! 俺、シャノンは清く! 正しく! ちょっと媚びて真っ当に生きていくのだと!   表情筋が死にかけている義兄×真っ当な人生を歩みたいちょっと打算的な義弟  溺愛ベースでのほほんとしたお話を目指します。固定CP。総愛され気味かもしれません。  断罪回避のために猫を背負いまくる受けを書くつもりだったのですが、手癖でどんどんアホっぽくなってしまいました。  ゆるゆる設定なので誤魔化しつつ修正しつつ進めていきます。すみません。  中編〜長編予定。減ったり増えたり増えなかったりするかもしれません。

【完結】彼女のお父さんに開発されちゃった自分について

七咲陸
BL
自分には可愛くて美しい、可憐な恋人のレイチェルが居る。そのレイチェルの父である彼は自分を好きだと言う。自分も彼に惹かれてしまい…… ■侯爵家当主で彼女の父×子爵家子息 □やまもおちもいみもありません。ただただひたすらに作者の趣味と性癖を詰め込んだだけの話です。 ■広い心でお読み下さい。終始ヤッてるだけです。 □R-18です。自己責任でお願いします。 ■ちゃんとハッピーエンドです。 □全6話

処理中です...