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しおりを挟む無意識にスズちゃん先生の家兼病院へ足が向き、数ヶ月ぶりの道を歩いていく。数分で、スズちゃん先生の家の前に着いた。
迷惑かもしれない……連絡を入れればよかったな……と一瞬頭に過ったが、伸ばした手はチャイムのボタンを押していた。
ピンポンというベルの後、懐かしい声が聞こえてきた。
『はい、どなたですか?』
「……スズちゃん先生、助けて」
『っ!!』
チャイムのスピーカーからパタパタと走る音が遠ざかっていくのに比例して、玄関ドアの向こうの足音がだんだん大きく近づいていき、ドアが勢いよく開いた。
「ミツ君!!」
焦った顔のスズちゃん先生が俺を抱き締める。相変わらず細いなと思いながら血の着いていない方の手で軽く抱き締め返す。
黒い長髪のストレートの美人で、俺より少し身長が高いのにもかかわらず、細くすらりとした体つきのライン。女性に間違えられるが、れっきとした男性である。ちなみに、ラブラブな彼氏がいます。強面で柄の悪い警察官が。
「あは、スズちゃん先生、こんばんは」
「今日はどうし……た……」
俺の怪我にすぐ気付くと、眉をひそめた後、腕を掴まれ家の奥にある診察室へと強引に連れていかれる。
無言で治療されていると、横のドアから黒スーツを着た黒髪短髪の強面のイケメン男性がやってきた。
「おぅ、ミツか」
「あー、繁さん。お久しぶり、です」
スズちゃん先生の彼氏、松賀繁(まつがしげる)さんである。以前、叔父関係で大変お世話になった人で俺の恩人2人目だ。
治療していたスズちゃん先生の手がピタリと止まったので、不思議に思い前を向くと、片手に消毒液、片手に縫うための針を手に持ったズズちゃん先生が、にっこりと笑っていた。
「あれ、縫うの?ってか、麻酔してないよね!」
「ふふ、ミツ君にお聞きします。どうしたの?この傷」
「えっ、あー、ちょっと喧嘩したら、こうなりました」
「ちょっとの喧嘩で、できる傷じゃないよね?」
にこにこと笑っているが目が笑ってない。ヤバイ、この時のスズちゃん先生には逆らわないほうがいい。
なんと説明したらいいのかと考えていると、近くにいた繁さんに顎を捕まれ、ぐいっと上を向かされた。
「これ、ナイフ傷だな」
「……はい」
そう、答えた瞬間、ズシリと空気が重くなる。寒くないのに鳥肌が立ち、冷や汗が……。
繁さん、なんか怒ってる!空気が半端なく重いんですが!!
「ガキの喧嘩にナイフとは……なってねぇ……」
超ド低音ボイスに、少しビビりながらごくりと唾を飲み込む。
「で、ちゃんと、お礼はしたのか?」
「もちろんです!」
「なら、いい」
顎の手が離れ、ふっと空気が軽くなる。ほっとした束の間今度はスズちゃん先生の攻撃である。
「あーもう!綺麗な顔に傷が残ったらどうするの!」
「えっ、いや、別に残っても……男だし」
「ふふ、そう。じゃぁ、男の子だから我慢できるよね。麻酔なしで縫うから」
「へっ!いや!それは勘弁して!」
「僕のお気に入りの顔に怪我をした罰だよ」
「ちょっ、スズちゃん先生!嘘だよね!嘘と言ってください!」
なんてギャァギャァ騒ぎましたが、ちゃんとベッドに寝かせてもらった後、麻酔をして縫っていただきました。
縫う直前、「冗談だよ」とにっこり笑っていたけれど、あの顔は本気でやるつもりだったに違いない!
6針縫ってもらった後、家に帰ろうとしたら、「遅いから泊まってけ」と繁さんから言われたので、ありがたく泊まらせていただきました。
スズちゃん先生の家は何度も泊まっているので、勝手知ったるなんとやら。
「汗かいたから、シャワー借りるね」
「縫ったところはダメだよ。大人用のシャンプーキャットあるから使って」
「ん」
あれ?何か忘れてるような。シャンプー……頭……あっ。
「どうしたの?」
「あー……」
パイプ椅子で頭打って血が出たことを告げると、スズちゃん先生は数秒の無表情後、「そっちの方も手当てするから座って」と診察室の椅子を指で指した。
うわぁ、無表情、怖!!
頭の治療後、他に怪我がないか全身見られ、背中の青アザになっていた所も見つかり軽く説教された。
繁さんにも「今度暇なときに鍛えてやるか」という声が聞こえたような気がするけど、聞き間違いだよね!怖すぎて無理!
結局、汗だけ流すためにシャワーを借りた後、ベッドに寝っ転がり目を瞑った。
「……疲れた」
今日は色々ありすぎて、オーバーヒートです。
明日も学校……なのに……。
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