推しの幼馴染み&モブでした。あぁ……もう遅いよ……ね?うぇ?どうしてこうなった!?

白銀

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冷や汗がツーと流れ落ちる。
どうする……勝てる気がしない……。いや、そうじゃないだろう!勝たなきゃいけないんだ!やらなきゃ、時雨がやられる。
ギリっと歯を噛みしめ、標的を睨み付ける。標的、ツキグマは、まだ本気を出していない……気がする。俺が弱そうだからか?なら、油断している今攻めないとダメだ。考えて攻撃してからじゃ遅い。考えてる暇があるのなら攻撃するべし!
足に力を入れツキグマに向かって走る。右トファーの先で殴るように攻撃。が、相手は防御することもなく攻撃を受け止め、俺にナイフを突きつけてきた。ヤバイと思い咄嗟に顔を反らし避けるが間に合わず、シュッと右目下にナイフが触れ、血が溢れる。
血がたらりと頬を伝った瞬間、カッと全身が熱くなり、無意識に左トンファーを反対に持つと、持ち手の部分をツキグマの首へと引っかけ、勢いよく引く。予想だにしていなかったのかツキグマが前へと倒れてきたので、右トンファーの先で思いっきり顎へと叩き込んだ。

「……」

ドサッと倒れるツキグマを数秒見下ろした後、はっと我に返った。急いで両手両足と口をガムテープで拘束する。
うん、ツキグマはアブねぇから5重ぐらい巻いておこう。他の3人も両手と口をガムテープを巻き、一息着いた。

「ふぅ……暑いな……」

額から汗が流れ目に入ったので、無意識に手の指で拭こすった瞬間、ピリリと痛みが走る。

「いっ!」

そうだ、怪我してたんだっけ。
だらだらと垂れる血を袖で押さえる。
はぁ、マジでヤバかったな。もう、疲れたよ。帰ってお風呂入って寝たい。
なんて思っていたら、入口から話声が聞こえたので、急いで奥の部屋に隠れた。





入ってきたのは『サクマ』の総長セイガと時雨だった。

「……なんだ、これは」

セイガはツキグマ達が倒されていることに驚愕する。

「ツキグマがヤられるなんて……」

動揺を隠せないセイガに、時雨がポリポリと頭をかきながら口を開く。

「あー、やめるか?」

どうでも良さそうな時雨の表情が癪にさわったのか、セイガがギロリと睨み付けた。

「やる!覚悟しろ、時雨ー!」

喧嘩が始まったが、10秒もせずに時雨が勝った。呆気ない。
セイガ、よわ!いや、時雨が強いのか?
虫けらを見るように上から睨む時雨。
そんな貴方も素敵です!
ゲシっと足でセイガを蹴ったが反応せず。

「よわ……」

時雨が呟きため息をついた瞬間、ガタンと入り口から音がしたので、反射的に振り返った。

「あれ?終わってる?」

場違いな明るい声に、時雨の眉間に皺が寄る。
きた!主人公の神原だ。

「誰だ、てめぇ……」

低い声で怪訝そうに睨む時雨に、神原はちょっと焦った声で両手を前に突き出し左右に振る。

「いやー、違う!俺は通りすがりの人だから!あー、あれだ。散歩してたら大きな物音がしたから気になって見にきたんだ。……コレ、あなたがやったの?」

若干引き気味の神原は、ガムテープ巻きの人を指差す。

「知らねぇ。俺はコイツ以外ヤってねぇ」

2人の会話が淡々と進む中、もう大丈夫そうだと確信した俺は、さっさと窓から出ていったのだった。






「いてぇー、つーか、目がマジで痛い」

人通りの少ない真っ暗な帰り道。明かりは等間隔にポツンポツンと立っている古い街灯のみ。
血が出ているであろう目の下を、ハンドタオルで押さえているのだが一向に止まらない。さらに、目の中に血が入ってきて気持ち悪いし、痛い。
あー、くらくらするし、気分も悪い。何か別のことを考えて気をまぎらわそう。


そういえば、これでゲームのルート通り……だよな?一応2人が出会ったし、たぶん大丈夫なはず。でも、そしたら俺、時雨と一緒にはいられないな。時雨は主人公のことばかりで、俺のことは……。

「っ!」

ふらりと体がよろめき、肩に電柱にぶつかる。
あー、もしかして貧血か?血、止まんねぇし。
イライラしながら、ふと、病院の看板に目が行く。『守山病院』と書かれてある看板見て、ふっと思い浮かんだのは優しく笑う美人なスズちゃん先生。

「そういえば、ここらへんだったな」

叔父に引き取られてすぐのことだ。愛想がない、返事を返さないとぶちギレされ、殴る蹴るの暴力後、外に追い出されたことがあった。
行く当てもなく、公園のベンチでぼーとしていた俺に手を差し伸べてくれたのが、守山硯(もりやますずり)先生だった。
何もしゃべらない俺の手を引っ張って、病院で手当てをしてくれた恩人。その後も色々お世話になった。
元気かな……会いたいな。







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