推しの幼馴染み&モブでした。あぁ……もう遅いよ……ね?うぇ?どうしてこうなった!?

白銀

文字の大きさ
上 下
7 / 16

しおりを挟む


冷や汗がツーと流れ落ちる。
どうする……勝てる気がしない……。いや、そうじゃないだろう!勝たなきゃいけないんだ!やらなきゃ、時雨がやられる。
ギリっと歯を噛みしめ、標的を睨み付ける。標的、ツキグマは、まだ本気を出していない……気がする。俺が弱そうだからか?なら、油断している今攻めないとダメだ。考えて攻撃してからじゃ遅い。考えてる暇があるのなら攻撃するべし!
足に力を入れツキグマに向かって走る。右トファーの先で殴るように攻撃。が、相手は防御することもなく攻撃を受け止め、俺にナイフを突きつけてきた。ヤバイと思い咄嗟に顔を反らし避けるが間に合わず、シュッと右目下にナイフが触れ、血が溢れる。
血がたらりと頬を伝った瞬間、カッと全身が熱くなり、無意識に左トンファーを反対に持つと、持ち手の部分をツキグマの首へと引っかけ、勢いよく引く。予想だにしていなかったのかツキグマが前へと倒れてきたので、右トンファーの先で思いっきり顎へと叩き込んだ。

「……」

ドサッと倒れるツキグマを数秒見下ろした後、はっと我に返った。急いで両手両足と口をガムテープで拘束する。
うん、ツキグマはアブねぇから5重ぐらい巻いておこう。他の3人も両手と口をガムテープを巻き、一息着いた。

「ふぅ……暑いな……」

額から汗が流れ目に入ったので、無意識に手の指で拭こすった瞬間、ピリリと痛みが走る。

「いっ!」

そうだ、怪我してたんだっけ。
だらだらと垂れる血を袖で押さえる。
はぁ、マジでヤバかったな。もう、疲れたよ。帰ってお風呂入って寝たい。
なんて思っていたら、入口から話声が聞こえたので、急いで奥の部屋に隠れた。





入ってきたのは『サクマ』の総長セイガと時雨だった。

「……なんだ、これは」

セイガはツキグマ達が倒されていることに驚愕する。

「ツキグマがヤられるなんて……」

動揺を隠せないセイガに、時雨がポリポリと頭をかきながら口を開く。

「あー、やめるか?」

どうでも良さそうな時雨の表情が癪にさわったのか、セイガがギロリと睨み付けた。

「やる!覚悟しろ、時雨ー!」

喧嘩が始まったが、10秒もせずに時雨が勝った。呆気ない。
セイガ、よわ!いや、時雨が強いのか?
虫けらを見るように上から睨む時雨。
そんな貴方も素敵です!
ゲシっと足でセイガを蹴ったが反応せず。

「よわ……」

時雨が呟きため息をついた瞬間、ガタンと入り口から音がしたので、反射的に振り返った。

「あれ?終わってる?」

場違いな明るい声に、時雨の眉間に皺が寄る。
きた!主人公の神原だ。

「誰だ、てめぇ……」

低い声で怪訝そうに睨む時雨に、神原はちょっと焦った声で両手を前に突き出し左右に振る。

「いやー、違う!俺は通りすがりの人だから!あー、あれだ。散歩してたら大きな物音がしたから気になって見にきたんだ。……コレ、あなたがやったの?」

若干引き気味の神原は、ガムテープ巻きの人を指差す。

「知らねぇ。俺はコイツ以外ヤってねぇ」

2人の会話が淡々と進む中、もう大丈夫そうだと確信した俺は、さっさと窓から出ていったのだった。






「いてぇー、つーか、目がマジで痛い」

人通りの少ない真っ暗な帰り道。明かりは等間隔にポツンポツンと立っている古い街灯のみ。
血が出ているであろう目の下を、ハンドタオルで押さえているのだが一向に止まらない。さらに、目の中に血が入ってきて気持ち悪いし、痛い。
あー、くらくらするし、気分も悪い。何か別のことを考えて気をまぎらわそう。


そういえば、これでゲームのルート通り……だよな?一応2人が出会ったし、たぶん大丈夫なはず。でも、そしたら俺、時雨と一緒にはいられないな。時雨は主人公のことばかりで、俺のことは……。

「っ!」

ふらりと体がよろめき、肩に電柱にぶつかる。
あー、もしかして貧血か?血、止まんねぇし。
イライラしながら、ふと、病院の看板に目が行く。『守山病院』と書かれてある看板見て、ふっと思い浮かんだのは優しく笑う美人なスズちゃん先生。

「そういえば、ここらへんだったな」

叔父に引き取られてすぐのことだ。愛想がない、返事を返さないとぶちギレされ、殴る蹴るの暴力後、外に追い出されたことがあった。
行く当てもなく、公園のベンチでぼーとしていた俺に手を差し伸べてくれたのが、守山硯(もりやますずり)先生だった。
何もしゃべらない俺の手を引っ張って、病院で手当てをしてくれた恩人。その後も色々お世話になった。
元気かな……会いたいな。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう遅いなんて言わせない

木葉茶々
BL
受けのことを蔑ろにしすぎて受けに出ていかれてから存在の大きさに気づき攻めが奮闘する話

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...