34 / 53
34.終わりの日③(昴流視点)
しおりを挟む
何も言えなくなった俺達に瑠衣はこれ以上何も言うこともなく、特別棟の窓を閉めて立ち去っていった。
俺はその様子をただ呆然と立ち尽くしたまま見つめていた。
「……昴流」
不安そうに俺の名前を呼ぶ岡野の声で我に返る。
さっきまでハイテンションで俺と瑠衣の進捗具合を聞きたがってた岡野は、どこか労るような視線を俺に向けていた。
隣にいた安達も神妙な顔で俺を見ているのがわかる。
中学から付き合いのある安達だけど、こんな表情、初めて見た気がする。
そして。
「行かなくていいのか?」
俺の背中を押してくれるような安達の問い掛けに。
俺は一瞬にして自分が今しなければならない事を思い出し、弾かれたように全力で走り出していた。
部室棟があるエリアと特別棟がある場所は隣合わせになってるとはいえ、実際に行くとなるとかなり迂回することになる。
あの後すぐに瑠衣が教室に戻っていたら、捕まえることは不可能かもしれない。
でも今ならまだ追い付ける可能性がある。
そう信じて懸命に足を動かした。
特別棟と本校舎を繋ぐ渡り廊下が見えたところで、そこにぼんやりと佇む瑠衣の姿が見えて心が逸った。
「瑠衣ッ!」
堪えきれず名前を呼ぶと、明らかに迷惑そうな表情をした瑠衣が振り返り、胸がツキリと痛む。
一瞬怯みそうになったものの、何も言わずに歩き出した瑠衣に焦った俺は、気付けば瑠衣の手首を掴んでいた。
「瑠衣」
こっちを見て欲しくてもう一度名前を呼ぶと、瑠衣の綺麗な顔が嫌そうに歪められる。
ハッキリとわかる拒絶に、傷付かないといったら嘘になる。
でもこれは全て自分が招いたこと。
そう自分に言い聞かせ、何とか冷静に話をしようと取っ掛かりの言葉を探した。
さっきはあまりの展開に頭が追い付かず、無様にも何も言うことが出来なかった自分が情けない。
だから今度こそちゃんと話をしなきゃと思う。
そうじゃなきゃ、俺の気持ちも、二人の間にあった甘やかな時間も、何もかもがなかったことにされて、本当に終わってしまう。
そんなことをグルグルと考えているうちに、苛立ちを隠そうともしない様子の瑠衣が先に口を開いた。
「……まだ何か用?」
手首を掴んでまで呼び止めたのに一向に話をしない俺を、瑠衣の黒い瞳が責めるように鋭く射ぬく。
俺は決心が鈍ってしまわないよう掴んだ手に力を込めると、そのまま瑠衣を引っ張って半ば強引に特別棟へと歩みを進めた。
「え、ちょっと……! なに!?」
焦ったような瑠衣の声を無視して、空いている教室に連れ込む。
そこで漸く瑠衣の手を放した俺に、瑠衣は呆れたように大きなため息を吐いた。
たった今まで掴んでいた手首はちょっと赤くなっていて。
話を聞いてもらいたいっていうのにとにかく必死で、完全にやらかしてしまっていた自分に青くなる。
「……ごめん」
すぐに謝ってはみたものの、瑠衣はそんな俺の言葉など聞くつもりはないようで。
「何のつもり? もう午後の授業始まるけど」
言いたいことがあるならさっさとしろとでも言うように、苛立ちを滲ませながら冷たい視線を向けてきた。
俺はこの期に及んでどう話を切り出そうか少しだけ迷った後、こんな時まで自分を取り繕っても仕方ないと思い直し、素直な気持ちを口にした。
「……瑠衣とちゃんと話がしたいんだ」
心から言ってる筈なのに酷く白々しく聞こえる言葉に、瑠衣の口から馬鹿にしたような笑いが漏れる。
「ハハッ……。話って何の? さっきのじゃまだ説明が足りなかったってこと? 何が聞きたいのかわかんないけど、それを聞いたところでどうすんの?」
どうするって……。そんなの考えるまでもなく決まってる。
誠心誠意ちゃんと謝って、俺の気持ちを洗いざらい伝えて、この一ヶ月、瑠衣がどう考えて俺と一緒にいたのか全部聞きたい。
その上で、もう一度最初から始めたい。チャンスが欲しいと言うつもりだったのに、いざ言葉にしようとすると妙に躊躇われて言葉にならなかった。
本当に嫌いだったらあんなキス、ほとんど毎日のように出来る筈がないって信じてる。
でも今の瑠衣にそれを言っても、否定されることは目に見えているし、益々不快にさせるだけだってわかるから……。
──何をどう話せばいい?
俺が何も話さないことをどう捉えたのか。
瑠衣は心底うんざりしたような顔で言葉を続けた。
「どうしても俺と話したいっていうなら、話してあげるよ。まずはこの一ヶ月、俺がどういうつもりでお前の側にいたのかってところからかな」
まさに俺が聞きたいと思っていたことを瑠衣のほうから話してくれると言われ、ガラにもなく緊張で全身が震えそうになるのを必死に抑えながら瑠衣を見つめる。
その時、ちょうど予鈴が鳴った。
『また後で』と言われないことから、瑠衣はこのまま俺に付き合ってくれるつもりなんだろう。
それがさっさとケリをつけたいっていう気持ちからでも、また話をしてくれる気になったことがまるで一縷の望みがあると言われてるようにも感じられ。
ちょっとだけ気持ちが落ち着いた。
俺はその様子をただ呆然と立ち尽くしたまま見つめていた。
「……昴流」
不安そうに俺の名前を呼ぶ岡野の声で我に返る。
さっきまでハイテンションで俺と瑠衣の進捗具合を聞きたがってた岡野は、どこか労るような視線を俺に向けていた。
隣にいた安達も神妙な顔で俺を見ているのがわかる。
中学から付き合いのある安達だけど、こんな表情、初めて見た気がする。
そして。
「行かなくていいのか?」
俺の背中を押してくれるような安達の問い掛けに。
俺は一瞬にして自分が今しなければならない事を思い出し、弾かれたように全力で走り出していた。
部室棟があるエリアと特別棟がある場所は隣合わせになってるとはいえ、実際に行くとなるとかなり迂回することになる。
あの後すぐに瑠衣が教室に戻っていたら、捕まえることは不可能かもしれない。
でも今ならまだ追い付ける可能性がある。
そう信じて懸命に足を動かした。
特別棟と本校舎を繋ぐ渡り廊下が見えたところで、そこにぼんやりと佇む瑠衣の姿が見えて心が逸った。
「瑠衣ッ!」
堪えきれず名前を呼ぶと、明らかに迷惑そうな表情をした瑠衣が振り返り、胸がツキリと痛む。
一瞬怯みそうになったものの、何も言わずに歩き出した瑠衣に焦った俺は、気付けば瑠衣の手首を掴んでいた。
「瑠衣」
こっちを見て欲しくてもう一度名前を呼ぶと、瑠衣の綺麗な顔が嫌そうに歪められる。
ハッキリとわかる拒絶に、傷付かないといったら嘘になる。
でもこれは全て自分が招いたこと。
そう自分に言い聞かせ、何とか冷静に話をしようと取っ掛かりの言葉を探した。
さっきはあまりの展開に頭が追い付かず、無様にも何も言うことが出来なかった自分が情けない。
だから今度こそちゃんと話をしなきゃと思う。
そうじゃなきゃ、俺の気持ちも、二人の間にあった甘やかな時間も、何もかもがなかったことにされて、本当に終わってしまう。
そんなことをグルグルと考えているうちに、苛立ちを隠そうともしない様子の瑠衣が先に口を開いた。
「……まだ何か用?」
手首を掴んでまで呼び止めたのに一向に話をしない俺を、瑠衣の黒い瞳が責めるように鋭く射ぬく。
俺は決心が鈍ってしまわないよう掴んだ手に力を込めると、そのまま瑠衣を引っ張って半ば強引に特別棟へと歩みを進めた。
「え、ちょっと……! なに!?」
焦ったような瑠衣の声を無視して、空いている教室に連れ込む。
そこで漸く瑠衣の手を放した俺に、瑠衣は呆れたように大きなため息を吐いた。
たった今まで掴んでいた手首はちょっと赤くなっていて。
話を聞いてもらいたいっていうのにとにかく必死で、完全にやらかしてしまっていた自分に青くなる。
「……ごめん」
すぐに謝ってはみたものの、瑠衣はそんな俺の言葉など聞くつもりはないようで。
「何のつもり? もう午後の授業始まるけど」
言いたいことがあるならさっさとしろとでも言うように、苛立ちを滲ませながら冷たい視線を向けてきた。
俺はこの期に及んでどう話を切り出そうか少しだけ迷った後、こんな時まで自分を取り繕っても仕方ないと思い直し、素直な気持ちを口にした。
「……瑠衣とちゃんと話がしたいんだ」
心から言ってる筈なのに酷く白々しく聞こえる言葉に、瑠衣の口から馬鹿にしたような笑いが漏れる。
「ハハッ……。話って何の? さっきのじゃまだ説明が足りなかったってこと? 何が聞きたいのかわかんないけど、それを聞いたところでどうすんの?」
どうするって……。そんなの考えるまでもなく決まってる。
誠心誠意ちゃんと謝って、俺の気持ちを洗いざらい伝えて、この一ヶ月、瑠衣がどう考えて俺と一緒にいたのか全部聞きたい。
その上で、もう一度最初から始めたい。チャンスが欲しいと言うつもりだったのに、いざ言葉にしようとすると妙に躊躇われて言葉にならなかった。
本当に嫌いだったらあんなキス、ほとんど毎日のように出来る筈がないって信じてる。
でも今の瑠衣にそれを言っても、否定されることは目に見えているし、益々不快にさせるだけだってわかるから……。
──何をどう話せばいい?
俺が何も話さないことをどう捉えたのか。
瑠衣は心底うんざりしたような顔で言葉を続けた。
「どうしても俺と話したいっていうなら、話してあげるよ。まずはこの一ヶ月、俺がどういうつもりでお前の側にいたのかってところからかな」
まさに俺が聞きたいと思っていたことを瑠衣のほうから話してくれると言われ、ガラにもなく緊張で全身が震えそうになるのを必死に抑えながら瑠衣を見つめる。
その時、ちょうど予鈴が鳴った。
『また後で』と言われないことから、瑠衣はこのまま俺に付き合ってくれるつもりなんだろう。
それがさっさとケリをつけたいっていう気持ちからでも、また話をしてくれる気になったことがまるで一縷の望みがあると言われてるようにも感じられ。
ちょっとだけ気持ちが落ち着いた。
30
あなたにおすすめの小説
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
幼なじみの友達に突然キスされました
光野凜
BL
『素直になれない、幼なじみの恋』
平凡な俺、浅野蒼にはイケメンでクラスの人気者な幼なじみ、佐伯瑛斗がいる。
家族ぐるみの付き合いのせいか、瑛斗は昔から距離感がおかしくて、何かと蒼にベッタリ。けれど、蒼はそれを“ただの友情”だと思っていた。
ある日、初めての告白に浮かれていると、瑛斗から突然キスされて......!?
「蒼のことが好きだ」
「お前が他の奴と付き合うのは耐えられない」
友達だと思っていた関係が一気に変わり、戸惑いながらも瑛人の一途で甘い想いに少しずつ心が揺れていく。
しかし、素直になれない蒼は最後の一歩が踏み出せずにいた。
そんなとき、ふたりの関係に”あるトラブル”が訪れて......。
じれったくて、思わず応援したくなるふたりのピュアな青春ラブストーリー。
「......蒼も、俺のこと好きになってよ」
「好きだ。好きだよ、蒼」
「俺は、蒼さえいればいい」
どんどん甘く、独占欲を隠さなくなる瑛斗に、戸惑いながらも心が揺れていく。
【一途で独占欲強めな攻め × 不器用で素直になれない受け】
素直になれなくて、ごめんね
舞々
BL
――こんなのただの罰ゲームだ。だから、好きになったほうが負け。
友人との、くだらない賭けに負けた俺が受けた罰ゲームは……大嫌いな転校生、武内章人に告白すること。
上手くいくはずなんてないと思っていたのに、「付き合うからには大切にする」とOKをもらってしまった。
罰ゲームと知らない章人は、俺をとても大切にしてくれる。
……でも、本当のことなんて言えない。
俺は優しい章人にどんどん惹かれていった。
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる