113 / 116
第2章
113. 新しい土地のあれこれ
しおりを挟む
土地の情報をクラウスから聞き終えた私は、すぐに外行きの準備を始めることにした。
クラウスは「部屋の前で待っている」とだけ口にして廊下に出て行ったから、待たせないようにと簡素なドレスを選ぶ。
これなら一人でも着替えられるから、侍女の手を借りればあっという間なのよね。
「こんな感じで宜しかったでしょうか?」
「ええ、すごく良いわ。ありがとう」
最後に、手紙と一緒に入っていた髪飾りを着けたら、今日の外行きの準備は完成。
パーティー用のドレスと違ってすごく動きやすいから、身体が軽くなった気がするわ。
「お待たせ」
「気にしなくて良い。俺が言い出したことだからな」
「それでもよ」
いつものように手を重ねてから、馬車が待っているという玄関に向かう私達。
広いお屋敷だから玄関まで移動するだけでも時間がかかるのだけど、この間ずっとクラウスは私の髪飾りには気付かなかったみたい。
少し残念だけれど、目立たないものだから仕方ないわよね……。
いつもの読心術が不調みたいだから、タイミングよく声を掛けられることもなかった。
そうして歩くこと数分。玄関が見えるところに差し掛かると、使用人さんたちが見送りのために集まっている様子が目に入った。
まるでパーティーに向かうときのようだけど、エイブラム家ではこれが当たり前。
クラウスと手を重ねたりエスコートされることには慣れてきたけれど、この見送りには慣れないから、少しだけくすぐったい。
「「行ってらっしゃいませ!」」
「行ってきます」
「行ってきますわ」
恭しく頭を下げる使用人さんたちに笑顔を返してから馬車に乗ると、間もなく馬のいななきに続けて車輪が動く感覚が伝わってきた。
もう目的地は御者さんが把握しているみたいで、迷いなく門を潜り抜けている様子。
そんな時、ふとこんな問いかけをされた。
「こういう時に髪飾りを着けているなんて珍しいな。
家族からの贈り物か?」
「ええ、妹たちが作ってくれたの。
こんなこと初めてだったから嬉しくて」
「見ないデザインだとは思ったが、まさか手作りとは……。
シエルもそうだが、シエルの家族も本当にすごい才能を持っているのだな」
感心するような表情を浮かべながら、まじまじと髪飾りを見つめるクラウス。
少しして、彼の顔が離れたところで、私も口を開く。
「私も驚いたのよね。こんなに綺麗に作れるなんて知らなかったもの」
「シエルを驚かそうと必死に練習したのかもしれないな」
「二人とも器用ではなかったから、手をけがしていないか心配だわ……」
「それは心配だ。シエルの妹なると、猶更。
シエルもよく無理しようとしているからね」
「反論出来ないわ……」
クラウスの指摘には心当たりしかなくて、言い訳さえも口に出来なくなってしまう。
リリアの根が私に似ていたら、きっと針を何度も指にさしてしまっても、血が付かないように工夫して続けているに違いないわ。
私なら痛い思いをしても、治癒魔法で血を止めながら続けるはずだから。
リリアは治癒魔法を使えないから、指を穴だらけにしていても不思議ではないのよね……。
そう思ったら、すごく心配になってしまった。
「土地を見終わったら、お礼を言いに行ってもいいかしら?」
「もちろん。エイブラム邸に戻ったら、すぐ準備をしよう。
大聖祭があるから早めに戻りたいが、それでも大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとう」
クラウスの手を握りながら答えると、優しい手つきで私の手が包み返される。
そんな時、タイミングよく馬車が止まって御者台から声がかけられた。
「到着いたしました。すぐに開けますのでお待ちください」
「分かった」
「分かりましたわ」
返事をしながら窓の外を見ると、そこには帝都の中とは思えないほど広々とした空き地が広がっていた。
両隣は公爵邸と聞いていたのだけど、下手をすれば両隣の敷地よりも一回りは大きいように思えてしまう。
「こんなに広い土地、私達に買えるのかしら?」
「今までの報奨金があるから、問題無い。俺の貯金もあるし、前の家の土地を売ればそれも足しになる。
それと、家は一生を共にするかもしれないから、贅沢だとか勿体無いとかは思わないように気を付けてほしい」
「……頑張ってみるわ」
そう口にしてから、馬車を降りるクラウス。
私も彼に続いて降りると、売買の仲介人と思わしき人物の姿が目に入る。
「シエル・グレーティア様。お初目にかかります。
私は近衛隊のジョンソンと申します。本日はご検討頂いております土地について詳しくご案内致しますので、どうぞ宜しくお願い致します」
「シエル・グレーティアと申しますわ。こちらこそ、よろしくお願いします」
早速挨拶をされたから、私も挨拶を返す。
それからすぐに日傘を広げて、土地の方に視線を戻した。
今日は雲一つない青空が広がっているから、日差しが少し熱い。
この陽の光を浴びていると日焼けをしてしまうから、普段から用意している日傘を広げる。
冒険者として行動している時は、手の塞がる日傘ではなく光の魔法で日差しを遮るのだけど、近衛兵の前で魔法を使うわけにはいかないから、日傘しか使えないのよね……。
「足元が悪いですが、中まで入られますか?」
「ええ、お願いしますわ」
「承知いたしました。では、こちらへ」
ジョンソンさんの後を追い、乾いた土に足を踏み出す私。
この土地は雑草一つ生えていない上に、きれいに均されているから、見た目よりもすごく歩きやすい。
けれど、三分近く歩いたのに、まだ半分しか進めていないのよね。
庭園づくりは楽しそうだけれど、これだけ広いとお屋敷に入るまでに苦労しそうだわ。
「あの塀の向こうにも道がありますの?」
「左様でございます。あちらは裏口として使われることが多い道ですが、どちらも騎士団が厳重に警備しているので、襲撃に遭うことは有り得ないでしょう」
面している道が多いほど警備も難しくなるのだけど、この辺りは許可された人しか入れない上に騎士団の警備付きらしい。
Sランク冒険者の家が襲われることは有り得ないけれど、冒険者を引退した後のことを考えると警備は万全の方が良いのよね。
だから、騎士団の詰め所が近くて治安も良いこの場所は悪くないと思う。
「警備が万全なのは有難いですわ。
少し気になったのですけれど、ここはどなたのお屋敷が建っていましたの?」
「屋敷ではなく、騎士団の訓練場として使っておりました。
訓練場を一か所に集めることになったので、ここは売却することになったのです」
「そうでしたのね」
話を聞いていると、この土地には目立つ問題は無さそうだわ。
けれど、この広さは持て余してしまうに違いないから、すごく悩んでしまう。
「クラウス、この土地だと門から家まで時間がかかってしまうと思うのだけど……」
「家を建てる場所を工夫すれば気にならないだろう。そうだな……表の庭を小さくして、門にすぐに着くようにすることも出来る。警備を考えたら、塀との距離はある程度保ちたいが、この辺りの治安なら問題無いよ。
それに、これだけの広さがあれば馬も持てるし、帝都の中の移動が今までよりも便利になると思う」
「そう聞くと、魅力的に見えてきたわ。
ジョンソンさん、この土地はいくらしますの?」
上手く使えば広い土地でも問題無いと分かったけれど、一番心配なのはやっぱりお金のこと。
土地だけ手に入っても、それで全財産が吹き飛んでしまったら元も子も無いもの。
Sランク冒険者なら下手な貴族よりもお金には困らないけれど、この帝都の一等地に見合うだけのお屋敷となれば、何年かかるか想像も出来ないのだから、慎重に決めなくちゃ。
「聖金貨ですと、一万枚でお釣りが出せる金額です」
「思っていたよりも安いのですね。驚きましたわ」
昨日頂いた報奨金の半分。そう思ったら、この土地がすごく魅力的に見えてしまった。
聖金貨一万枚はかなりの大金なのに、不思議だわ。
「クラウス、この土地にしても良いかしら?」
「ああ、もちろん。
ここ以外に良い場所は無いから、納得してくれて良かったよ」
クラウスは最初からこの土地を買うつもりだったみたいで、どこか安心したような雰囲気を纏っている。
もしも私が反対しても、彼ならどんな手を使ってでも私を説得しようとするに違いないから、余計な心労をかけずに済んで本当に良かったわ。
クラウスは「部屋の前で待っている」とだけ口にして廊下に出て行ったから、待たせないようにと簡素なドレスを選ぶ。
これなら一人でも着替えられるから、侍女の手を借りればあっという間なのよね。
「こんな感じで宜しかったでしょうか?」
「ええ、すごく良いわ。ありがとう」
最後に、手紙と一緒に入っていた髪飾りを着けたら、今日の外行きの準備は完成。
パーティー用のドレスと違ってすごく動きやすいから、身体が軽くなった気がするわ。
「お待たせ」
「気にしなくて良い。俺が言い出したことだからな」
「それでもよ」
いつものように手を重ねてから、馬車が待っているという玄関に向かう私達。
広いお屋敷だから玄関まで移動するだけでも時間がかかるのだけど、この間ずっとクラウスは私の髪飾りには気付かなかったみたい。
少し残念だけれど、目立たないものだから仕方ないわよね……。
いつもの読心術が不調みたいだから、タイミングよく声を掛けられることもなかった。
そうして歩くこと数分。玄関が見えるところに差し掛かると、使用人さんたちが見送りのために集まっている様子が目に入った。
まるでパーティーに向かうときのようだけど、エイブラム家ではこれが当たり前。
クラウスと手を重ねたりエスコートされることには慣れてきたけれど、この見送りには慣れないから、少しだけくすぐったい。
「「行ってらっしゃいませ!」」
「行ってきます」
「行ってきますわ」
恭しく頭を下げる使用人さんたちに笑顔を返してから馬車に乗ると、間もなく馬のいななきに続けて車輪が動く感覚が伝わってきた。
もう目的地は御者さんが把握しているみたいで、迷いなく門を潜り抜けている様子。
そんな時、ふとこんな問いかけをされた。
「こういう時に髪飾りを着けているなんて珍しいな。
家族からの贈り物か?」
「ええ、妹たちが作ってくれたの。
こんなこと初めてだったから嬉しくて」
「見ないデザインだとは思ったが、まさか手作りとは……。
シエルもそうだが、シエルの家族も本当にすごい才能を持っているのだな」
感心するような表情を浮かべながら、まじまじと髪飾りを見つめるクラウス。
少しして、彼の顔が離れたところで、私も口を開く。
「私も驚いたのよね。こんなに綺麗に作れるなんて知らなかったもの」
「シエルを驚かそうと必死に練習したのかもしれないな」
「二人とも器用ではなかったから、手をけがしていないか心配だわ……」
「それは心配だ。シエルの妹なると、猶更。
シエルもよく無理しようとしているからね」
「反論出来ないわ……」
クラウスの指摘には心当たりしかなくて、言い訳さえも口に出来なくなってしまう。
リリアの根が私に似ていたら、きっと針を何度も指にさしてしまっても、血が付かないように工夫して続けているに違いないわ。
私なら痛い思いをしても、治癒魔法で血を止めながら続けるはずだから。
リリアは治癒魔法を使えないから、指を穴だらけにしていても不思議ではないのよね……。
そう思ったら、すごく心配になってしまった。
「土地を見終わったら、お礼を言いに行ってもいいかしら?」
「もちろん。エイブラム邸に戻ったら、すぐ準備をしよう。
大聖祭があるから早めに戻りたいが、それでも大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとう」
クラウスの手を握りながら答えると、優しい手つきで私の手が包み返される。
そんな時、タイミングよく馬車が止まって御者台から声がかけられた。
「到着いたしました。すぐに開けますのでお待ちください」
「分かった」
「分かりましたわ」
返事をしながら窓の外を見ると、そこには帝都の中とは思えないほど広々とした空き地が広がっていた。
両隣は公爵邸と聞いていたのだけど、下手をすれば両隣の敷地よりも一回りは大きいように思えてしまう。
「こんなに広い土地、私達に買えるのかしら?」
「今までの報奨金があるから、問題無い。俺の貯金もあるし、前の家の土地を売ればそれも足しになる。
それと、家は一生を共にするかもしれないから、贅沢だとか勿体無いとかは思わないように気を付けてほしい」
「……頑張ってみるわ」
そう口にしてから、馬車を降りるクラウス。
私も彼に続いて降りると、売買の仲介人と思わしき人物の姿が目に入る。
「シエル・グレーティア様。お初目にかかります。
私は近衛隊のジョンソンと申します。本日はご検討頂いております土地について詳しくご案内致しますので、どうぞ宜しくお願い致します」
「シエル・グレーティアと申しますわ。こちらこそ、よろしくお願いします」
早速挨拶をされたから、私も挨拶を返す。
それからすぐに日傘を広げて、土地の方に視線を戻した。
今日は雲一つない青空が広がっているから、日差しが少し熱い。
この陽の光を浴びていると日焼けをしてしまうから、普段から用意している日傘を広げる。
冒険者として行動している時は、手の塞がる日傘ではなく光の魔法で日差しを遮るのだけど、近衛兵の前で魔法を使うわけにはいかないから、日傘しか使えないのよね……。
「足元が悪いですが、中まで入られますか?」
「ええ、お願いしますわ」
「承知いたしました。では、こちらへ」
ジョンソンさんの後を追い、乾いた土に足を踏み出す私。
この土地は雑草一つ生えていない上に、きれいに均されているから、見た目よりもすごく歩きやすい。
けれど、三分近く歩いたのに、まだ半分しか進めていないのよね。
庭園づくりは楽しそうだけれど、これだけ広いとお屋敷に入るまでに苦労しそうだわ。
「あの塀の向こうにも道がありますの?」
「左様でございます。あちらは裏口として使われることが多い道ですが、どちらも騎士団が厳重に警備しているので、襲撃に遭うことは有り得ないでしょう」
面している道が多いほど警備も難しくなるのだけど、この辺りは許可された人しか入れない上に騎士団の警備付きらしい。
Sランク冒険者の家が襲われることは有り得ないけれど、冒険者を引退した後のことを考えると警備は万全の方が良いのよね。
だから、騎士団の詰め所が近くて治安も良いこの場所は悪くないと思う。
「警備が万全なのは有難いですわ。
少し気になったのですけれど、ここはどなたのお屋敷が建っていましたの?」
「屋敷ではなく、騎士団の訓練場として使っておりました。
訓練場を一か所に集めることになったので、ここは売却することになったのです」
「そうでしたのね」
話を聞いていると、この土地には目立つ問題は無さそうだわ。
けれど、この広さは持て余してしまうに違いないから、すごく悩んでしまう。
「クラウス、この土地だと門から家まで時間がかかってしまうと思うのだけど……」
「家を建てる場所を工夫すれば気にならないだろう。そうだな……表の庭を小さくして、門にすぐに着くようにすることも出来る。警備を考えたら、塀との距離はある程度保ちたいが、この辺りの治安なら問題無いよ。
それに、これだけの広さがあれば馬も持てるし、帝都の中の移動が今までよりも便利になると思う」
「そう聞くと、魅力的に見えてきたわ。
ジョンソンさん、この土地はいくらしますの?」
上手く使えば広い土地でも問題無いと分かったけれど、一番心配なのはやっぱりお金のこと。
土地だけ手に入っても、それで全財産が吹き飛んでしまったら元も子も無いもの。
Sランク冒険者なら下手な貴族よりもお金には困らないけれど、この帝都の一等地に見合うだけのお屋敷となれば、何年かかるか想像も出来ないのだから、慎重に決めなくちゃ。
「聖金貨ですと、一万枚でお釣りが出せる金額です」
「思っていたよりも安いのですね。驚きましたわ」
昨日頂いた報奨金の半分。そう思ったら、この土地がすごく魅力的に見えてしまった。
聖金貨一万枚はかなりの大金なのに、不思議だわ。
「クラウス、この土地にしても良いかしら?」
「ああ、もちろん。
ここ以外に良い場所は無いから、納得してくれて良かったよ」
クラウスは最初からこの土地を買うつもりだったみたいで、どこか安心したような雰囲気を纏っている。
もしも私が反対しても、彼ならどんな手を使ってでも私を説得しようとするに違いないから、余計な心労をかけずに済んで本当に良かったわ。
538
お気に入りに追加
4,511
あなたにおすすめの小説
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
【コミカライズ決定】契約結婚初夜に「一度しか言わないからよく聞け」と言ってきた旦那様にその後溺愛されています
氷雨そら
恋愛
義母と義妹から虐げられていたアリアーナは、平民の資産家と結婚することになる。
それは、絵に描いたような契約結婚だった。
しかし、契約書に記された内容は……。
ヒロインが成り上がりヒーローに溺愛される、契約結婚から始まる物語。
小説家になろう日間総合表紙入りの短編からの長編化作品です。
短編読了済みの方もぜひお楽しみください!
もちろんハッピーエンドはお約束です♪
小説家になろうでも投稿中です。
完結しました!! 応援ありがとうございます✨️
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる