43 / 254
№43 偽物
しおりを挟む
俺のこと、見たことないですか?
――類家さんは自分の顔を指差して聞いてきた。
あんまりテレビを見ませんか。実は数年前まで漫才で稼いでいました。相方は一緒に上京してきた幼馴染みで、それなりに楽しくやっていました。
少しずつ仕事が増えてきて、もっと知ってもらいたいなって二人で考えたとき、霊感がある振りをしようということになりました。相方は口が達者なんで相方を霊能者にして、俺は幼馴染みだから「こいつがこう言うときは大体やばいんです」って話の信憑性をあげる役をしました。
それが結構受けて心霊番組に少しだけだしてもらえるようになってきました。そうすると後輩とかも俺達を見る目が変わってすり寄ってくるんです。悪い気もしなくて面倒を見ていました。
気が大きくなった相方が、ある夜、有名な心霊スポットにいこうと言い出しました。後輩たちはバカみたいに喜んで相方に付いていきます。大きめの車を借りて俺が運転しました。
俺はなんかいやーな予感がしてました。相方が後輩の前でぼろを出すんじゃないかって。調子に乗ってるのがよくわかったんで。
心霊スポットのトンネルの前につくとやっぱり相方は「向こうに影が」とか「この辺の空気が冷たい」なんてそれっぽいことを言い出しました。それで喜ぶ後輩たちを見ていたら、一人明らかにテンションが下がっているやつがいました。車酔いでもしたのかと思って声をかけると、そいつは真っ青な顔で
「ここ、マジでヤバイところです」
と言い出したんです。俺は遠回しに後輩が嘘を指摘したのかと思いました。こいつが他の後輩に何か言う前に帰ろうと、相方を中心にワイワイ騒いでいる奴らに声を掛けて車に乗せました。
でも相方がなかなか乗ってきません。トンネルの方を見てたたずんでいます。私は肩に手をかけました。すると相方の耳から白い煙のようなものがスーッと抜けていったのです。そして相方の息は徐々に荒くなっていき、過呼吸のように苦しそうに口をパクパクさせて倒れこんだんです。慌てて後輩に手伝ってもらい相方を車で病院に運びました。医者曰くかなり危険な状態だったらしいんですが、一命をとりとめました。
しかしあれ以来相方は魂が抜けたようにぼーっとして何もしないようになりました。
俺達は親の反対を押し切って上京したので、頼る相手がいなくて、俺が一人で相方の面倒を見ています。もちろん漫才なんかできないから、貯金を切り崩したりアルバイトしたりの生活です。あの時忠告してくれた後輩は、今大御所の何人かに気に入られて、コンテストとかでは結果を残しませんが小さな仕事が大きな仕事に変わりそうだとか。他の後輩はあれ以来遊びに来ないけど、そいつだけはいつも手土産を持ってきてくれます。相方のお見舞いに来てくれるのもあいつだけです。
きっと……ああいう『本物』が売れていくんでしょうね……。
――類家さんは自分の顔を指差して聞いてきた。
あんまりテレビを見ませんか。実は数年前まで漫才で稼いでいました。相方は一緒に上京してきた幼馴染みで、それなりに楽しくやっていました。
少しずつ仕事が増えてきて、もっと知ってもらいたいなって二人で考えたとき、霊感がある振りをしようということになりました。相方は口が達者なんで相方を霊能者にして、俺は幼馴染みだから「こいつがこう言うときは大体やばいんです」って話の信憑性をあげる役をしました。
それが結構受けて心霊番組に少しだけだしてもらえるようになってきました。そうすると後輩とかも俺達を見る目が変わってすり寄ってくるんです。悪い気もしなくて面倒を見ていました。
気が大きくなった相方が、ある夜、有名な心霊スポットにいこうと言い出しました。後輩たちはバカみたいに喜んで相方に付いていきます。大きめの車を借りて俺が運転しました。
俺はなんかいやーな予感がしてました。相方が後輩の前でぼろを出すんじゃないかって。調子に乗ってるのがよくわかったんで。
心霊スポットのトンネルの前につくとやっぱり相方は「向こうに影が」とか「この辺の空気が冷たい」なんてそれっぽいことを言い出しました。それで喜ぶ後輩たちを見ていたら、一人明らかにテンションが下がっているやつがいました。車酔いでもしたのかと思って声をかけると、そいつは真っ青な顔で
「ここ、マジでヤバイところです」
と言い出したんです。俺は遠回しに後輩が嘘を指摘したのかと思いました。こいつが他の後輩に何か言う前に帰ろうと、相方を中心にワイワイ騒いでいる奴らに声を掛けて車に乗せました。
でも相方がなかなか乗ってきません。トンネルの方を見てたたずんでいます。私は肩に手をかけました。すると相方の耳から白い煙のようなものがスーッと抜けていったのです。そして相方の息は徐々に荒くなっていき、過呼吸のように苦しそうに口をパクパクさせて倒れこんだんです。慌てて後輩に手伝ってもらい相方を車で病院に運びました。医者曰くかなり危険な状態だったらしいんですが、一命をとりとめました。
しかしあれ以来相方は魂が抜けたようにぼーっとして何もしないようになりました。
俺達は親の反対を押し切って上京したので、頼る相手がいなくて、俺が一人で相方の面倒を見ています。もちろん漫才なんかできないから、貯金を切り崩したりアルバイトしたりの生活です。あの時忠告してくれた後輩は、今大御所の何人かに気に入られて、コンテストとかでは結果を残しませんが小さな仕事が大きな仕事に変わりそうだとか。他の後輩はあれ以来遊びに来ないけど、そいつだけはいつも手土産を持ってきてくれます。相方のお見舞いに来てくれるのもあいつだけです。
きっと……ああいう『本物』が売れていくんでしょうね……。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる