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№42 魔女
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子供のころに怖かったものも、大人になったらたいてい正体がわかったり、大したものじゃなかったりしますよね。だから私は心霊現象とかそういうのは子供か、大人になりきれない人たちが見る幻想のようなものだと思っていました。
私が子供のころに怖かったのは校区内にあったボロ屋です。それを友達と「お化け屋敷」と呼んでいました。そこにお婆さんが一人で住んでいました。お婆さんは「魔女」と呼ばれていました。子供は怖がりつつも、怖いものに近づいていきます。親や学校の先生は「あの家やお婆さんには決して近づくな」と私たちに口を酸っぱくして言っていました。
私は一度進学で地元を離れ、就職して帰ってきました。そして地元の友達とちょっとした同窓会を開きました。その時に誰かがそのボロ屋のことを言いだしました。まだあるのかなって。そこで私はやっとその家を思い出しました。今思うと、お化け屋敷でも何でもない。ただ家の修繕費がない低所得の独居老人だったんだろう、と皆で笑い合いました。
「可哀そうだけど、偏屈で意地悪だったからね」
と友人の一人が言いました。私はそのお婆さんと話したことがあるのかとびっくりしました。
「ほら、あなたもミナちゃんたちと一緒に……」
その時全員がはっとした表情をしました。話していた友人すら。私たちはとんでもないことを思いだしたんです、同時に。あの家を興味本位で訪ねたことが、私たちにはあったんです。
そしてミナちゃんという子が先頭で家に侵入した際、ドアが閉まって出られなくなったのです。皆怖くて一度逃げてしまって。その日のうちに再び家に行くと玄関のところにお婆さんが怖い顔をして立っていました。ミナちゃんは? と誰かが訊くと「しらん」と一言。
結局ミナちゃんは行方不明になってしまいました。もちろん大人にはお化け屋敷にいることは伝えましたよ。でも見つからなくて……。
同窓会の後、私と数人はなんとなくお化け屋敷に向かっていました。誰もが最悪な気持ちだったので、無くなってればいいのにと思っていました。しかしお化け屋敷はまだありました。そしてあの頃と変わらず恐ろしい姿をしていました。ふと埃で曇った窓に人影が映りました。あの時の老婆に見えます。まだ生きていたのかと少し驚きました。そしてもう一人、影が映りました。
……ミナちゃんだ。
あの頃のままのミナちゃんがじっとこちらを見ているんです。一緒に来た友人を見ました。全員が青い顔をしていました。
――龍堂さんはそこで私が出した茶を一口飲んだ。
私たちはまた逃げました。ミナちゃんはまだお化け屋敷の魔女にとらわれたままです。私が出来ることは、私の娘にあの家に近づかないよう、何度も繰り返して言うことだけです。
私が子供のころに怖かったのは校区内にあったボロ屋です。それを友達と「お化け屋敷」と呼んでいました。そこにお婆さんが一人で住んでいました。お婆さんは「魔女」と呼ばれていました。子供は怖がりつつも、怖いものに近づいていきます。親や学校の先生は「あの家やお婆さんには決して近づくな」と私たちに口を酸っぱくして言っていました。
私は一度進学で地元を離れ、就職して帰ってきました。そして地元の友達とちょっとした同窓会を開きました。その時に誰かがそのボロ屋のことを言いだしました。まだあるのかなって。そこで私はやっとその家を思い出しました。今思うと、お化け屋敷でも何でもない。ただ家の修繕費がない低所得の独居老人だったんだろう、と皆で笑い合いました。
「可哀そうだけど、偏屈で意地悪だったからね」
と友人の一人が言いました。私はそのお婆さんと話したことがあるのかとびっくりしました。
「ほら、あなたもミナちゃんたちと一緒に……」
その時全員がはっとした表情をしました。話していた友人すら。私たちはとんでもないことを思いだしたんです、同時に。あの家を興味本位で訪ねたことが、私たちにはあったんです。
そしてミナちゃんという子が先頭で家に侵入した際、ドアが閉まって出られなくなったのです。皆怖くて一度逃げてしまって。その日のうちに再び家に行くと玄関のところにお婆さんが怖い顔をして立っていました。ミナちゃんは? と誰かが訊くと「しらん」と一言。
結局ミナちゃんは行方不明になってしまいました。もちろん大人にはお化け屋敷にいることは伝えましたよ。でも見つからなくて……。
同窓会の後、私と数人はなんとなくお化け屋敷に向かっていました。誰もが最悪な気持ちだったので、無くなってればいいのにと思っていました。しかしお化け屋敷はまだありました。そしてあの頃と変わらず恐ろしい姿をしていました。ふと埃で曇った窓に人影が映りました。あの時の老婆に見えます。まだ生きていたのかと少し驚きました。そしてもう一人、影が映りました。
……ミナちゃんだ。
あの頃のままのミナちゃんがじっとこちらを見ているんです。一緒に来た友人を見ました。全員が青い顔をしていました。
――龍堂さんはそこで私が出した茶を一口飲んだ。
私たちはまた逃げました。ミナちゃんはまだお化け屋敷の魔女にとらわれたままです。私が出来ることは、私の娘にあの家に近づかないよう、何度も繰り返して言うことだけです。
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