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あれから1か月が経った。
今でもまだ夢に見る。
その度に目が覚め、自室にいることに胸をなでおろす。あまり良く眠れなくなってしまったせいか、暑さのせいか食欲もない。でも元気がないところを見せるとユズちゃんが泣きそうになるし、奨くんも心配してゼミ等がないときはほぼ家にいてくれる。漣と朔は夏休みに入ったこともあり、時間が取れる限り来てくれている。
だからもっと元気にならなきゃ。そう思っているのに、ユズちゃんや3人に今まで以上に優しくしてもらっていることに、また負担を掛けているのではと恐縮してしまう自分がいる。
明日からまた大学も始まる。
こんなんじゃダメだ。
いつまでもみんなに頼っていたら、今までと同じだ。
早く、早く誰かを選ばないと……。
でも誰を……?
選べなかったら……?
あの日に経験した1人になってしまうかもしれない恐怖が蘇ってきて、アズは身体を震わせた。
「アズ、ちょっといいかな?」
ノックがしてドアが開く。
奨くんに朔、漣も見える。
「うん、大丈夫」
返事をすると、3人が入ってくる。
「体調どう?」
「うん、平気だよ」
「明日から大学だよね」
「大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。明日からもちゃんと行くよ。でも……」
アズは一旦言葉を切った。
「本当は、ちょっとまだ怖いかな……。ダメだよね俺……」
涙声となったアズを3人はそっと抱き、寄り添う。
「大丈夫。どんなことがあってもアズを一人にしない」
「自分だけでなんとかしようなんて思わないでいい」
「頼ってもらえることも嬉しいんだよ」
「で、でも……」
「アズは俺たちを信じるってあの時決めたんだろ」
「ずっと信じてもらいたいんだよ」
「だから、よく聞いて」
そう言って、3人が跪く。
「みんなアズを愛してる。アズも俺たちのことを愛してる。だから」
「夫が3人いたっていいだろ? これが俺たちの形」
「もう誰かを選ぼうと思わないでいい。アズが居てくれることが俺たちの幸せなんだ」
「水瀬和珠、俺たちと、結婚して下さい」
一瞬、何を言われているのか分からなかった。
頭まで到達すると、今度は混乱した。
え?
漣と、
朔と、
奨くんと?
なに……?
以前、3人から告白を受けた時と同じような衝撃だった。
俺に?
なんて?
結婚……って?
俺と?
みんなで??
それでも自分を見上げてくる3人の真剣な眼差しと想いを、もう否定することは出来なかった。
こんな俺でも醜くないと受け入れてくれた、
誰かを選ぶことも出来なかったのに3人とも探しに来てくれた、
そのままでいいと言ってくれた、
そして、今、一生愛していると、
ずっと一緒に居たいと言ってくれる。
「はい」
たった一言そう言うと、後はもう言葉に出来なかった。
アズは流れる涙をそのままに、何度も何度も頷いた。
**
事件からしばらく立ってもアズはなかなか回復しなかった。
夜よく眠れないせいか朝は遅くなったり、昼間に寝てしまったり、そのせいでますます夜は眠れずに、食事も進まず、生活は乱れた。医師から眠剤も処方されていたが、きちんと飲んでいなかったらしい。数週間でアズはどんどん痩せて行ってしまった。俺たちが顔を見せれば『大丈夫だよ』と微笑むが、その笑顔があまりに儚くてそのまま消えてしまいそうで、俺たちは焦った。
アズの心に刻み付いた傷は考えていたよりも深かったことを見せつけられた。
小さい頃から何度も自分の中に自分をしまいこみ、自分を否定してきたのだ。誰にも知られたくない部分を往来で容赦なく暴き立てられたのだ。ようやく俺たちを受け入れ、周りの愛を受け取り、自分を大事にし始めてくれていたと感じていて所だったからより反動が大きく出てしまったようだ。
そうして俺たちは前々から可能性として話し合っていた選択の一つを実行しようと決めた。誰かをアズに選んでもらうのではなく、みんなでアズを守っていくことに。アズがこれ以上悩まないように、4人で結婚するということに。
一番の懸念はアズ本人が承諾するかどうかだった。同性婚は既にかなり前に認められているし、各所への根回しはした。俺や漣の親はなんだかんだと言ってきたが、絶縁すると言ったら黙った。なら最初から口出ししてくんな。4人でとなると重婚になるが……いや、法的にどうということは関係ない。俺たちとアズだけの関係だ。周りは俺たちでいくらでも何とかなる。
プロポーズの時は自分の手が震えるのが分かった。
もし拒まれたらアズはもう俺たちに頼ろうとは思わないだろう。そうなったらもう、アズの意思とは関係なく閉じ込めてしまうしかない。
でもそれはもう二度とアズの心からの笑顔は見られないことを意味する。
どうかどうか手をとって、アズ。
お前を傷つけたくない。だけどもう、隣にお前がいる幸福を知ってしまった。お前がいないと生きていけないんだ。だからどうか、自分の意思で俺を、俺たちを選んで欲しい。
プロポーズ後、アズは精神的に落ち着いたのかみるみる回復していった。
それを見て3人は自分たちの選択が間違っていなかったことに安堵した。ただ、幸せオーラをまといさらにキラキラが増したアズに寄る虫が増え、今まで以上に対処することになったのは誤算だった。
全くアズの魅力には上限がない。
今でもまだ夢に見る。
その度に目が覚め、自室にいることに胸をなでおろす。あまり良く眠れなくなってしまったせいか、暑さのせいか食欲もない。でも元気がないところを見せるとユズちゃんが泣きそうになるし、奨くんも心配してゼミ等がないときはほぼ家にいてくれる。漣と朔は夏休みに入ったこともあり、時間が取れる限り来てくれている。
だからもっと元気にならなきゃ。そう思っているのに、ユズちゃんや3人に今まで以上に優しくしてもらっていることに、また負担を掛けているのではと恐縮してしまう自分がいる。
明日からまた大学も始まる。
こんなんじゃダメだ。
いつまでもみんなに頼っていたら、今までと同じだ。
早く、早く誰かを選ばないと……。
でも誰を……?
選べなかったら……?
あの日に経験した1人になってしまうかもしれない恐怖が蘇ってきて、アズは身体を震わせた。
「アズ、ちょっといいかな?」
ノックがしてドアが開く。
奨くんに朔、漣も見える。
「うん、大丈夫」
返事をすると、3人が入ってくる。
「体調どう?」
「うん、平気だよ」
「明日から大学だよね」
「大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。明日からもちゃんと行くよ。でも……」
アズは一旦言葉を切った。
「本当は、ちょっとまだ怖いかな……。ダメだよね俺……」
涙声となったアズを3人はそっと抱き、寄り添う。
「大丈夫。どんなことがあってもアズを一人にしない」
「自分だけでなんとかしようなんて思わないでいい」
「頼ってもらえることも嬉しいんだよ」
「で、でも……」
「アズは俺たちを信じるってあの時決めたんだろ」
「ずっと信じてもらいたいんだよ」
「だから、よく聞いて」
そう言って、3人が跪く。
「みんなアズを愛してる。アズも俺たちのことを愛してる。だから」
「夫が3人いたっていいだろ? これが俺たちの形」
「もう誰かを選ぼうと思わないでいい。アズが居てくれることが俺たちの幸せなんだ」
「水瀬和珠、俺たちと、結婚して下さい」
一瞬、何を言われているのか分からなかった。
頭まで到達すると、今度は混乱した。
え?
漣と、
朔と、
奨くんと?
なに……?
以前、3人から告白を受けた時と同じような衝撃だった。
俺に?
なんて?
結婚……って?
俺と?
みんなで??
それでも自分を見上げてくる3人の真剣な眼差しと想いを、もう否定することは出来なかった。
こんな俺でも醜くないと受け入れてくれた、
誰かを選ぶことも出来なかったのに3人とも探しに来てくれた、
そのままでいいと言ってくれた、
そして、今、一生愛していると、
ずっと一緒に居たいと言ってくれる。
「はい」
たった一言そう言うと、後はもう言葉に出来なかった。
アズは流れる涙をそのままに、何度も何度も頷いた。
**
事件からしばらく立ってもアズはなかなか回復しなかった。
夜よく眠れないせいか朝は遅くなったり、昼間に寝てしまったり、そのせいでますます夜は眠れずに、食事も進まず、生活は乱れた。医師から眠剤も処方されていたが、きちんと飲んでいなかったらしい。数週間でアズはどんどん痩せて行ってしまった。俺たちが顔を見せれば『大丈夫だよ』と微笑むが、その笑顔があまりに儚くてそのまま消えてしまいそうで、俺たちは焦った。
アズの心に刻み付いた傷は考えていたよりも深かったことを見せつけられた。
小さい頃から何度も自分の中に自分をしまいこみ、自分を否定してきたのだ。誰にも知られたくない部分を往来で容赦なく暴き立てられたのだ。ようやく俺たちを受け入れ、周りの愛を受け取り、自分を大事にし始めてくれていたと感じていて所だったからより反動が大きく出てしまったようだ。
そうして俺たちは前々から可能性として話し合っていた選択の一つを実行しようと決めた。誰かをアズに選んでもらうのではなく、みんなでアズを守っていくことに。アズがこれ以上悩まないように、4人で結婚するということに。
一番の懸念はアズ本人が承諾するかどうかだった。同性婚は既にかなり前に認められているし、各所への根回しはした。俺や漣の親はなんだかんだと言ってきたが、絶縁すると言ったら黙った。なら最初から口出ししてくんな。4人でとなると重婚になるが……いや、法的にどうということは関係ない。俺たちとアズだけの関係だ。周りは俺たちでいくらでも何とかなる。
プロポーズの時は自分の手が震えるのが分かった。
もし拒まれたらアズはもう俺たちに頼ろうとは思わないだろう。そうなったらもう、アズの意思とは関係なく閉じ込めてしまうしかない。
でもそれはもう二度とアズの心からの笑顔は見られないことを意味する。
どうかどうか手をとって、アズ。
お前を傷つけたくない。だけどもう、隣にお前がいる幸福を知ってしまった。お前がいないと生きていけないんだ。だからどうか、自分の意思で俺を、俺たちを選んで欲しい。
プロポーズ後、アズは精神的に落ち着いたのかみるみる回復していった。
それを見て3人は自分たちの選択が間違っていなかったことに安堵した。ただ、幸せオーラをまといさらにキラキラが増したアズに寄る虫が増え、今まで以上に対処することになったのは誤算だった。
全くアズの魅力には上限がない。
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