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それから
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今、俺は、毎日家で3人を待っている。
漣は大学在学中にスカウトされ、今や売れっ子のモデルで、漣が出ていない雑誌はないほど。パリやミラノ、NYにも呼ばれるようになって国内だけでなく、海外も飛び回っている。時々ユズちゃんと撮影が重なるみたいで、「今日もうるさかった」とか呟いている。
朔は弁護士になった。
朔も大学在学中に司法試験に合格し、大手の弁護士事務所へ就職した。正義のヒーローのような朔は面倒見もよくて、評判が高い。何件もの案件を抱えていて、早く出て遅くまで帰ってこない日もある。いつも帰ってからも調べ物をしたり、資料とにらめっこしてる。
奨くんは医師だ。
水野のおじ様の持つ複数の病院で理事もやりながら医師としても勤務し、こちらも毎日忙しくしている。時々海外へ研修や手術を依頼されて行ったりしているけど、ベースは日本に置いておきたいんだって。
そして俺は、大学を卒業しても、就職はしなかった。
就職活動時期になってエントリーシートの下書きをしようかとプリントアウトし、思いつくまま色々書いていたら、3人ともに変な顔をされた。
「アズ何やってんの?」
もう既にモデルとしてだいぶ活躍し始めていた漣が言った。
「え? どしたの?」
漣が朔に俺から奪ったシートを見せる。
「エントリーシート? は? アズどーゆーこと?」
朔も眉を顰める。
そして奨くんも。
「どこに行く気なの? アズは俺たちと一緒でしょ」
「うん、そうだよ? でも俺もそろそろ就職活動しないと。皆みたいに目指す目標があった訳じゃないから、まだ色々悩み中なんだけどね」
「わかってねーなー」
朔がため息とともに言う。
「アズはさ、どこにも行かなくていいんだよ。だって俺たちと結婚するんでしょ?」
「奨くん……。それはそうだけど。でも」
言いかけたところで漣が遮る。
「アズ、俺が「俺たち!」……俺たちがお前一人養えないとでも?」
「え? お、思ってないけど」
「それならこれは必要ないでしょ?」
奨くんが優雅な手つきで下書きをシュレッダーしてしまった。
「でもせっかく大学も行ったし、ちゃんと就職した方がいいかと……」
「アズは俺のとこ「俺たち」ったく、いちいち口挟むなよ、漣。自分だってさっき俺っていってたじゃん。……ともかく、アズは俺たちのところに永久就職するんだから充分でしょ」
「朔……」
「お前、永久就職って古くね?」
「んだよ、就職の話ししてたんだからいいだろ。」
「にしてもさ、ウケる。いつの時代?」
「バカにしてんのかよ、漣」
「アズ、こっち」
喧嘩を始めた二人から奨が肩を抱いてアズを離す。
「ねぇ、アズ、二人の言う通りだよ。就職してどうするの? お金はいっぱいあるじゃない。俺一人だってアズのことうんと満足させてあげられるくらい稼いでくるよ、心配しないで。」
「え、うん。それは心配してない。奨くんも二人も凄い頑張ってくれると思ってる。」
「じゃあどうして?」
「お、俺だって自分の力で稼ぎたい。みんなに色々したい。」
「アズはちゃんと自分で稼いでるじゃない。」
「?」
「あぁ、アズはあれを自分の力で稼いでるって思ってないのか。そう言うところもカワイイね。」
学生時代から数字の分析は好きだったし、ちょっとずつ投資もしていた。その頃からユズちゃんの資産管理は任されていた。
そんな話しをちょっとしたら、3人とも自分達のお金も投資して欲しいと言ってきて、預かったお金を運用していたら、割とまとまった資産が出来た。そして、今もそれは続けている。
「あー、うん?」
「アズは今のままでいいってことだよ」
チュッとそのままキスをされると、後ろから別の手に抱き締められる。
「奨はいつも抜け駆けするよな」
「漣!」
「アズ、俺も」
そう言って漣がキスしてくる。
「君たちがいつも勝手にケンカするからでしょ」
奨くんは涼しい顔。
「ちょっ、漣、お前もいい加減にしろよ! アズ、次俺ね!」
「まだダメ」
「ダメじゃねーよ、アズのこと離せよ」
「やだ」
「漣、お前はー!!」
「はいはい、お子ちゃま達ケンカしないの。アズが困るでしょ」
「「お子ちゃまじゃね~!!」」
漣が奨くんに突っかかっていくどさくさ紛れで、朔がふっと近寄ってきてキスをしてきた。
**
結局3人がなぜだか強く俺が家にいることを望んでたのもあって、就職はしなかった。家にいるのは苦じゃないし、最近始めた料理も楽しい。時々タキさんが訪ねてきてくれるので、今はあのアップルパイを教わっている。
3人が家事代行サービスも入れてくれるから(来てくれるのはいつもおばあちゃんだけど)、家も綺麗で快適だ。
稼ぐという意味ではいわゆるトレーダーというものになるのかもしれない。でも、毎日長時間パソコンに張り付いているわけでもないし、ときどき親の会社の設備投資の相談もしている。不動産にも投資しているから、自由業なのかな?なんだろ?
だからと言って、みんな全部を俺に預けているわけではない。それぞれの稼いだ分はちゃんと自分達で使ってほしいし、なんだか俺が全部任されたら、もし万が一俺と別れたいって思っても別れ辛いと思ったから。
だけど。
……そう言った時のことを今でも思い出せる……。
「お前、まだそんな事考えてるのかよ」
いじけた顔の朔。
「アズはさ、おバカさんなんだね。俺はアズと絶対に別れる気はないよ」
微笑んだままの奨くん。
「俺はアズが俺を要らないっていっても、もうアズから離れない」
表情は変えず、目を伏せたままの漣。
そうして俺が「3人は俺と絶対別れないこと」が分かるまで閉じ込められて、3人に抱き潰された。もちろん食事や睡眠には不自由はなかったけど、うん、……もう二度と言わないようにしようと思った。
それでもやっぱり全部預かることはしなかったから、それぞれが管理している部分も多いはずだ。
いきなり引っ越ししたこのマンションだって、俺はノータッチだったし。
「ど、どうしたの? ここ……」
「ん、買った。3人で」
「え?」
「買ったんだよ」
「そ、みんなで住めるとこ探したんだ。なかなかいーだろ?」
「いいっていうか、凄い……」
そう言うと3人とも嬉しそうに笑った。
日当たりの良い閑静な住宅街に建つ低層マンションの最上階。
低層だから最上階と言っても7階だ。そして7階部分全てが俺たちの1室となっていた。タワーマンションも色々見たらしいけど、ちょっぴり高いところが苦手は俺のことを考えて低層にしたらしい。そういう所がすごく嬉しい。
ベッドルームは3つ。それぞれ漣と朔と奨くんが使ってる。
書斎は5つ。3つはベッドルームと隣合わせで、ドア一枚で行き来できる。残る2つの内の大きい方が俺の部屋。
ゲストルームもあるけど、ほぼ使われてない。家は寛ぎたいから他人はあまり招きたくないんだって。たまに、ユズちゃんが来て泊まっていくけど、ユズちゃんも忙しいから泊まるのは半年に1度くらいだ。
広々としたリビングにはグランドピアノがありダイニング続いている。ダイニングの奥にはアイランドキッチン。 どこも防音仕様となっているから、周囲を気にせずに皆でセッションも出来る。
バスルームは2つで、トイレも2つ。
その他ベッドルームにはシャワールームとトイレもついている。
マンションだけどメゾネットになっていて2階があり、部屋の中にフィットネスルームやサウナもあるし、大きくはないけど室内プールも付いている。そんなに大きくはないって言っても俺たち4人が少し泳いだり寛いだりするくらいの広さはある。
「ねぇ、どうして俺の部屋にはベッドがないの?」
俺の部屋として用意されていた書斎は広くて、もはや書斎とはいえないくらいの広さだ。パソコンも2台置いた上に、本棚もたくさんついていて、その前に座り心地の良さそうな大きなソファセットが置いてあったけど、ベッドが見当たらなかった。
「これ、ソファベッドかな? これで寝ればいいの?」
「確かにソファベッドにもなるけど……」
「相変わらずの明後日な発想すんな、アズ」
「アズは可愛いね。よく考えてみて。」
半分呆れた顔の漣。
ニヤニヤとする朔。
微笑む奨くん。
「お前は俺たちと寝るだろ」
「だからお前のベッドは必要ない」
「ほら、キングサイズだから狭くないでしょ」
それぞれのベッドルーム全てに立派なキングサイズのベッドが置いてあった。
俺は毎日誰かのベッドで寝ている。
**
そっと、左手に触れる。
薬指には3連にしたリングが光る。
あのプロポーズの時にそれぞれが用意してくれたものだ。
漣と朔と奨くんも左手に指輪を付けている。
みんなは一つずつだけど。俺の左手と対になっている指輪。何から何まで用意周到で、俺もみんなに指輪を選びたかったのに、とちょっと文句を言った。そしたら……と、一人ずつとデートになって、それぞれに俺が選んだものをプレゼントすることになった。
漣には、ピアス。
パライバトリマリンのピアスは透明感が抜群ですごく綺麗だった。それにこの石は、周りの好意を引き付け人間関係を円滑にしたりする意味があるんだって。本当は繊細で、でも不器用な漣のこれからのお守りになってくれますように。
朔には、腕時計。
大きい時計。俺が付けるとチグハグな大きさだけど、朔にはピッタリだった。ゴツゴツした機械っぽいのも朔が付けると爽やかに映える。スポーツしに行く時も、ビジネスシーンでもちょっとフォーマルな場面でも、どんなシーンでも付けてもらえると思って選んだ。
奨くんには、アンクレット。
たぶん外科に進むであろう奨くんは、手術が多いはず。手術中は基本的に上半身には何も付けられないと思うから、アンクレットにした。足首だったら大丈夫かなって。何でも似合うけど、探しても俺が奨くんに贈りたいって思うものがなかなかなくて――奨くんは俺がくれるなら何でもいいとか言ってたけど――結局知り合いのデザイナーさんにオーダーして作ってもらったもの。
どれも普段からずっと身につけてもらえるもの。
俺が選んだ俺のものを付けてほしかった。
そう言うと、3人はとても喜んでくれた。
漣は大学在学中にスカウトされ、今や売れっ子のモデルで、漣が出ていない雑誌はないほど。パリやミラノ、NYにも呼ばれるようになって国内だけでなく、海外も飛び回っている。時々ユズちゃんと撮影が重なるみたいで、「今日もうるさかった」とか呟いている。
朔は弁護士になった。
朔も大学在学中に司法試験に合格し、大手の弁護士事務所へ就職した。正義のヒーローのような朔は面倒見もよくて、評判が高い。何件もの案件を抱えていて、早く出て遅くまで帰ってこない日もある。いつも帰ってからも調べ物をしたり、資料とにらめっこしてる。
奨くんは医師だ。
水野のおじ様の持つ複数の病院で理事もやりながら医師としても勤務し、こちらも毎日忙しくしている。時々海外へ研修や手術を依頼されて行ったりしているけど、ベースは日本に置いておきたいんだって。
そして俺は、大学を卒業しても、就職はしなかった。
就職活動時期になってエントリーシートの下書きをしようかとプリントアウトし、思いつくまま色々書いていたら、3人ともに変な顔をされた。
「アズ何やってんの?」
もう既にモデルとしてだいぶ活躍し始めていた漣が言った。
「え? どしたの?」
漣が朔に俺から奪ったシートを見せる。
「エントリーシート? は? アズどーゆーこと?」
朔も眉を顰める。
そして奨くんも。
「どこに行く気なの? アズは俺たちと一緒でしょ」
「うん、そうだよ? でも俺もそろそろ就職活動しないと。皆みたいに目指す目標があった訳じゃないから、まだ色々悩み中なんだけどね」
「わかってねーなー」
朔がため息とともに言う。
「アズはさ、どこにも行かなくていいんだよ。だって俺たちと結婚するんでしょ?」
「奨くん……。それはそうだけど。でも」
言いかけたところで漣が遮る。
「アズ、俺が「俺たち!」……俺たちがお前一人養えないとでも?」
「え? お、思ってないけど」
「それならこれは必要ないでしょ?」
奨くんが優雅な手つきで下書きをシュレッダーしてしまった。
「でもせっかく大学も行ったし、ちゃんと就職した方がいいかと……」
「アズは俺のとこ「俺たち」ったく、いちいち口挟むなよ、漣。自分だってさっき俺っていってたじゃん。……ともかく、アズは俺たちのところに永久就職するんだから充分でしょ」
「朔……」
「お前、永久就職って古くね?」
「んだよ、就職の話ししてたんだからいいだろ。」
「にしてもさ、ウケる。いつの時代?」
「バカにしてんのかよ、漣」
「アズ、こっち」
喧嘩を始めた二人から奨が肩を抱いてアズを離す。
「ねぇ、アズ、二人の言う通りだよ。就職してどうするの? お金はいっぱいあるじゃない。俺一人だってアズのことうんと満足させてあげられるくらい稼いでくるよ、心配しないで。」
「え、うん。それは心配してない。奨くんも二人も凄い頑張ってくれると思ってる。」
「じゃあどうして?」
「お、俺だって自分の力で稼ぎたい。みんなに色々したい。」
「アズはちゃんと自分で稼いでるじゃない。」
「?」
「あぁ、アズはあれを自分の力で稼いでるって思ってないのか。そう言うところもカワイイね。」
学生時代から数字の分析は好きだったし、ちょっとずつ投資もしていた。その頃からユズちゃんの資産管理は任されていた。
そんな話しをちょっとしたら、3人とも自分達のお金も投資して欲しいと言ってきて、預かったお金を運用していたら、割とまとまった資産が出来た。そして、今もそれは続けている。
「あー、うん?」
「アズは今のままでいいってことだよ」
チュッとそのままキスをされると、後ろから別の手に抱き締められる。
「奨はいつも抜け駆けするよな」
「漣!」
「アズ、俺も」
そう言って漣がキスしてくる。
「君たちがいつも勝手にケンカするからでしょ」
奨くんは涼しい顔。
「ちょっ、漣、お前もいい加減にしろよ! アズ、次俺ね!」
「まだダメ」
「ダメじゃねーよ、アズのこと離せよ」
「やだ」
「漣、お前はー!!」
「はいはい、お子ちゃま達ケンカしないの。アズが困るでしょ」
「「お子ちゃまじゃね~!!」」
漣が奨くんに突っかかっていくどさくさ紛れで、朔がふっと近寄ってきてキスをしてきた。
**
結局3人がなぜだか強く俺が家にいることを望んでたのもあって、就職はしなかった。家にいるのは苦じゃないし、最近始めた料理も楽しい。時々タキさんが訪ねてきてくれるので、今はあのアップルパイを教わっている。
3人が家事代行サービスも入れてくれるから(来てくれるのはいつもおばあちゃんだけど)、家も綺麗で快適だ。
稼ぐという意味ではいわゆるトレーダーというものになるのかもしれない。でも、毎日長時間パソコンに張り付いているわけでもないし、ときどき親の会社の設備投資の相談もしている。不動産にも投資しているから、自由業なのかな?なんだろ?
だからと言って、みんな全部を俺に預けているわけではない。それぞれの稼いだ分はちゃんと自分達で使ってほしいし、なんだか俺が全部任されたら、もし万が一俺と別れたいって思っても別れ辛いと思ったから。
だけど。
……そう言った時のことを今でも思い出せる……。
「お前、まだそんな事考えてるのかよ」
いじけた顔の朔。
「アズはさ、おバカさんなんだね。俺はアズと絶対に別れる気はないよ」
微笑んだままの奨くん。
「俺はアズが俺を要らないっていっても、もうアズから離れない」
表情は変えず、目を伏せたままの漣。
そうして俺が「3人は俺と絶対別れないこと」が分かるまで閉じ込められて、3人に抱き潰された。もちろん食事や睡眠には不自由はなかったけど、うん、……もう二度と言わないようにしようと思った。
それでもやっぱり全部預かることはしなかったから、それぞれが管理している部分も多いはずだ。
いきなり引っ越ししたこのマンションだって、俺はノータッチだったし。
「ど、どうしたの? ここ……」
「ん、買った。3人で」
「え?」
「買ったんだよ」
「そ、みんなで住めるとこ探したんだ。なかなかいーだろ?」
「いいっていうか、凄い……」
そう言うと3人とも嬉しそうに笑った。
日当たりの良い閑静な住宅街に建つ低層マンションの最上階。
低層だから最上階と言っても7階だ。そして7階部分全てが俺たちの1室となっていた。タワーマンションも色々見たらしいけど、ちょっぴり高いところが苦手は俺のことを考えて低層にしたらしい。そういう所がすごく嬉しい。
ベッドルームは3つ。それぞれ漣と朔と奨くんが使ってる。
書斎は5つ。3つはベッドルームと隣合わせで、ドア一枚で行き来できる。残る2つの内の大きい方が俺の部屋。
ゲストルームもあるけど、ほぼ使われてない。家は寛ぎたいから他人はあまり招きたくないんだって。たまに、ユズちゃんが来て泊まっていくけど、ユズちゃんも忙しいから泊まるのは半年に1度くらいだ。
広々としたリビングにはグランドピアノがありダイニング続いている。ダイニングの奥にはアイランドキッチン。 どこも防音仕様となっているから、周囲を気にせずに皆でセッションも出来る。
バスルームは2つで、トイレも2つ。
その他ベッドルームにはシャワールームとトイレもついている。
マンションだけどメゾネットになっていて2階があり、部屋の中にフィットネスルームやサウナもあるし、大きくはないけど室内プールも付いている。そんなに大きくはないって言っても俺たち4人が少し泳いだり寛いだりするくらいの広さはある。
「ねぇ、どうして俺の部屋にはベッドがないの?」
俺の部屋として用意されていた書斎は広くて、もはや書斎とはいえないくらいの広さだ。パソコンも2台置いた上に、本棚もたくさんついていて、その前に座り心地の良さそうな大きなソファセットが置いてあったけど、ベッドが見当たらなかった。
「これ、ソファベッドかな? これで寝ればいいの?」
「確かにソファベッドにもなるけど……」
「相変わらずの明後日な発想すんな、アズ」
「アズは可愛いね。よく考えてみて。」
半分呆れた顔の漣。
ニヤニヤとする朔。
微笑む奨くん。
「お前は俺たちと寝るだろ」
「だからお前のベッドは必要ない」
「ほら、キングサイズだから狭くないでしょ」
それぞれのベッドルーム全てに立派なキングサイズのベッドが置いてあった。
俺は毎日誰かのベッドで寝ている。
**
そっと、左手に触れる。
薬指には3連にしたリングが光る。
あのプロポーズの時にそれぞれが用意してくれたものだ。
漣と朔と奨くんも左手に指輪を付けている。
みんなは一つずつだけど。俺の左手と対になっている指輪。何から何まで用意周到で、俺もみんなに指輪を選びたかったのに、とちょっと文句を言った。そしたら……と、一人ずつとデートになって、それぞれに俺が選んだものをプレゼントすることになった。
漣には、ピアス。
パライバトリマリンのピアスは透明感が抜群ですごく綺麗だった。それにこの石は、周りの好意を引き付け人間関係を円滑にしたりする意味があるんだって。本当は繊細で、でも不器用な漣のこれからのお守りになってくれますように。
朔には、腕時計。
大きい時計。俺が付けるとチグハグな大きさだけど、朔にはピッタリだった。ゴツゴツした機械っぽいのも朔が付けると爽やかに映える。スポーツしに行く時も、ビジネスシーンでもちょっとフォーマルな場面でも、どんなシーンでも付けてもらえると思って選んだ。
奨くんには、アンクレット。
たぶん外科に進むであろう奨くんは、手術が多いはず。手術中は基本的に上半身には何も付けられないと思うから、アンクレットにした。足首だったら大丈夫かなって。何でも似合うけど、探しても俺が奨くんに贈りたいって思うものがなかなかなくて――奨くんは俺がくれるなら何でもいいとか言ってたけど――結局知り合いのデザイナーさんにオーダーして作ってもらったもの。
どれも普段からずっと身につけてもらえるもの。
俺が選んだ俺のものを付けてほしかった。
そう言うと、3人はとても喜んでくれた。
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