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決意
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「アズ! アズ! あぁ良かった!」
「ユズちゃん……」
玄関先でアズの到着をずっと待っていたらしいユズがアズに飛びつく。
ユズちゃんの泣き顔なんていつぐらい振りだろうか……。
「心配かけてごめんね」
「ううん、謝るのは私の方。また私のせいでアズを傷つけてしまった。ごめん。ごめんねアズ」
双子がそれぞれ謝り、抱き合い、また泣き出す。
アズは救急搬送先の病院で点滴を受け、念のため一晩入院となり、回復したところで3人に付き添われタクシーで帰ってきた所だ。
「ユズ、とにかくアズを部屋へ。後でうちの病院から医者を呼んで来てもらうから」
「もう大丈夫だよ、奨くん」
「いや、改めて確認してもらう」
「うん、俺もその方がいいと思う」
「お前昨日は歩けなかったんだぞ、俺たちを安心させてくれ」
その後到着したお医者様から再度診察を受け、安静にするようにとの指示のもと、アズはベッドで休むことになった。やはり疲れていたのか、アズはすぐに眠りについた。
「それで? ユズちゃん、ユズちゃんのせいってどういうこと?」
「とりあえず説明して」
「理由によってはユズでも許さないよ」
「分かってる。ちゃんと話すから、とりあえず座って」
あの日、ユズは紗良とともに大学へ行き、アズのことを聞いて回った。もともと目立つアズだったため、目撃証言はすぐに取れた。
やはり、制服を着た女の子と一緒に大学を出ていったことが分かった。その女の子の制服の特徴、2人の様子などを聞くと、やはり、ユズの通っていた高校の制服のようだった。
「何でそんな子が?」
「それより、大学を出てどこに行ったかだよ」
考え込もうとするユズを紗良が促す。大学を出てさらに周辺で聞き込みをしている際、警察に女子高生が連れて行かれたらしいという話を聞き、一旦家に戻って親にも相談するべきかと思っていた所へ、タキさんから警察の人が来ているとユズに連絡が入ったのだった。
盲目的にユズに心酔する後輩が今回の事件を引き起こした犯人だった。
警察で事情聴取を受けていた後輩が水瀬優珠、水瀬和珠の名前を出したため、確認のために水瀬家に来たとのことだった。彼女は常にユズが振り向いてくれるよういろいろと画策していたらしいが、全く振り向いてもらえないことをすべてアズのせいだと思い込んでいたようだった。アズさえ居なくなれば自分のことを見てくれると思い、今回アズが一人になるタイミングを狙ってアズを排除しようと考えたらしい。
そして、その後輩は、紗良から注意した方がいいと言われていた子であったことが分かったのだった。
「まさか……そんな……」
でも考えてみれば、声を掛けられたあの時、まだクラスメイトにしか報告していなかった合格を、しかも第一志望だってことをあの子が知っていたのか……。
どうしてもっと紗良の言葉を真剣に聞かなかったのかと、ユズはこの時のことを苦々しく思い出していた。
**
「アズを守ろうと必死だったのに、またあの子を傷つけてしまったわ……」
話し終わったユズは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔のまま、ため息をつく。
「もう泣くなよ、ユズちゃん。お前のせいじゃないって。悪いのはその後輩だろ?」
「うん……でも……アズの傷のことまで調べてて、それをアズに言ったらしいの……」
「傷のことまで?」
「そう……アズの一番触れてほしくない部分まで踏みにじったのよ」
「そ、それは……」
「そーだよ、朔、甘やかすなよ。ユズさー、俺らには色々言うけど、お前の脇が甘かったせいでアズを危険に晒すなんて、ねーわ」
「……本当にごめんなさい」
「まぁ漣、気持ちはわかるけど。ユズがこんな素直に謝ることなんてないんだから、反省してるのは本当だと思うよ」
「お前は慰めてるのか落としてるのかわからないな、奨」
「それはさ……、今回はひとまずアズが無事にまた俺の所に「俺ら」、はいはい、戻ってきたし、ユズも反省してるみたいだし、犯人も一応捕まっているっていうから許すけど、一歩間違っていたらアズが死んでたかもしれないんだよ。そしたらユズでも許さない。ユズだって分かってるよね?」
にっこりと笑っているのに、なぜか恐怖を感じる笑顔の奨に、ユズは目をつむる。
「うん、分かってる、そんなことになったら自分で自分が許せない」
「うん、ならいい」
そう、そんなことにはさせない。
それに、今回は私だけでどうにかなることじゃないって良くわかった。もう自分だけがアズを守る必要はない。
この3人の誰かなら、いいえ、この3人ならきっと大丈夫。
「……アズのこと、どうかよろしくお願いします」
深く頭を下げるユズに3人は顔を見合わせ、それからしっかりと頷いたのだった。
**
ベッドではアズがすぅすぅと寝息を立てて寝ている。
3人は寝ているアズを見つめる。
「可哀想に、こんなに苦しんで……」
「ユズの後輩ってやつは許せない」
「……何があっても潰す」
「もう絶対に一人にはしない」
「アズを守っていくためには」
「あぁ、もう待っていられない」
そうして、眠っているアズにそれぞれ精一杯の優しいキスをした。
「ユズちゃん……」
玄関先でアズの到着をずっと待っていたらしいユズがアズに飛びつく。
ユズちゃんの泣き顔なんていつぐらい振りだろうか……。
「心配かけてごめんね」
「ううん、謝るのは私の方。また私のせいでアズを傷つけてしまった。ごめん。ごめんねアズ」
双子がそれぞれ謝り、抱き合い、また泣き出す。
アズは救急搬送先の病院で点滴を受け、念のため一晩入院となり、回復したところで3人に付き添われタクシーで帰ってきた所だ。
「ユズ、とにかくアズを部屋へ。後でうちの病院から医者を呼んで来てもらうから」
「もう大丈夫だよ、奨くん」
「いや、改めて確認してもらう」
「うん、俺もその方がいいと思う」
「お前昨日は歩けなかったんだぞ、俺たちを安心させてくれ」
その後到着したお医者様から再度診察を受け、安静にするようにとの指示のもと、アズはベッドで休むことになった。やはり疲れていたのか、アズはすぐに眠りについた。
「それで? ユズちゃん、ユズちゃんのせいってどういうこと?」
「とりあえず説明して」
「理由によってはユズでも許さないよ」
「分かってる。ちゃんと話すから、とりあえず座って」
あの日、ユズは紗良とともに大学へ行き、アズのことを聞いて回った。もともと目立つアズだったため、目撃証言はすぐに取れた。
やはり、制服を着た女の子と一緒に大学を出ていったことが分かった。その女の子の制服の特徴、2人の様子などを聞くと、やはり、ユズの通っていた高校の制服のようだった。
「何でそんな子が?」
「それより、大学を出てどこに行ったかだよ」
考え込もうとするユズを紗良が促す。大学を出てさらに周辺で聞き込みをしている際、警察に女子高生が連れて行かれたらしいという話を聞き、一旦家に戻って親にも相談するべきかと思っていた所へ、タキさんから警察の人が来ているとユズに連絡が入ったのだった。
盲目的にユズに心酔する後輩が今回の事件を引き起こした犯人だった。
警察で事情聴取を受けていた後輩が水瀬優珠、水瀬和珠の名前を出したため、確認のために水瀬家に来たとのことだった。彼女は常にユズが振り向いてくれるよういろいろと画策していたらしいが、全く振り向いてもらえないことをすべてアズのせいだと思い込んでいたようだった。アズさえ居なくなれば自分のことを見てくれると思い、今回アズが一人になるタイミングを狙ってアズを排除しようと考えたらしい。
そして、その後輩は、紗良から注意した方がいいと言われていた子であったことが分かったのだった。
「まさか……そんな……」
でも考えてみれば、声を掛けられたあの時、まだクラスメイトにしか報告していなかった合格を、しかも第一志望だってことをあの子が知っていたのか……。
どうしてもっと紗良の言葉を真剣に聞かなかったのかと、ユズはこの時のことを苦々しく思い出していた。
**
「アズを守ろうと必死だったのに、またあの子を傷つけてしまったわ……」
話し終わったユズは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔のまま、ため息をつく。
「もう泣くなよ、ユズちゃん。お前のせいじゃないって。悪いのはその後輩だろ?」
「うん……でも……アズの傷のことまで調べてて、それをアズに言ったらしいの……」
「傷のことまで?」
「そう……アズの一番触れてほしくない部分まで踏みにじったのよ」
「そ、それは……」
「そーだよ、朔、甘やかすなよ。ユズさー、俺らには色々言うけど、お前の脇が甘かったせいでアズを危険に晒すなんて、ねーわ」
「……本当にごめんなさい」
「まぁ漣、気持ちはわかるけど。ユズがこんな素直に謝ることなんてないんだから、反省してるのは本当だと思うよ」
「お前は慰めてるのか落としてるのかわからないな、奨」
「それはさ……、今回はひとまずアズが無事にまた俺の所に「俺ら」、はいはい、戻ってきたし、ユズも反省してるみたいだし、犯人も一応捕まっているっていうから許すけど、一歩間違っていたらアズが死んでたかもしれないんだよ。そしたらユズでも許さない。ユズだって分かってるよね?」
にっこりと笑っているのに、なぜか恐怖を感じる笑顔の奨に、ユズは目をつむる。
「うん、分かってる、そんなことになったら自分で自分が許せない」
「うん、ならいい」
そう、そんなことにはさせない。
それに、今回は私だけでどうにかなることじゃないって良くわかった。もう自分だけがアズを守る必要はない。
この3人の誰かなら、いいえ、この3人ならきっと大丈夫。
「……アズのこと、どうかよろしくお願いします」
深く頭を下げるユズに3人は顔を見合わせ、それからしっかりと頷いたのだった。
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ベッドではアズがすぅすぅと寝息を立てて寝ている。
3人は寝ているアズを見つめる。
「可哀想に、こんなに苦しんで……」
「ユズの後輩ってやつは許せない」
「……何があっても潰す」
「もう絶対に一人にはしない」
「アズを守っていくためには」
「あぁ、もう待っていられない」
そうして、眠っているアズにそれぞれ精一杯の優しいキスをした。
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