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面接
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仕方なしに藤原達について歩いていくと、近くのカラオケBOXについた。
そのままぞろぞろと一室に行く。
ドアを開けると水瀬が居た。
制服から着替えてる、カワイイじゃん。水瀬もカラオケとか来るんだ。
ん?
水瀬はこちらを見てニコニコしている。
でも何か違和感が……。
「お前、誰?」
水瀬もどきは、穏やかな笑みから一転、好戦的な笑みを浮かべ部屋の中に手招きした。
「とりあえず、入れば?」
水瀬より高い声が言った。
「そこに立ったままだと扉閉まらないから。全員……は入れなそうだから、朔くんだけ入って。あとはとりあえず解散」
なんだか偉そうだな。
「で、何なのこれ?俺忙しいんだけど」
「お前、これから面接受けるんだよ。アズ同盟の」
「だから、それ何?」
「朔くん、何にも知らせてないの?」
水瀬もどきが水瀬より高めでやや険のある声で言った。
「なかなかユズちゃんの面接日も決まらなかったし、アズ同盟の説明しようにもアズがいなくなるとコイツもすぐいなくなるし、詳細までは話せてない。ホントはもっと早く連れてきたかったけど。……コイツ調子に乗りすぎだから」
朔が渋い顔で答える。
「あー、それは私が悪かったね。じゃあ、改めて」
水瀬もどきが頭をいじりながらこちらに向き直る。
アズに似た髪色が長く揺れる。短髪はかつらだったのか。
「水瀬優珠よ」
「え?」
「そう、アズの姉よ。双子の」
「双子?!」
「そう、そしてアズ同盟の主催者」
同盟って主催者とかあった?
どちらも対等な存在じゃね?
ちょっと面食らって字面の意味を考えてしまう。
「さ、君も自己紹介くらいしたら?」
水瀬優珠は座ったまま腕を組み、足を組み、顎をツンと上に向ける。
「は? なんで?」
「別にいいけどね、私は。アズに二度と近づけないようになるだけよ」
「お前にそんな権利あんのかよ」
「あるわよ。姉だもの。それに、アズが頼りにしてるのはこの私。えーっと、榊漣。登校初日にアズにいきなり告白……だっけ?」
ユズは手元の携帯を弄りながら言う。
「っんだよ、知ってんじゃねーか」
誰だよ情報流したやつ、コイツか?
入り口に立って腕組みをしている藤原を睨む。俺と目が合っても藤原は澄ました顔のまま。
「自己紹介しなかったことでマイナスー。アズに漣くんに乱暴されそうになったから、もう絶対近づかない方がいいよ、席替えもしてもらってって言っとくね♡」
「え! いや、濡れ衣すぎねー?」
「知り合ってたった1ヶ月ほどのウザ絡みする男と、生まれてからずーっと一緒の姉の言葉。どっちをアズは信じるでしょうねぇ?」
「くっ……」
なんだこの女! ムカつくな!
「ユズちゃん、榊もう失格でいい?」
ニヤニヤと藤原が俺を見ながら言う。
「いや、面接するんだろ!さっさとしろって」
「だからー、自己紹介」
「……榊漣……です」
その後も全身立たされたり、髪が地毛なのか、ピアスは何個空いてるのか、耳以外にもピアスがあるのか、なんで事故ったのかだの、住所だの、家族構成だの、出身校だの、過去の彼女歴(覚えてねー)だの個人情報を細部まで吐き出さされた。
「とりあえず私への態度はアレだけど、すぐに私とアズを見分けたことで、ポイントは高いかなー」
携帯いじってないでせめてこっち見ながら話せよ。
「……そりゃどーも」
「で、ほんとに怪我って大丈夫なんでしょうね?」
「は? 大丈夫だから退院してるんだろ」
「ふん……。怪我してハンデある状態ならアズのこと守れないしアズ同盟にはお断りなんだけど」
「だからほぼ治ってるって言ってんだろ。ってか何なんだよ、アズ同盟ってさっきから」
「それは、アズのための同盟よ。アズを守るためのものって言ったらいいかな?」
水瀬優珠の話しはこうだ。
アズは可愛い。アズは美人。アズは天使。
だから、狙われることも多い。
男女限らず。
アズはそういったことに、とにかく無防備。
自分の魅力に無頓着すぎる。
いつか事故がおこるとも限らない。
アズが無理やり汚されることはあってはならない。
アズが自分で選び取るまで、お互いにお互いを監視して、アズのことを見守る、ということらしい。
「理解した?」
「あー、まぁ……。で? 入らないとどーなんの?」
「全力でアズの前から排除するわ。まず、アズの周りに物理的に近寄らせないようにする。それから有る事無い事とにかくアズに吹き込んで、アズがあなたを避けるように仕向けるわ。その上でまだ絡んでくるようなら社会的に抹殺するわね」
特に顔色も変えず、澄ましたままでとんでもない事を言いやがるな、コイツ。本当にあのアズの姉か? アズが天使なら、コイツは悪魔だな。
「お前、こえぇな」
「それぐらいしないと、あの子守れないもの」
フッと影が差す。目線が下を向き、一瞬寂しそうな顔を垣間見せる。
なんだよ、反則だろ、その水瀬に似た顔でそういう顔すんなよ!
いや、お前も水瀬か、ややこしいな!
「わ、わかったよ」
「そ? 当然よね。じゃあよろしく」
ケロッとしてこちらを見る。
どうやらしてやられたようだ。
あー、イライラが止まらねー。
水瀬ユズのアズ同盟面接が終わった後、なぜか藤原と二人で近くのファストフードに居るように言われた。
席についてからずっと貧乏ゆすりも止まらない。
なんで俺がコイツとこんなところに居なきゃならねーんだよっ。
けど、目の前の藤原もあれやったんだよな。
そう思うとちょっと溜飲が下がる。
「なんだよ?」
藤原が睨んでくる。
「別にぃ?」
「ユズちゃん手強いぞ」
「お前が無理でも、俺は別」
「はぁぁああ、わかってねーな。俺もそう思ってたけど、アズはもっと手強いからな。とりあえず嫌だけど同盟加入ってことで、よろしく」
朔が手を差し出した。
握手のつもりらしい。
「お前とよろしくやれっかよ」
「お前! こっちが歩み寄ってやってんのに、どーゆー態度だよ」
藤原と机を挟んで睨み合う。
あー、もうほんと今日は色々、マジでムカつく。
「ねーねー、二人で見つめ合って、どうしたの?」
いきなりの天使の登場に二人とも唖然とする。
「あ、アズ!?」
「水瀬?!」
「うん?」
まだ帰宅前だったのか、制服のままの水瀬アズがいた。
「えっとね、ユズちゃんから電話あって、ここに朔も榊君もいるから遊んでおいでって。俺が今日は部活もないから暇って言ったら教えてくれたの」
(え? おい、藤原、ユズってやつ超いいヤツじゃん。)
(まぢ? 俺逆にコワイんだけど……)
漣と朔が小声で会話する。
「二人ともどうしたの? 今度は仲良しで内緒話? 俺邪魔だった?」
アズが眉を下げる。
「やっぱり帰るね、邪魔してごめん」
咄嗟に水瀬の手を取る。
藤原も焦って反対側の手を掴んでいた。
「全然邪魔じゃないよ!」
「そうそう、俺たちもちょうど暇だったから」
「ほんと? 良かったぁ」
アズがほにゃっと微笑む。
ヤバい、可愛いすぎる。
そのままぞろぞろと一室に行く。
ドアを開けると水瀬が居た。
制服から着替えてる、カワイイじゃん。水瀬もカラオケとか来るんだ。
ん?
水瀬はこちらを見てニコニコしている。
でも何か違和感が……。
「お前、誰?」
水瀬もどきは、穏やかな笑みから一転、好戦的な笑みを浮かべ部屋の中に手招きした。
「とりあえず、入れば?」
水瀬より高い声が言った。
「そこに立ったままだと扉閉まらないから。全員……は入れなそうだから、朔くんだけ入って。あとはとりあえず解散」
なんだか偉そうだな。
「で、何なのこれ?俺忙しいんだけど」
「お前、これから面接受けるんだよ。アズ同盟の」
「だから、それ何?」
「朔くん、何にも知らせてないの?」
水瀬もどきが水瀬より高めでやや険のある声で言った。
「なかなかユズちゃんの面接日も決まらなかったし、アズ同盟の説明しようにもアズがいなくなるとコイツもすぐいなくなるし、詳細までは話せてない。ホントはもっと早く連れてきたかったけど。……コイツ調子に乗りすぎだから」
朔が渋い顔で答える。
「あー、それは私が悪かったね。じゃあ、改めて」
水瀬もどきが頭をいじりながらこちらに向き直る。
アズに似た髪色が長く揺れる。短髪はかつらだったのか。
「水瀬優珠よ」
「え?」
「そう、アズの姉よ。双子の」
「双子?!」
「そう、そしてアズ同盟の主催者」
同盟って主催者とかあった?
どちらも対等な存在じゃね?
ちょっと面食らって字面の意味を考えてしまう。
「さ、君も自己紹介くらいしたら?」
水瀬優珠は座ったまま腕を組み、足を組み、顎をツンと上に向ける。
「は? なんで?」
「別にいいけどね、私は。アズに二度と近づけないようになるだけよ」
「お前にそんな権利あんのかよ」
「あるわよ。姉だもの。それに、アズが頼りにしてるのはこの私。えーっと、榊漣。登校初日にアズにいきなり告白……だっけ?」
ユズは手元の携帯を弄りながら言う。
「っんだよ、知ってんじゃねーか」
誰だよ情報流したやつ、コイツか?
入り口に立って腕組みをしている藤原を睨む。俺と目が合っても藤原は澄ました顔のまま。
「自己紹介しなかったことでマイナスー。アズに漣くんに乱暴されそうになったから、もう絶対近づかない方がいいよ、席替えもしてもらってって言っとくね♡」
「え! いや、濡れ衣すぎねー?」
「知り合ってたった1ヶ月ほどのウザ絡みする男と、生まれてからずーっと一緒の姉の言葉。どっちをアズは信じるでしょうねぇ?」
「くっ……」
なんだこの女! ムカつくな!
「ユズちゃん、榊もう失格でいい?」
ニヤニヤと藤原が俺を見ながら言う。
「いや、面接するんだろ!さっさとしろって」
「だからー、自己紹介」
「……榊漣……です」
その後も全身立たされたり、髪が地毛なのか、ピアスは何個空いてるのか、耳以外にもピアスがあるのか、なんで事故ったのかだの、住所だの、家族構成だの、出身校だの、過去の彼女歴(覚えてねー)だの個人情報を細部まで吐き出さされた。
「とりあえず私への態度はアレだけど、すぐに私とアズを見分けたことで、ポイントは高いかなー」
携帯いじってないでせめてこっち見ながら話せよ。
「……そりゃどーも」
「で、ほんとに怪我って大丈夫なんでしょうね?」
「は? 大丈夫だから退院してるんだろ」
「ふん……。怪我してハンデある状態ならアズのこと守れないしアズ同盟にはお断りなんだけど」
「だからほぼ治ってるって言ってんだろ。ってか何なんだよ、アズ同盟ってさっきから」
「それは、アズのための同盟よ。アズを守るためのものって言ったらいいかな?」
水瀬優珠の話しはこうだ。
アズは可愛い。アズは美人。アズは天使。
だから、狙われることも多い。
男女限らず。
アズはそういったことに、とにかく無防備。
自分の魅力に無頓着すぎる。
いつか事故がおこるとも限らない。
アズが無理やり汚されることはあってはならない。
アズが自分で選び取るまで、お互いにお互いを監視して、アズのことを見守る、ということらしい。
「理解した?」
「あー、まぁ……。で? 入らないとどーなんの?」
「全力でアズの前から排除するわ。まず、アズの周りに物理的に近寄らせないようにする。それから有る事無い事とにかくアズに吹き込んで、アズがあなたを避けるように仕向けるわ。その上でまだ絡んでくるようなら社会的に抹殺するわね」
特に顔色も変えず、澄ましたままでとんでもない事を言いやがるな、コイツ。本当にあのアズの姉か? アズが天使なら、コイツは悪魔だな。
「お前、こえぇな」
「それぐらいしないと、あの子守れないもの」
フッと影が差す。目線が下を向き、一瞬寂しそうな顔を垣間見せる。
なんだよ、反則だろ、その水瀬に似た顔でそういう顔すんなよ!
いや、お前も水瀬か、ややこしいな!
「わ、わかったよ」
「そ? 当然よね。じゃあよろしく」
ケロッとしてこちらを見る。
どうやらしてやられたようだ。
あー、イライラが止まらねー。
水瀬ユズのアズ同盟面接が終わった後、なぜか藤原と二人で近くのファストフードに居るように言われた。
席についてからずっと貧乏ゆすりも止まらない。
なんで俺がコイツとこんなところに居なきゃならねーんだよっ。
けど、目の前の藤原もあれやったんだよな。
そう思うとちょっと溜飲が下がる。
「なんだよ?」
藤原が睨んでくる。
「別にぃ?」
「ユズちゃん手強いぞ」
「お前が無理でも、俺は別」
「はぁぁああ、わかってねーな。俺もそう思ってたけど、アズはもっと手強いからな。とりあえず嫌だけど同盟加入ってことで、よろしく」
朔が手を差し出した。
握手のつもりらしい。
「お前とよろしくやれっかよ」
「お前! こっちが歩み寄ってやってんのに、どーゆー態度だよ」
藤原と机を挟んで睨み合う。
あー、もうほんと今日は色々、マジでムカつく。
「ねーねー、二人で見つめ合って、どうしたの?」
いきなりの天使の登場に二人とも唖然とする。
「あ、アズ!?」
「水瀬?!」
「うん?」
まだ帰宅前だったのか、制服のままの水瀬アズがいた。
「えっとね、ユズちゃんから電話あって、ここに朔も榊君もいるから遊んでおいでって。俺が今日は部活もないから暇って言ったら教えてくれたの」
(え? おい、藤原、ユズってやつ超いいヤツじゃん。)
(まぢ? 俺逆にコワイんだけど……)
漣と朔が小声で会話する。
「二人ともどうしたの? 今度は仲良しで内緒話? 俺邪魔だった?」
アズが眉を下げる。
「やっぱり帰るね、邪魔してごめん」
咄嗟に水瀬の手を取る。
藤原も焦って反対側の手を掴んでいた。
「全然邪魔じゃないよ!」
「そうそう、俺たちもちょうど暇だったから」
「ほんと? 良かったぁ」
アズがほにゃっと微笑む。
ヤバい、可愛いすぎる。
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